vs王族(リーヴァ視点)
「ここが、宮殿か....」
「リーヴァ、貴方には酷な事を言うけれど、抑えなさい」
俺の家族を殺した奴がいると考えてしまったことで、顔に出ていたらしい。
「.....申し訳ありません」
(この調子で大丈夫だろうか....)
考えているだけで殺気が漏れ出していたならば、実際に顔を合わせれば暴走しかねない。
俺は自分の両頬を叩き、気を引き締め直した。
「もう大丈夫です」
「じゃあ行きましょうか」
「「はい」」
俺とシャーレさんはルビナ王女の後に続くように、宮殿へと入っていった。
「ただいま戻りました。父上」
国王を前に俺達は地に膝をつけて、報告をした。
(こいつらが....)
国王の近くには、王子が2人、王女が2人が立っていた。
「ルビナよ、どの面下げて戻ってきたのだ」
やはり、国王はルビナ王女に責任を取らせるつもりらしい。
(最悪のパターンか....)
俺はいつでも逃げれるように、あわよくば一撃入れるつもりで、この後の会話を清聴する。
「先の戦いでは敗戦してしまいましたが、次の」
「次などある訳がないだろう」
ルビナ王女の言葉を遮ったのは第2王子だった。
(こいつ...誰の言葉だと)
国王とルビナ王女の会話に割り込むなど、身の程知らずもいいところだ。
「ああ、レグルスの言う通りだ。ルビナ、貴様に次は無い」
国王もその言葉に続いた瞬間、俺はすぐに動ける準備をした。そして奴らに聞かれない声でシャーレさんに合図を送る。
「私が動いた瞬間、ルビナ王女と逃げてください。すぐ追いつきます」
「わかりました」
国王の言葉を聞いてもなお、ルビナ王女は反論しようと立ち上がった。
「お待ちください!せめて話だけでも」
その言葉に反応したのは、第2王子だった。
「だからお前に次はないと言っているだろう!愚妹が!」
その瞬間、第2王子は剣を抜いて....
「能力発動」
王族の能力を発動させた。
「えっ..」
第2王子は人間とは思えないスピードで、ルビナ王女の首を切り落とそうとしていた。
「ルビナ王女、もう話す事など無意味です」
俺は第2王子の剣を止めていた。
(っ、重い....)
この場で何が起こったか理解出来たのは、俺を含めて3人。今、俺と剣を交えている第2王子と動体視力の良いシャーレさんだ。
「あいつ、何者だ?」
第1王子が俺に対して興味を持っているが、今更遅い。残りの王族共は、状況を上手く呑み込めていない。
(今なら....)
「シャーレ様!今のうちに!」
「はい!」
シャーレさんはすぐ様、ルビナ王女を連れて逃げようとした。
「能力発動」
そしてその動きは、失敗に終わった。
「残念、あなた達はこの部屋から出られないわよ」
もう1人能力を発動させた王族、第1王女がいたからだ。
(こいつはなんの能力だ...)
「残念だったな、ルビナ。お前達はここで死ぬのだ」
嘲り笑うような王族共の声が聞こえるが、俺としては...
「最高だ...お前ら全員殺せるんだろう」
俺は懐から鬼の仮面を取り出した。
「何を言って.....まさか!」
俺の鬼仮面を見た第2王女が声を上げていた。こいつは見たんだろうな、鬼が初代の専属騎士だということを。
そしてルビナ王女ももう、戦う意志を決めたようだった。
「父上にお兄様方、私はここで死ぬ訳には行かないの!悪いけれど、ここで倒させてもらうわ!」
「最悪の状況ですが、リーヴァさんも居ますし勝てるでしょう」
そうして、俺達は王族と完全に敵対した。
「先に言っておくわ。私の専属騎士はあの悪魔を2体討伐しているわ。降参するなら今のうちよ」
相手を動揺させる手段ではあったのだろうが、1人には効果があったようだ。
「私は嫌よ!戦わないわ」
その声を出したのは、鬼の仮面を出した時声を上げた第2王女だった。
(1人削れたか.....)
全員殺すつもりだったが、ルビナ王女やシャーレさんに怪我をさせる訳にも行かないので減るなら減るで問題は...
「さて、これで3対4...十分過ぎる勝ち目だな」
その瞬間、国王が笑い出した。
「何を言っているんだ?お前らに勝ち目はない。何故なら私は死なないのだから」
死なないという事は絶対に負けないと言う事。普通なら諦めるところだが、俺の口角はどんどんと上がる一方だった。
「なぁ、国王。お前は痛みを感じるのか?だとしたら無限の苦しみを味あわせてやる」
俺の狂気にこの場の全員が、震え上がるような感覚だった。それはルビナ王女とシャーレさんも同様に。
「....どうなりますかね」
「私の父ながら同情するわ」
だが、ここで第2王子が仕掛けてきた。
「減らず口を!」
そのスピードはシャーレさんと比べ物にならない程、人間を超越したものだが、動きが直線的すぎた。
「どうしたんですか?第2王子様」
俺は嘲笑を飛ばしながら、王子の剣を受け流した。
そしてイラつく第2王子をさらに煽るように、ルビナ王女とシャーレさんに語りかけた。
「そうだ!ルビナ王女、シャーレ様。相手のスピードと力が強い時の対処法を教えますね」
俺は第2王子を軽くあしらいながら、ルビナ王女とシャーレさんに微笑みかけた。
きっと、俺以外からは狂気だと思われているんだろう。
「ええ、お願いします」
「レイピアだと意味あるの?」
意外にも、ルビナ王女もシャーレさんも俺の授業を受けてくれるみたいだった。
「レイピアでも十分受け流せますよ。力の入れ方や流し方にはコツが要りますがね」
「どこまでも俺を馬鹿にしやがってぇぇ!」
第2王子は血管がハチ切れんばかりに、力を込めた上からの一刀を落とすが、膝立ちをして、剣を抑えると....
「なんで止められるんだよぉ!」
「という事で、地面に平行になるように、骨を伸ばすと地面からの力もあって自身以上の力で抑えられます」
第2王子は距離をとって息を整えている。
(あれ?意外と冷静)
気が狂って襲いかかると思ったのだが、何故だろうか。
「こういう、能無しの敵だとよく使える手段です。あと攻撃が直線的なので読みやすいです。こんな風に」
第2王子が再び向かって来て、俺の首を狙った一閃を交わして、足をかけてあげると面白いくらいに転んでくれる。
「シャーレはあれを避けれていたわよね?」
「はい、多分ですが、一撃で倒せるという自負が、搦手に引っかかりやすくなっているのかと」
ルビナ王女とシャーレさんは、俺の戦いとも言えない何かから、学びを得ているようだ。
だが、そんな時間もパラシアスの兵による報告で終わりを告げた。
「陛下!陛下!」
俺達の戦いを知らないのか、扉から入ってきた一般兵は息を切らしている。
そしてその兵士がとんでもないことを言い出した。
「城外にミクラナ帝国の軍、40万が迫ってきております!」
その数にこの場の全員が、固まった。
(40万.....無理だ)
この場の人間のほとんどが理解している。この戦いは始まる前から負けていると。




