夏にぶっ壊れるとかマジやめてください
リハビリ
暑さと湿気で夜がヤバイ。
「あっつ」
開口一番がそれだった。
いや、だって起きたら自分が汗だくで体はべとべとするし窓から差し込む陽気は容赦なく温度を上げてくんですよッ!?
「あーうー」
いやこの暑さはやばい。というかなんで暑い?
例のごとく体のいい便利屋になり始めてる気がなくもないですが、彼に夏用クーラー(魔力可動式)を作らせ、それをつけっぱにして寝たはず。
「ま、まさか……」
起きたくない気持ちは強くとも、起きなきゃこの暑さは解消できぬ。
「oh...」
マジっすか。ダメっすか。魔力込めてもうんともすんともっすか。
「はぁ。しょうがありませんね。餅は餅屋です。街に行きましょう」
幸いにもクーラーは小脇に抱える程度の大きさでしたので、運ぶこと自体は難しくはないです。あとはポメちゃんも連れてかねば。さっきから声しないと思ったらあの子暑さでへばってやがりましたよ。
というわけで、支度を済ませたら左にクーラー右にポメちゃんを抱え、家を出る。
「うぅわぁ、イイテンキダナー」
雲のない空はその眩しさと暑さを遺憾なく与える奴さんの独壇場。魔法無かったら家から出ようとも思いませんでしたね。まぁ、どっちにしろ暑さに根負けして一人と一匹のミイラができてるでしょうけど。
「魔法も万能ではないですから、急ぐに越したことはないですね」
というわけて、カット!!
ーーーーーー
「ふむ、それで壊れたから直せということか」
「そうですよ、さっさとしてください」
というわけで、着くなりクーラーぶん投げました。
ちなみに、今の台詞は一抱え程しかないクーラーに下敷きにされている人の言葉です。
「修理は専門ではないが、まぁ作ったのがこの私だ。一応どういう構造をしているのかも知っている。ただ、」
「ただ、何ですか?」
「壊れたということは何かしらの理由がある。つまり直したところで原因がわからないのならまた壊れるだけだが?」
「はっきり単刀直入に言ってくれませんかねぇ?」
「新しく作った方が早い。ので、」
「?」
「『彼女』から氷結石を貰ってきて欲しい」
「『彼女』?」
「ああ、そうか。キミは知らなかったな。キミと私の、『お仲間』だよ」
ーーーーーー
『彼女』は4番目に長い。またその生まれから雪山に住んでいて、冷媒やそれに類するものは全てその『彼女』から貰っている、とのウィリー談。
『普段なら私の使い魔に定期的に行って貰ってるのだが、如何せん道中に私がインプットさせた素材を回収してくるようにしてるため時間が掛かる。よって、キミに行ってもらいたい……あと、そろそろこのクーラー退けてください』
つーわけで、件の『彼女』がいる雪山の麓まで来ましたよーっと。ポメちゃん? アイツは置いてきた。この先には付いていけそうにないからな。
「山に入ればキミならわかるとも言ってましたし、とりあえずいきますか。『寒さは涼しさ』」
愛用の釘バットを肩に担いで雪山登るってどんな図ですか。
「んー入ればわかる、ってこーいうことかな」
傾斜を登り始めた瞬間に、背筋の辺りがチリッとした違和感を得た。それが『彼女』の居場所なのだと直感的に感じとり、そっちへ進むことにしてみましたが……
「キャッフー」
犬とか
「オネサンコンヤドォー」
イエティとか
「もっとあt(ry)」
妖精なのか精霊なのかとか
「イキテルッテナンダロ」
「イキテルッテナァニ」
テリドリとか
「パンツ一丁でよく寒くないですねぇ」
遭遇するどれもこれもがツッコミ待ちなのかと思うぐらいには変なのばっかでした。寒さが人をおかしくするのか……暑さの影響がここまで波及しているというのか。
とまぁ道中は何事も(何事もか?)起こらず、遂にドーム状の雪性建造物の前までやってくることができましたよ。
「すいませーん」
手でノックして襲われても困るのでバットでノック。端から見たら完全に強盗ですよコレ。
都合3ノックか4ノックあたりでテンションが上がり始めたところで、ガチャという音で5度目のノックは空振りに終わりました。
「うるせーです」
「あらカワイイ」
扉を開けて顔を覗かせたのは、厚い衣服を纏った女の子でした。犯罪臭漂うロリボディに、特徴的なプラチナブロンドと赤い瞳。ヤベェですよ、コイツはッ。
「何してるですか、さっさか入るです」
「あっ、お邪魔しまーす」
というわけで、中に入れてもらいました。
おお、暖かい!
「オマエ、魔女だなです。山入ったときから感じた魔力だです」
「えっーと、新参者のアヤメと申します。以後お見知りおきを……」
「めんどくせー言葉使うなです。クーはクーはです。アヤメと同じ魔女だです。コート脱ぐから、そっち座ってろです」
「あっ、はい」
なんか語尾に『です』が入ってるのは気にしたら負けな気がしてきたんですが、とりあえずは氷でできた椅子に座ることにしました。あ、そんなに冷たくない。
「待たせたな、です」
「ッ!? なん……だと……」
「? なに胸ジロジロ見てるですか、アヤメ」
「プラチナブロンドツインテ赤目肌白ロリ巨乳名前一人称です語尾締め、だと……!?」
つ、強すぎる。もうだめだぁ、お仕舞いだぁ。
「何をいきなり落ち込んでるですか、アヤメは」
「い、ぃえ、胸囲の格差社会というものを見せつけられた悲しみが、かな、しみ、がぁ」
泣きそう。というか泣いてます。
世の中不平等すぎませんかねぇ?
「まぁクーには関係ないです。それで、何の用で来たです、アヤメ」
「あぁ、その、クーラーを作るのにぃ、氷結石が必要とかでぇ、ここにぃきたんですよぉ」
「ウィリーの野郎に頼まれたですか。まぁ氷結石を欲しいためにクーのところに来るヤツなんてアイツぐらいなもんです」
「それで、あの、戴けるんですか?」
「まぁあれぐらいならすぐ用意できるし、手間もかからねぇからくれてやるです。ただまぁウチに今氷結石はねぇですから、取りに行くですよ」
「取りに行く、て何処に?」
クーちゃんはわざわざ脱いだコートを再度着て、白のイヤーマフとニット帽、白い毛皮で覆われた手袋を身に付けると、振り替えって言います。
「イエティの集落です」
ーーーーーー
「イラシャイクーチャン」
「来てやったです。今日は長老以外に調子わりぃ奴はいるですか?」
「トナリノゴリサンコシイタイッテー」
「じゃあついでに診てやるですか」
「ドーモドモネー」
目の前で繰り広げられているのは、雪山で遭難したとしか思えない少女と、全身毛むくじゃらの巨漢というなんともシュールな図である。というか巨漢はイエティなんですけど、しゃべり方が裏通りとかでキャバクラの呼び掛けとかしてそうなお外の子見たいで違和感バリバリなんですががが。
「アラオネサンキテクレタノネー」
「あ、さっきのイエティの方でしたか」
「ゲーイはの家系は代々集落の門番兼案内役です。だからこうして気軽に意思疎通もできるです」
「ヨロシクネー」
「アヤメはクーが案内してやるです」
「カシコカシコー」
「さ、来るです」
「あっはい」
というわけでまさかのイエティの集落ですよ。門番の名前が色々ヤバイかと思いましたけど気にしてもアレなのでスルー。というより、
「クーちゃんどうしてイエティの集落に来たんです? あとどんな関わりが?」
「ちゃんやめろです。クー、アヤメより年上です。あと言ってねぇですか、クーはそもそもイエティです」
「え」
えええええええ。いやいやそんなまさかだってイエティってさっきみたいな毛むくじゃらじゃないですかクーさん嘘はいけねぇですよほんとマジやめてくだせぇよ。じょうだんでせう?
「イエティは毛むくじゃらってなってるですが、そもそも全身毛むくじゃらの巨漢はみんなオスです。イエティは雪山に生息してるですが生まれてから死ぬまでほとんどのイエティが山を降りることなんてねぇですし、それもあって雪山の寒さに耐えるために全身に保温性の高い毛と皮下にエネルギーを蓄積できる分厚い皮があるです。対してメスは逆に近いです。メスの最もな役割は子供を産み、育むことです。だから得たエネルギーを多く使わないために体は小さいですし、赤子の最たるエネルギー源は母乳ですから母乳を多く蓄えられるように胸も大きくなるです。全身毛むくじゃらじゃないのもメスは外の脅威に対してオスに守られるもんですから保温性をそこまで必要としてねぇですし、人間のメスに近い構造も厳密にはイエティの祖先と人間の祖先がおんなじだからとされてるです。だからイエティはみんなこの雪山にくる人間には友好的です」
「ほー」
「着いたですよ。ジジイ、入るですよ」
まさかのイエティの生態を知るとは思っていませんでしたし、イエティのメスはみんなクーちゃんレベルとかいうSANチェック待ったなしの衝撃を喰らったわけですが、道中に見えていたクーちゃんの家と同じ雪性の建造物があるなかで、一回り大きい家に辿り着くと、扉を開けて入っていきました。
「おぉおぉぉおぅ」
「でかっ!」
多分喜びを示した声なんでしょうけど、それよか目についたのはそのでかさ。さっきのイエティ(ゲーイ)の2回りは大きい体と、しわくちゃな顔は確かに、長老と言われたら納得のいくものだった。
「こいつはアヤメです。まぁクーの客です。いつもよりちょっと早いですが、ジジイの体診るですよ」
「おおぅおぅ」
長老とおぼしきイエティは親指がクーちゃんと同じぐらいの大きさな訳ですが、その為なのかクーちゃんは躊躇うことなく長老さんの毛を掴み登っていくという、ロッククライミングならぬヘアークライミングが行われているわけですが、
「おぉふ、ぉふう」
「ジジイ呻くなです。いつもいつも我慢しろって言ってるです」
いやぁ、アレは呻くは呻いてんですが、多分違うような……。めっちゃあの長老顔にやけてますし。あぁ、そういうことですか。
「『真なる声を』」
「おっふおっふ(あかんわ、クー様ほんま柔こくてきもちええわぁ。あかんのに、あかんのに、欲望に忠実な自分でごめんさいぃ)」
「ああもうジジイ、心臓の音聴きとりづれぇです」
「おぅ(すんません)」
あのジジイ、クーちゃんの体が押し付けられてるからって、全力で楽しんでやがる!? しかもあの二人会話が成立してないんかい!
お、落ち着こう。落ち着きたまえ。すごく落ち着いた^^。
ある意味あの長老の言葉をクーちゃんは理解してないからこそ、平穏は保たれてると考えよう。下手に口を出して関係を悪くするというのは私のすることではない。そう、することでは……、
「ぉぉうぅ(やっぱアカン、らめぇその凶器をこれ以上押しつけないれぇ!!)」
「いい加減しろよ好色ジジイ!?」
「おっ!?(直接頭に声が、いやバレた!?)」
「いきなりどうしたですかアヤメ。ん、ジジイが静かになったです。……ふむふむ」
さすが押さえきれませんでしたよ。こんなの普通じゃ考えられない。これじゃ私、この長老のことただの好色ジジイにしか見えなくなっちまうよ。
「わかったのです。少しですが溜まってるみてぇですから、さっさか取り除くですよ。ほらジジイ、寝っころがって口開けるです」
「おう(わかりました、クー様)」
いまさら過ぎるくらい真面目な返答でしたけど、残念がる表情がありありと出ていてまったく威厳もあったもんじゃないです。
「『不溶の氷よ、出てくるのです』」
そう思っている間に、長老の胸に跨がって手をついたクーちゃんは、魔法を唱える。瞬間、長老の大きく開けた口の中が発光すると、クーちゃんの顔と同じぐらいの大きさをした氷塊が出てきました。
「っ……ふぅ。終わったです。ジジイ、起きても大丈夫です」
「おぉおぉ、ぅぅおぅ(胸のつっかえが取れたかのような清々しさ。ありがとうございます、クー様)」
「ほらアヤメ、これが氷結石です」
「これが氷結石。想像以上にでかいですね」
「今回はいつもより早く回収したですが、普段ならこの倍はあるです」
逆によくそんなものが長老さんの口から出てきましたね……。
「それじゃジジイ、クーはゴリんとこ診てくるですから、次来るまでに往生してろよです」
「おっぉおっお(この老いぼれもクー様が成長するまでは生き永らえますよ)」
「それじゃ、行くですよアヤメ」
「わかりました。それでは長老さん」
「また来てくだされ、クー様のご友人」
「普通に喋れるんかいッ!」
驚愕の真実を最後に露にして、長老宅を後にした私とクーちゃんは、ゴリさんというイエティ内のモテキング、二人の妻(とても可愛かったですマル)に5人の子供という構成でしたが、どうやら腰を痛めたのは夜に同時に二人相手にした上で朝に子供五人を背に乗せたという超腰に負担が掛かることをしたそうです。元気なのはいいんですが、あの奥さんたちを同時にシたというのを聞くと、犯罪臭がよりヤバイ。
クーちゃん曰く、ゴリのように雄々しく甲斐性があるイエティはとてもモテ、集落のオスイエティにとっては目指すべき姿の一つだそうです。
「とりあえず今日はゆっくりしろです。腰を使わない程度なら動いてもへーきですから、寝てるといーです」
「おんっ(かたじけない、クー様)」
「ぁおぅ(ありがとうございます、クー様)」
「んあぅ(クー様、ありがとッ)」
というわけで集落での用事も終わり、クーちゃんの家へと帰ることにしました。
「マタキテネー」
門番のイエティさんに見送られて。
ーーーーーー
氷結石は私が抱えて持っていきました。見た目以上に重くはあったんですが、そこら辺はまぁ魔法でどうにかこうにかして。不思議だったのは氷結石は冷気を放ちながらも溶ける素振りは一切なかったということでした。
「氷結石はイエティの体内に蓄積したこの雪山の雪です。若いイエティなんかは自身の体機能で自浄できるですが、年老いたイエティは雪を体外に出せず、少しずつ溜まってくです。それが体内を循環して圧縮された雪は氷となり、大きくなるとやがて詰まるか内臓や血管を破って絶命に至るです。だからクーは、定期的に年老いたイエティを診て回って、氷結石を回収してるです。固めた氷にクーの魔力が干渉することで氷結石は溶けないものになるです。だから、アヤメが触っても溶けねぇですし、この雪山から出ても溶けねぇです」
「でも、そうしたら氷結石は今まではどうやって処理を?」
「それは、ウィリーが使い魔を寄越して食糧とかと交換で氷結石を渡してるですよ。なんでもコレほど優れた冷媒はねぇそうです」
確かに、あのキチならこんな夢のようなもんを欲しがらないわけないですね。彼の部屋が訪れる度にひんやりしてるなとは思ってましたが、この氷結石も関係しているということなのでしょう。
「さて、アヤメの用事はこれで済んだです?」
「終わるとなると呆気ないものでしたねぇ」
「なら、とっとと帰るです」
「あ、そこはご飯食べていくとか泊まっていくとか聞かないんですね」
「クーは人付き合い得意じゃねーですし、魔女です。魔女は基本、人とは馴れ合わねぇです」
「でもアレ(ウィリー)は街に拠点を置いてますよ」
「アレはただのキチです。アイツを基準にすんなです」
「あー、まぁ確かに」
「けどまぁーーどうしてもっていうなら。アヤメをウチに泊めてやってもいいです」
「………………」
なにこの可愛い生き物。うっそマジだろ天然記念物にもほどがありますよこの純粋少女。いや、年齢でいったら私よりもうえですけど、そんなの関係なくてですね、わかりますよね、自分より小さい子のツンというよりクールの方だと思いますけどデレですよこれは。ちょろいとかいっちゃだめですよそもそも多分長い時間をここで1人過ごしてたからだとか色々思うことはあるんですけどいやいやともかくいまはお誘いいただいたんだから返答をしないといけないですしほらちょっと心配そうな表情になってますから
「是非お願いしますッ!!」
「お、おう。そうですか。わかったです。ゆっくりしていけです」
というわけで、クーちゃんと一緒にご飯を食べてお風呂に入って一緒に寝ました。
え、そこでのこと? HAHAHA!敢えていうなら白くて大きくて柔らかく包み込むようでした。何がって? さぁ、なんでしょうね?
ーーーーーー
ちなみに持ち帰った氷結石を使って出来上がったクーラーはありがたく使わせてもらってます。
「でも、夏になったらクーちゃんのところに避暑しにいけばいいかもしれませんね」
などとも思うのでした。
その場で思い付いたインスタントな設定を書くというのは後腐れが無くて結構好きです。
いつにもまして(4ヶ月更新無かったんですががが)駄文マシマシだったので、楽しめなかったらすみません。少しでも楽しんでいただけたならありがとうございます。




