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幕間 『カッパのワシと夏休み(後編)』

カッパを追い払ったあと、私達はそこそこに川遊びをして、バーベキューを楽しんだ。


小宮さんがピーマン嫌いだったり、鬼宮さんが脂っこいものはあまり好きじゃなかったり、ヒカリがブラックコーヒーを飲めたり結構いろんなことわかった。

ちなみに私はブラックコーヒー飲めない。


その後私達は天体観測をした。

まあ、天体観測と言っても本当に星空見上げるだけのことなんだけど。


「星きれいだねー」


「そうね」


「あさひ。夏の大三角形ってどれ?」


「え?そうね……多分あれとあれとあれ?」


優子に聞かれ、なんとなく強く光ってる気がする3つを指差す。


「あさひちゃん詳しいねー」


「いや、適当だし。名前も知らないわ」


「えっと、ベテルギウスみたいな名前じゃなかった?」


「デネブ、アルタイル、ベガだよ」


私達の会話に小宮さんが答える。


「そうなの小宮さん?」


「うん。アニソンで覚えた」


「ふーん。どれがデネブ?」


「うーん。わかんない」


そのアニソンでは位置関係とかまでは歌ってなかったんだろう。


「ところであさひちゃん。オリオン座ってのはどれ?」


「オリオン座って夏だっけ?」


「冬だっけ?」


「さそり座と一緒に出てこないのは覚えてるんだけどな」


「確かさそり座生まれは11月だったよね?」


「じゃあ冬がさそり座かぁ」


知識のまるでない胡乱な会話を続けていたら、だんだんと眠くなってきた。

星を見て興奮できるほど私に星への興味はない。


「そろそろ寝るわ。おやすみ」


「おやすみなさーい」


私はテントに戻って就寝する。

寝る前にスマホで調べたら、さそり座は夏らしい。



―――



「あさひちゃん。あさひちゃん」


深夜、私はヒカリの声で目を覚ます。


「あさひちゃん。開けて。中に入れて」


「んー?ヒカリ?なんかあった?」


声は私のテントの入り口と反対側から聞こえた。


「開けて。ねえあさひちゃん。開けて」


「そっち入り口じゃないでしょ」


「そっか。そうだね。ねえ、あさひちゃん。開けて。中に入れて」


「なんの用なのよヒカリ」


テントに映る影が、正しい入り口の方に移動し、開けるように言い続ける。


「開けて。あさひちゃん。開けて。早く開けて」


「勝手に入りなさいよ」


「いいから開けて。中に入れて。早く開けて。あさひちゃん」


「なんか荷物でも持ってるの?」


「あさひちゃん。早く開けて。開けて。開けて。中に入れて」


ヒカリは、ヒカリの声は何も答えず、テントを開けることを要求し続けてくる。

ヒカリは天然で抜けていることはあるけど、聞かれたらちゃんと答えるはずだ。


「……ねえ、本当にヒカリなの?」


私がぽつりとそう言うと、ヒカリの声は途切れた。


「……ヒカリ?」


「開けろ」


確かにヒカリの声がした。

だけど普段のふわふわしたものじゃなくて、とても冷たい感触のする声がした。

そしてその声の主は、テントをバンバンと叩きながら、ヒカリの声で叫び続ける。


「開けろ!開けろ!いいから開けろ!早くしろ!中に入れろ!」


「ひっ……!」


「開けろ開けろ開けろ開けろ!お前が開けろ!私を中に入れろ!早く入れろ!早く入れろぉ!」


ヒカリの声の主はテントをゆすり始めた。

驚きで声が漏れたが、次の瞬間には私の中では恐怖よりもヒカリを利用しやがってという怒りが勝っていた。


このクソ妖が。殴り飛ばしてやる。

そう思いテントを開けようとした。その時だった。


「どすこい!」


その声がテントの前に響き、ヒカリの声が突き飛ばされる。


「こんのヤマノケがぁ!川の横で悪さできる思たら大間違いやぞ!」


この声聞いたことがある。昼のカッパだわ。

何かが何度か投げ飛ばされる音がして、最後に川に何か大きな物が投げ込まれるような音がした。


「ふぅー。面倒なやっちゃでホンマに」


「……あの、昼のカッパですよね?」


「ん?おおなんや狙われとったの神様の姉ちゃんかいな。なら別に守らんでよかったかもな」


「ああ、まあそうかも……じゃなくて、あれなんなんです?」


「あればヤマノケっていう妖やな。テントとかドアとか窓とか開けさせて取り憑くやつや。人来る度に山から降りてくるからその度川に投げとるんよ」


「えっと、もういないんですか?開けても大丈夫?」


「一応日が昇るまではやめとき。それまではワシが見張っといたるさかい」


「……今度きゅうり持ってきますね」


「ええわこんな危ないとこ何度も来んでも」


その後、夜が明けるまで私はカッパと話していた。

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