この世界について
「……よお、寝てた見たいだから、勝手に入ったぜ。魘されてたがまた何時もの夢か?」
俺の鞄を持った一真が寝起きの俺に話しかけてきた。
「それ、俺の鞄だろ? 何でお前が持っているんだ?」
「お前より先に目覚めたときに、借りたぜ。そんなことよりもこの世界の情報がある程度集まったから説明するぞ。それとも二度寝したいか?」
貸した覚えほ無いんだが、そんなことコイツに言っても無駄だろうなと考え、俺は話の続きを聞くことにした。
「……情報って何を手に入れたんだ?」
「さてと、どれから話せばいいかな。そうだな、先ずはこの世界の事をお前が寝てた三時間で得た情報で教えよう」
自分が必死に情報を集めている間、お前は寝てたんだぞと、そう付け加えるように一真は話を続けた。
「まず一番重要なこの世界の言語は俺がメイドたちに聞いた話や、
この豪邸の書庫で見聞きした結果、この世界の言語は全て日本語で出来ているようだ。魔導書などを除けばな」
そう言い一真は俺が貸しているらしい鞄から一冊の本を出してきた。
その本の中身を俺は軽く確認する。そこには俺たちが日常的に見ている言語が存在した。
「確かに日本語だな。ところで今、魔導書とか言ってたがまさか魔法が存在するとは言わないよな?」
俺は聞き間違いだと思い。一真に確認する。
「……有月、お前にしては鋭いな。ああ、この世界では魔法が存在するらしい。
まあ、俺たちが手に入れた能力や、異世界転移の事を踏まえると少しも不思議じゃないがな」
「魔法が存在するなら。俺たちが呼ばれた意味があまりないんじゃないか?」
魔法が存在するならば、能力者を使いわざわざ火や風を出さなくても、
能力者を使わず魔法の力で火や風を出せばいい俺は浮かんできた疑問を一真にぶつけた。
「それが、魔法を使うための魔力自体はこの世界や、転移してきた俺達にも存在するし、日常生活レベルの魔法を使うのは、魔術について勉強すれば俺達にも簡単に使えるらしいが、実戦レベルの魔法を使えるのは、そんなに居ないらしい。まあ能力者よりは多いらしいがな」
「なるほど理解した。それで、お前の得た情報はそれで全てか?」
まだ有るんだろと、めんどくさそうに俺は話の続きを聞こうとする。
すると一真は俺の鞄から一枚の真新しい地図を出した。
「……いいか良く聞け、この地図の中央から少し東に有るこの場所が現在俺達が居る場所だ」
一真が俺の鞄から出した筆箱から一本の赤ペンを取り出し、真新しい地図に出した赤ペンで丸を付ける。
「そしてその更に東に行くとユーステュラーネ同盟国にたどり着く、同盟国に行く道は北東に有る平原ではなくて、今俺達が居るこの場所から真っ直ぐ東に有る、森から行くのがいい。平原の方は合戦所になっているからだ。」
一真は赤ペンで今居る場所から森を通して同盟国に続く道を描くように一本の真っ赤な線を引く。
「……どういうことだ?」
「話を聞いていなかったのか? 重要だからもう一度言うぞ、今居るこの場所から東の森を抜けたら同盟国に着く。北東に有る平原は合戦所になっているから、通るなら必ず森からだ!いいな!必ず森からだぞ!」
「……いや、俺が聞きたいのはそういうことじゃなく、
何故同盟国に行く道を俺に教えてるかだ。その部分を詳しく聞きたい」
一真は何時にも無く深刻そうな顔で俺の問いについて話だした。
「俺たちが今居るこの帝国は非常にきな臭い。だから、もしもの時のために避難するならその場所として、今帝国と敵対中の同盟国ここに逃げ込んだほうがいいと俺は考えた、いざという時に何処に行くか迷った時、行く場所を見つけれずに迷うよりは事前に場所を決めていた方が冷静に行動できるからな」
話し終えると一真は俺の鞄の中を見せてきた。中にはファスナー付きのプラスチック・バッグが大量に入っており、そのプラスチック・バッグには今日異世界にて提供された、食事たちが詰まっている。
「クラスメイトの一人に物を保管して置くことのできるヤツが居た。そいつに頼んで今日の食事を保管してもらった。そのファスナーを開けるまでは食材の温度、味、鮮度をそのままの状態で味わうことができる。それが大体十日分入っている」
これはいざって時のための保存食だな。と言い一真が俺の鞄の中に同盟国までの道を描かれた地図と出した筆箱をしまう。
「この鞄は有月、お前に返す。いざって時のために常に持って動け」
「わかったが、そこまで心配することか?」
「ここは異世界だ、俺達の常識に無いことが平気に起こる。慎重になって得はするが損することはない。話はこれで終わりだ。俺は部屋に戻って寝るが今言ったこと全て忘れずに覚えとけよ」
そう言うと鞄を俺の部屋に置き一真が部屋を出て行った。
俺は起きていても仕方ないのでベットに入り本日二度目の睡眠を取ることにした。
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暗闇の中黒い魔術師のようなローブをした男性が居た。
「おい、転移を止められなかったてどういうことだ」
男の右手には通信機のような物が有りその通信機越しに一人の男の声がする。
機械音混じりだがその声にはかなりの殺意が込められている。
「何とか止めようとしたのですが。儀式の準備は私が屋敷に着いた時には既に全て終わっていてあとは魔力を込めるだけの状態だったのです」
男は慌てながらそう答える。
「……それで、転移者は何人居るんだ?」
通信機越しの声は殺意をそのまま話を続けた。
「全員で三十九人です。これでもう解放していただきますか?」
男は震える声で聞く、通信機を持つ手と反対の左手には指は一つも付いていなかった。
「いや、まだだ。転移者全員の能力を確認して教えろ、一人残らずだ。右手の指も全て失いたくなければ俺の言う通りにしろ、お前に掛けた能力はまだ解除してないからな」
と言うと彼の通信機を持つ手の小指が爆発音とともに吹き飛ぶ。それと同時に男は悲鳴を上げる。それと同時に彼の居る暗闇に光が入り一人の少年が入ってくる。
「おい、今誰か入ってきたな!誰が入ってきた?いや答えなくていい今お前を爆破し証拠は全て消させてもらうぞ」
通信機越しに男の慌てる気配がする、今も悲鳴を上げている男を通信機越しに
一切の躊躇なく通信機ごと殺そうとする。それを止めるために少年は口を開けた。
「そんなに慌てるな、俺は転移者の一人だ。他の転移者の能力は俺が知っている。
その情報と引き換えに俺をお前達の仲間にいれて欲しい」
少年は通信機にそう話しかけた。通信機越しの声は少し考え込み答えた。
「……いいだろう。その通信機はお前が持て。それで合流はどうする?」
少年は通信機をローブを着た男から取り上げ答えた。
「クラスメイトの一人が火を操る能力を持っていた。そいつの能力で屋敷を燃やした事にして、その騒ぎの隙を見て合流する。火付けにはお前の爆破の能力を使いたい。出来るか?」
「爆破は零時ぴったしに行う。合流地点はその通信機で教えよう」
通信機越しの声は笑いながら通信を終えた。