並び立つ騎士(ルビナ視点)
リーヴァが私を守ってまた死にかけてしまった。強くなろうとしてるのに、こればっかりはどうにも出来る気がしない。
強くなりたいのに、私は弱すぎる....
「リーヴァ....」
リーヴァが苦しんでいるのに何も出来ない。私が狙われたせいで、またリーヴァが傷を負った。
「どう...なったの?」
「分かりません。ですがあの者は引いたようです。気配がありません」
カヒーナ王女とアルデミスはこの状況を整理していた。
「リーヴァさん...」「リーヴァ」
シャーレとユグラスは倒れたリーヴァの元へいき、手当てをしていた。それからは早かった。
カヒーナ王女が用意してくれた部屋でリーヴァを休ませた。
「...リーヴァさんが心配なのも分かりますが、1度話をしてもいいですか?」
「ええ、大丈夫よ」
本当は大丈夫じゃないけれど、私は王女。こればかりは割り切らなければならない。
そして、それ以上に話し合いに参加しなければ、リーヴァが何のために傷ついたのか分からなくなってしまう。
「確認してもらったのだけど、アンス国の国民は無事だったわ。あの能力はもう解けたみたいで、兵士たちも負けたと言うことを理解して投降したわ」
あれは死んでいるのではなく、やはり能力によるもの。それが解除されたこの国の人間は、全員生きていたということ。
「まだ不安要素はあるものの、お陰様でアンス国の奪還が出来ました。本当にありがとうございます」
カヒーナ王女は頭を下げていたが、これはお互いのためで、私が....背負う責任なのだ。
(私は背負えているの?)
「いえ、私達は私たちのために行動したのです。それに元はと言えばパラシアスの王族の責任です」
「それでも、ルビナ王女は私の国を取り戻してくれた。だから次は私の番よ。パラシアスを取り戻しましょう」
そうして差し出された手を私は握った。
「ありがとうございます。カヒーナ王女」
そしてその後すぐに、リーヴァの悲鳴にも似た叫び声が聞こえた。
「っ、ごめんなさい。行かないと!」
「ええ、わかってるわ」
話し合いの最中に抜け出してしまうのは、王族としては良くないことだけれど、今の私はそれよりも大事なものがあった。
「リーヴァ!どうしたの!」
「ルビナ様、それがリーヴァさんが起きた途端にこうなってしまって」
リーヴァに付き添っていたシャーレが、リーヴァを抑えつつ、こちらに状況を説明するが、私には見えていた。
リーヴァの目の奥にある悲しみと怒りが...そしてその目とあった瞬間、リーヴァと初めて会った時のような感覚を覚えた。
「王...女...親の...エルの、仇」
そして、リーヴァは近くにあった剣を取り出して、私へとふらつきながら向かってこようとした。
「リーヴァさん!何をしているんですか!」
「シャーレ...様...俺は何を..俺は専属騎士....ルビナ王女を...守る者」
そしてリーヴァは自分の足に自分の剣を突き刺した。それはまるで自分を抑えるためのような行動だった。
(何が....)
理解が出来ていない。
思考が追いつかない。
それでも分かることは、リーヴァがこのままだとダメになってしまうということ。
「リーヴァ!どうしたんだ?!」
「...分からない。悪夢を見ていた事だけは分かる。家族が殺されたあの時を」
リーヴァの殺意は完全に消え去っていたが、次はその苦しみ、悲しみによって身体が震えていた。
「...申し訳ございません。ルビナ王女...貴方に剣を向けてしまった....」
私は何て言えばいいのだろうか。
私は何も言えずただ固まってしまった。
「夢に見るのは今回が初めてですか?」
「ここ数年は見ていませんでした」
私はただ、その会話を聞いていた。
「あの時、あの敵が能力を発動させてました。それと関係があるのではないですか?」
そうだ。私を守った時、1度何も起こっていない能力を発動させていた。
あの能力のせい....
「だとしたら....あの能力は一体...」
見た悪夢からしたら悪夢を見せているんだろう。だけど、今の私はそうは思えなかった。
「....憎悪を増長させているとしたら」
「ルビナ様....」
あの時見せたのは、王族への殺意。
悪夢を見せて、苦しんだ訳では無かった。
「ユグラス」
「どうした?」
「次に俺がルビナ王女に敵意を向けることがあれば、躊躇う事無く俺を殺せるか?」
「....なに、言ってんだよ」
「俺は専属騎士だ。もし守るべき人に剣を向けるならば、それは敵だ。だからお前が俺を殺せ」
その瞳には揺れる事ない意思が灯っていた。
私のためにリーヴァが死んでいいのだろうか。能力も国もない、力もない王女のために...
「....ダメ...そんな事させない。私なんかの為にリーヴァを死なせない」
「ルビナ様....」
シャーレが不安そうな目で私を見ている。
いや...違う!私は強くならなければならない!
ここで私が言う言葉はこんな言葉じゃない!
「もし、リーヴァが私を殺すような事があれば、それは私の器が足りなかっただけ!だから、気にする必要は無い!」
私は決意を示した。
これにリーヴァがどう答えるかも分からない。だけども、今の私に出来ることは虚勢だとしても、怖くても、伝えなくてはいけない。
そして私が見たリーヴァは涙を流していた。
「ルビナ王女.....貴方はいつから....そんなにお強くなられたのですか....」
「貴方に出会えた事で私は強くなったのよ」
これは嘘偽りのない事実だ。
それまでの私はシャーレがいてもただ、怯えることしか出来ない偽物の王女だった。リーヴァとの出会いが、私を強くしてくれた。
「....俺は迷っていたみたいだ」
リーヴァは自身の抜いた剣を見つめていた。
「師匠....貴方の言っていた意味がようやく理解出来ました。力というものは自身のために使うモノではなく、誰かのために...信じる者のために使うモノ」
リーヴァはゆっくりと目を閉じて、納刀した。何故かその行動にその姿に私を含めた全員が、神秘的だと感じて、眺めていた。
そして、リーヴァの髪がゆっくりと白色へと変わっていった。
「.....これって」
能力は発動させていないはずだ。
それなのに、リーヴァの髪が変化して行っている。今まであの能力を使っていた時に感じていた肌のヒリヒリする感覚もなく、穏やかな雰囲気さえ感じる。
全ての髪が白く染め上がった時、リーヴァはゆっくりと目を開けた。
「リーヴァ...お前」「リーヴァ...さん」
そしてリーヴァは私の前に膝をついて頭を下げた。
「ご迷惑おかけしました。ルビナ王女。このアルデナ・リーヴァ。今一度、貴方の専属騎士にならせて頂きたく存じます」
リーヴァは並んだ。
私のめざしている...いや、越えようとしている人の専属騎士と!
私も追いつきたい!
「今一度、この場で宣言します。パラシアス第三王女、パラシアス・ルビナの名をもってアルデナ・リーヴァを...私の専属騎士にすることをここに誓う!」
「その任、命をかけて全う致します!」
リーヴァが成長した。その忠誠心は迷うこと無く、惑わされる事なく、私に注がれている。




