変幻自在な色 その①
「──詠唱破棄! バリアー!! 続けて詠唱破棄! ロック・ボール!!」
フィルナルドは冥界の作る黒い槍を魔法による壁で防ぎ、間髪入れず攻撃の為の魔法を唱える。九個の土の球体が凄まじい速度で冥界に向けて打ち出される。
「戻れ! 「変幻自在な色・黒」よ! そして「防衛」しろ!!」
土の球が冥界に当たる前に黒い槍が壁に変わり冥界の身を守る。
「詠唱破棄による素早い防衛。初級魔法で有りながら我が「変幻自在な色」による攻撃を容易く防ぐか!? そしてその直ぐに発動された同じく初級魔法による攻撃も相当な物だな! 我が「変幻自在な色」は攻撃よりも防衛に適している。だからこそ「変幻自在な色」に傷一つ無いが防衛に回していなければ身体に穴が幾つも開いていたな。さて! このまま遠距離で「変幻自在な色・黒」で攻撃と防御をしても良いが、我が「変幻自在な色」はどちらかの指示しか受けない。攻撃に回せば防御がおろそかになる。かと言って防衛だけしているのも面白くない! そこでだ。もう一色使用するとしよう!! 「変幻自在な色・白」!」
冥界の周りに黒色の壁の他に白色が浮かび上がる。
「実戦では初めてだが成功したな! 異能力は使用すればする程、威力、持続力、そして性能が増大する。初めは「黒」しか使用できなかったがこの十日間、能力を発動し続ける事で「白」が発動できるようになった! いずれ他の色も生み出すことが出来るだろう。そうなれば我が力も増大する! とても楽しみだ!!」
「キミの話何て聞きたくも無いよ! ユヅキは今戦っているんだ! ボクは早く加勢しなくてはいけない。そこを退いてもらうよ!!」
フィルナルドが魔法を唱える。
「詠唱破棄二重詠唱! ロック・ランス続けてファイアー・ボール!!」
「一度の詠唱で二つの魔法を発動する!? 二重魔法か? 二重魔法で有りながら先ほどとは威力が変わらず増しているとはな……。だが無駄だ! 我が「変幻自在な色」は一度発動したら消滅するか我が消す事でしか消滅はしない!!「変幻自在な色・黒」よ! 「防衛」を維持しろ! そして「変幻自在な色・白」よ! 「攻撃」しろ!!」
岩の槍と火の球を黒い壁で難なく冥界は防ぐ、そしてそのままフィルナルドに対する攻撃を行う。冥界の周りに浮く白色が十以上の槍に変化してフィルナルドに襲いかかる。
「詠唱破棄、バリアー!」
しかし白い槍はフィルナルドに届く事は無い。
「その黒いの厄介だね。ボクの二重魔法を無傷で防ぐとはね。お前には中級魔法で相手しないといけないみたいだ…………」
「ほお! 初級魔法であれだけの威力だ! 中級魔法は初級魔法の十倍以上の威力と性質を持つと言われている。だがその分詠唱が大きく隙が生まれる。そして魔力の消耗も激しい。いいのか? 我が「変幻自在な色」は攻撃よりも防衛の方が強い! 幾ら威力を上げようとも、我が「変幻自在な色」には傷一つ付かない。魔力の消耗の少ない初級魔法を唱えた方がまだ効果が高いと思うが?」
「五月蠅いな! 少し黙っていてよ! 我、魔導の道を極めし者! 我フィルナルド・エセンティス・ユースティラーナの元に地の精霊よ! 我に地の力を分け与えたまえ! そして我が目の前に居る敵の全てを喰らいて埋め尽くせ!! ロック・アバランチ!!」
フィルナルドが魔法を唱え終えるとフィルナルドの目の前に巨大な岩達が大量に現れる。その岩達は冥界に向けて転がり冥界を埋め尽くす様に集まる。その光景は雪崩の様でとても粗々しい物だった。
「…………これで静かになったね。さっさとユヅキの元に戻らないと」
フィルナルドは戦闘が終わった事を確信して後ろを向きその場を立ち去ろうとする。その時岩の中から冥界は無傷で出て来た。
「今の中級魔法かなりの威力だった。確かに先ほど撃っていた初級魔法とはまるで別物だな。威力は初級魔法の五十倍と言った所か? 魔法陣は代用品を使用したみたいだが詠唱はしていたな。それで威力が増大されたのか? 魔法は個人差が有るとは知っていたが詠唱無しの初級魔法とこの詠唱有りの中級魔法で五十倍の威力が有るとはな……。しかし無意味だったな! 我が「変幻自在な色」は防衛に関しては無敵に近い勝負を急いでいた為の判断ミスだ! 今ので相当な魔力を消費しただろう? この差が後々大きな差と生るだろう」
無傷の冥界を見てフィルナルドを大きく舌打ちをする。
「ちっ! アレを食らってどうして無傷何だい? 岩はお前に対して全ての方向から同時に襲わせたんだよ? あの壁での防御は無意味だったハズだ! ペチャクチャ話すならそこの所も教えてくれるんだよね?」
それを聞き冥界は喜び説明を始める。
「確かに「変幻自在な色・黒」の壁では一方向からの攻撃しか防ぐ事が出来ない。しかしだ! 壁の形状では無く球体にしたらどうなる? 我を中心に包む様に「変幻自在な色・黒」を球体に変化すれば全ての方向からの攻撃を防ぐことは容易い。実戦闘で警戒すべきなのは自分の死角からの攻撃または回避不可能な攻撃だ! 敵の力が解らない時の攻撃は最も警戒しなくてはいけない! それに合わせて事前にその攻撃に対する答えを用意して置くのは当たり前の事だ! 自身の能力の防衛機能を理解し実行するそれを行うのは簡単な事だ……」
それを聞きフィルナルドは嫌そうな顔で冥界を睨みつけた。
「つまり何だい? お前に対する攻撃は全て無意味だとそう言いたいのかい?」
「同盟国の「魔女」は話が早くて助かる。そうだ! 我が「変幻自在な色」に攻撃は一切効かない! そして同盟国の「魔女」よ! 貴様には我の実戦闘の練習相手として楽しませて貰うぞ。まだこの戦闘で試しておきたい事が有るからな! 貴様の実力は相当上だと理解した! 実戦闘に置ける相手として不足は無い。魔術による攻撃は勿論、近接攻撃も可能だと知っている。自身の能力を確かめるには実戦闘による経験が一番高い! さて次は貴様でどれを試すべきかな?」
「やっぱり能力者は嫌いだ。自己中心的で頭のネジが何処か外れている連中しか居ない。その中でお前はボクの会ってきた連中の中でも上の方に居るよ。ホント大嫌いだ…………」
フィルナルドは舌打ちをして冥界の次の攻撃に対する警戒を始めた。




