一国の王(ルビナ視点)
「今日をもって、アンス・カヒーナはこの国の18代目国王となることをここに宣言する!」
その言葉と共に、カヒーナ王女の頭に王冠が載せられ、本当の王へとなった。
アンス国の民は湧き上がり、カヒーナ王の名前が呼ばれていく。その名前は1個また1個と増えていき、全ての国民が、カヒーナ王の誕生を喜んだ。
きっとこの国は良くなっていくのだろう。カヒーナ王とその専属騎士、アルデミスによって。
王位継承が終わった後のこと。
「私もいつか...」
来賓用の席に座っている俺たちは、ルビナ王女のその言葉を聞いていた。
「直ぐにその時が訪れます」
ルビナ王女への本当の忠誠。それを成し遂げた俺は身体能力でのみだが、師匠と並ぶことが出来た。身体能力だけでも並べたのなら、王都を取り返すには十分だ。
「ルビナ様、最後の戦いが迫っていますね」
「ええ、私がパラシアスを...この世界をより良くするために」
俺たちは最後の戦いに備えるように、あの光景が、自分たちにも訪れるようにと覚悟を決めていた。
「あの、水を差すようで悪いのですが、王都奪還は待った方がよろしいかと」
しかし、この場においてユグラスだけが、王都奪還を優先していなかった。
「どうしてそう思うの?」
ルビナ王女もそう思ったのだろう。だが、ユグラスの言うことに俺たちは考えさせられる事になった。
「王都は今、食料がありません。それはリーヴァとシャーレさんから潜入時に聞いてました。ですからパラシアス港町ユーシリアに向かい、食料を確保するのがよろしいかと」
食料...確かにこれからルビナ王女の元には多くの兵が集まるだろう。それを賄うだけでなく、パラシアスを取り戻した後のことも考えなければいけない。
俺たちはユグラスに気付かされたのだ。王都を奪還して終わりではないと、問題はすぐそばにあると。
「そうね、まずは国民の食料を解決しないとね」
「ええ、あれからさらに月日が経っております。今の王都の状況がどうなっているかも想像がつきません」
シャーレさんの言う通り、王都陥落3日後にあの荒れよう、だとしたら今のパラシアスはどうなっているのか検討もつかない。
「ならば、すぐにでもユーシリアに向かいましょう」
「そうね、カヒーナ王と話し合いをしてからにはあるけれど、最優先事項としましょう」
今、ルビナ王女の元にはパラシアスの軍1万が着いている。これは第三王子についてきた兵士達だ。
ルビナ王女は今、パラシアス最後の希望としてこの軍を率いている。
「話し合いには日数が必要ですよね。その間に兵を募りましょう」
ユグラスはすぐには出発出来ないことをわかって、今出来る事を考えていた。
「兵を募ると言っても来てくれるかしら」
「少ないとは思いますが、アンス国との盟約を各国に知らせ、ミクラナ帝国の追放令を出すことでどうにかなるかと」
パラシアスの王族にいい思いを持ってなかったとしても、アンス国との盟約、ミクラナ帝国の追放、この2つによって多少は緩和されるはず。
何より、ミクラナ帝国に王都攻め落とされて、黙って見ていていいものでは無いはずだ。
「カヒーナ王と盟約の事は話してみるわ」
「ありがとうございます」
その後、ルビナ王女と共にカヒーナ王の元へ行くとこになったのだが、そこで驚愕の事実を聞くことになった。
「私とアルデミスが結婚するのよ」
なんと、カヒーナ王がアルデミスと結婚するというのだ。ルビナ王女は驚きすぎて固まってしまっている。
「確か王女様、あの光景見て羨ましがってたから、王になったらリーヴァと...」
ユグラスの悪ふざけは軍師となっても健在のようで、俺とルビナ王女の結婚を勧めてきた。
「ルビナ様にはまだ早いです。でもどこの馬の骨とも知らない男と結婚なさるくらいなら、リーヴァさんの方がいいですね」
そういうシャーレさんの顔は、実の娘を心配する母親のようだった。
「2人ともふざけないで!それよりも...カヒーナ王、ご結婚おめでとうございます」
「ふふっ、ありがとうございます。ルビナ王女」
カヒーナ王は今までの中で1番上機嫌だった。
だが、横にいるアルデミスから警戒されてしまっている。
「アルデミスさん...そこまで警戒しなくても」
アルデミスも無意識だったようで、その警戒を直ぐに解いた。
「申し訳ありません。リーヴァさんだと分かっていても、その雰囲気...慣れないものでして」
どうやら俺が常時、能力発動状態の雰囲気に慣れていないようだった。
俺としてはそこまで変わった感じはしないのだが、かなり変わったらしい。
「それは仕方ありませんね」
最初にあった時は敵意を向けられたことを考えるとこれでも収まった方だ。
「カヒーナ王、お忙しい中申し訳ありませんが、話し合いの時間を取っていただけますか?」
ルビナ王女は本題のため、カヒーナ王への確認をとる。
実際、国王になったばかりなので、問題などもあるだろう。多少は遅れることを覚悟していたが、カヒーナ王は寛大だった。
「ルビナ王女との話し合いならば、すぐにでも時間を取らせて頂きます」
「ありがとうございます。カヒーナ王」
そして一日後、話し合いの場が設けられた。
「今回、お話させて頂きたいのは、交わした盟約の事です」
「それに関してはすぐにでも協力させていただきます」
カヒーナ王は考えることも無く、協力してくれる意志を見せてくれた。
「では、盟約の件を各国に知らせて頂くことは出来ますか?」
これをすれば、ルビナ王女は全ての国そして、パラシアス内からも王族として認定される。
「もちろん協力させてもらうわ。今すぐにでも盟約の新書を用意しましょう」
そうして、この日アンス国18代目国王アンス・カヒーナとパラシアス第3王女パラシアス・ルビナの盟約が各国に広まることになった。
そして翌日、パラシアス第3王女の名においてミクラナ帝国追放令が発表される事で、以前程とは言えないが、5万の兵が集まった。
それから1週間後、ルビナ王女率いる3万の軍がパラシアス港町ユーシリアへと出立する事になった。
残り3万の兵はアンス国防衛のためアンス国に残る事になった。
「では、カヒーナ王またお会いしましょう」
「ええ、次会う時はルビナ王女の国を取り戻す戦ですね」
そうして、ルビナ王女とカヒーナ王は固い握手をして、離れていった。




