第 5 話
ライターの取材だと言えば、卒業生が夜の学校に立ち入るのは容易い。
――あの時、僕が『魔の合わせ鏡』に襲われたトイレ。
……もっとも、今は現実側だが。
僕の時、そしてカリナちゃんの時も、『トイレで手を洗う』ことがトリガーだった。
洗面台の壁に付いた、長方形の鏡。
僕は自分の顔と、後ろに立つ『女』を一瞥した。
もう、やるしかない。
手を洗い、水を止める。
「私のこと、見た?」
反射的に顔を上げると、『5階の女』の顔が迫っていた。
その後ろに鏡は……ある!でも!!
「……お姉ちゃん、どいて?お兄さんとお話したいの」
――いつの間にか、赤いスカートの女の子と向かい合っていた。
赤い少女が小さく嗤う。
「お兄さんを帰してあげる。
だから……あのコを連れてきて」
真っ直ぐに射抜くような、鋭い瞳。
……逃げられない。そう思った。
――それからどうやって帰ったのか、僕は家のベッドで目覚めた。
慌てて文字を打つ。
「成功したよ」
深夜にも関わらず、直ぐにスマホが震えた。
「ありがとう。お疲れ様」
――素っ気ない返事。
でも、カリナちゃんは無事だ。
安心して、ふと気になった。
さっきの……どこまでが夢だったんだ?
スマホをどけた瞬間、膝の上の『ソレ』と目が合った。
「うわあああっ!!」
床に転がったのは……あの『赤い少女』そっくりの人形だった。
考えろ!考えろ!考えろ!
『コイツ』はどう対処すればいい!?
処分・分解・除霊……どれも危険かも知れない。
それなら――
「これ……昨日の夜の帰宅途中で拾ったんですが、詳しい場所は覚えてません」
交番に遺失物として届けた。
嘘は――吐いてない。




