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狂気爆弾 その②

「確かに! 確かにだ!! 俺の能力で! しかも直にだ!! 爆破の感触もあった! それなのに……何故お前は無事に生きている!!!」


 俺の身体からは爆発により煙が噴き出ている。だが肉体のダメージは無い。何故なら俺は自身の能力を使い自分の爆発による耐性を最大限に上げているからだ。

 だが……能力の使用は連戦のお陰で残り五回しか発動できない。ライネスの爆破の能力を後五回くらえば俺に防御の手段が無くなる。それだけでは無い、能力の使用が出来なくなれば肉体強化で何とかなっている攻撃手段も全て無くなる。


 同盟国までムツキと行くためには目の前のこいつを倒さなければ俺達に未来は無い。

防御だけではダメだ。残り五回の能力を攻撃に利用しなければ…………。


「……お前がどうやって俺の爆破を防いでいるのかは解らないが!! お前を! 殺る! 良い方法を思いついた!! これならばどうだ!!」


「…………ご主人!」


ライネスは近くに居たムツキを腕で首を抑え人質にした。


「ムツキ!!」


「……ご主人……私は……いいから…………逃げて!」


 今まで聞いた事の無い大きな声でムツキが俺に逃げる様に言う。

 さっきの攻防で俺とライネスの位置関係が変わっていた。

さっきまで俺の後ろに居たムツキは今はライネスの腕の中に、逆に俺はライネスが塞いでいた門、その前に居る。

 後ろを向いて逃げればすぐに同盟国まで行く事が出来るだろう。ムツキはそれを知って俺にこのまま逃げて欲しがっている。

 だが、それをする事はムツキを見捨てる事になる。


「逃げる事。それを俺は許可しない! もし逃げればどうなるか説明しなくても解るだろ。だが! あえて説明しよう!! お前がもし、その場から少しでも動けばこの子娘は無残に死ぬ!! 死に方は勿論俺の「狂気爆弾(クレイジー・ボマー)」にする爆死だ! だが簡単には殺さない! この小娘の身体を順番に吹っ飛ばす!まず最初は指だ!! 指を一本ずつ丁寧に爆破する! 指が無くなれば次は手! 手が無くなれば次は腕! そうやってこの娘の身体を少しずつ爆破して殺さないように丁寧に削ってやる! まだ年端もいかないこの娘が自分の身体を少しずつ失う恐怖と爆破による肌の焼ける激痛に耐えられない姿をお前に見せつけてやる!! 今は強気のこの小娘も俺の拷問をくらえば泣け叫びながらお前に助けを求めるだろうな!!」


 高笑いを上げライネスは声高々と宣言する。


「逃げようが逃げなかろうがムツキを殺すんだろ?」


「ああ! 勿論だ! この小娘はお前がどんな事をしようが必ず悲惨に殺す! お前の行動で変わるのは、この小娘が死ぬのをお前が死ぬことで見ずに済むかどうかだけだ!! 今すぐ俺の爆破を無効にしている何らかの力を解除しろ! そしたらお前は楽に死ねる!!」


 ヤツの言う事を聞く気は、端から無い。だがムツキをヤツの手から解放するには一手足りない。もう少し、あと少しヤツにライネスに近づければ…………。


「有月! そんな女は置いてさっさと逃げろ!! お前とそいつは出会って一日も無いだろ! なら逃げちまえ!!」


 壁にもつれかかる一真が俺に向かって話す。

 確かに俺とムツキは出会ってまだ半日もたたない。後ろを向いて全てを無かった事にして逃げる選択肢も有るのかも知れない。


 だが…………。


 俺はムツキを見る。ムツキはこの世の全てを諦めたような眼をしながら俺に逃げろと目で話す。


 あの眼だ……。

 ムツキが俺の事をあの眼で見る限り……。いや、ムツキと初めて出会った時点で俺にはムツキを置いて

この世界から逃げると言う選択肢は無くなったのかも知れない……。


「──逃げる気は無いって言うのかよ。なら親友からの最期の手向けだ」


 そう言い一真は糸の能力を使い俺とライネスを一本の糸で繋ぐ。


「…………どういうことだカズマ? お前は俺がこいつを殺すのに納得して無いと思ったんだがな!」


「俺からソイツにしてやれる。最期の事だ。お前の「狂気爆弾」は触れた物を爆弾にする。その爆弾になった物に触れても爆破するんだったよな。ならその糸を使って有月を痛み無く殺してやってくれ」


「なるほどな! 親友からの最期の慈悲って事か。お優しいことで! 俺がわざわざ接近して触れて爆破する必要が無くなったな」


ライネスはそう言うとすぐさま爆破の準備に移る。


「この糸! これを導火線にしお前は爆弾になった! これで詰みだ! この爆破でお前がもし爆破しなければ俺はこの小娘に意味の無い拷問を開始する! さて、最期になにか言い残す事はあるか!」


 腕に巻き付くこの糸これが俺の生命線か、奴はこの状況を詰みと言った。まったくその通りだと俺は思う。


「ムツキ! 何も言わずにただ俺にお前の全てを預けてくれないか?」


 ムツキの眼に薄っすらとハイライトが付き俺の問いに答える。


「…………私の……答えは……こうです……はい、ご主人様!」


 満面の笑みでムツキは俺を見つめる。


「それが最期の言葉だな! さあ悲鳴を上げ死の恐怖による苦痛溢れる顔を俺に見せろ!! 点火だ!」


 その爆破は俺には全く効かず、ただ俺の周囲に煙を撒くだけだった。


「──やはり自分の身が可愛いくなり防御したか! ならこの少女の拷問を開始す──」


 俺は木刀をライネスに向けて思いっきり投げつける。それと同時に俺はライネスに向けてただ真っ直ぐ走る。


「無駄だ! 無駄だ! 無駄だ! 無駄だ!! 俺が触れる物は全て爆弾になる! この木刀が俺に触れることはな──」


ライネスに投擲した木刀が当たる。木刀は勿論、能力により耐爆使用にしてある。


「くっ……。直撃だとどうなっている! 何故! 何故! 何故!! 爆破しない……。どうなっていやがる。いやどうだっていい! 動いたな!! この小娘は今爆殺する!! 拷問は無しだ! 何かされる前に直ぐに殺す!!」


 そう言うとムツキを爆破する。無駄だ! 既にムツキは安全な状態にしてある。

 一真が創った糸はヤツの導火線では無く、俺がムツキを救うための生命線となった。俺とライネスは糸によって繋がっている。そしてライネスはムツキは腕で拘束する事により触れている。

 俺とムツキまでは一本の線により間接的に触れる事が出来た。だから俺の能力はムツキまで届き耐爆破能力を上昇させることに成功した。


 そして、俺とムツキを繋ぐ生命線は途中に挟むライネスに対する攻撃手段にも利用させてもらった。これで詰みだ。俺の方のな。


(どうして、この小娘まで爆破しない!! この小娘とヤツが接触しているのを俺は確認していないぞ! ちっ、ヤツが接近してきやがる。ここは爆破で防衛しヤツの攻撃をしのぎ、小娘を人質に取った攻撃を行いヤツの能力の解析をさせて貰うか! なんだヤツの接近が思っていたよりおそ──)


「…………掴んだ!」


 俺はライネスの腕を掴む。木刀はさっき投げて使った。

 今俺の武器は拳しか無い。問題ないこの拳だけで十分だ。既に糸を通しライネスの精神と肉体を能力を使い大きくずらした。

 俺の拳の一撃でもヤツには心臓にナイフがゆっくりと刺さるような感覚と痛みを味わうだろう。


 更にダメ押しだ。

 俺は残りの能力を全て使い拳の力を上昇させる。

ありったけに上昇した拳を精神と肉体の感覚がズレたライネスに向けて思いっきり振るった。

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