↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亡き婚約者の遺言〜20歳年上の婚約者に先立たれました。息子(20歳)を頼むと遺言されましても〜  作者: しののめ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/24

8-6

「恐らく、海外のお酒を取り扱っていた貴方の店に、グラート様が目を付けたのが全ての始まりでした」


 これはあくまで、私が自分の考えをまとめるための独り言だ。想像にすぎない。でも、何だか少しずつ、店主の表情が固くなっている。


「以前から、貴方はこっそり密輸品を取り扱っていたのでしょうね。それがグラート様にばれてしまった」


 うんうん、ありそうな線だ。


「それで、貴方はグラート様からこう持ちかけられた。密輸は見逃す。むしろ仕入れ先を広げてやろう。ただし、儲けはそれぞれの役割に応じて分け合おう、と」


 店主の顔色が青くなる。……もしかして、当たっているのかしら?


「密輸が公になっては罪に問われてしまう貴方は、グラート様の提案に乗るしかなかった。でも、きっと、ちょっとは期待したはず。密輸の仕入れ先が増えれば販路も広がって、もっと儲かるはずだって」


 でもね。悪いことを見逃してくれる人って、悪い人が多いんだよね。弱みを握るっていうことだもの。


「でも残念ながら、密輸で得た利益は、貴方の懐にほとんど入らなかった」


 理由があろうがなかろうが、領主の血縁であるグラート様に一般市民が逆らえるはずもない。泣き寝入りだったのだろう。


「貴方は、ピンはねした儲けを全て横取りされたこと、そして自分だけが犯罪に手を染め危ない橋を渡らせられていることに納得いかなかった」


 私は拳をぎゅっと握りしめ、店主の気持ちになり切り、絞り出すような声音で演技する。


「あいついさえ、いなければ。貴方はそう思った」


 そして画策する。相手を抹殺するためには、まず接触する必要がある。


「最初に、『特別に取り寄せたお酒があるんですよー』なんて言ってグラート様を呼び出し、良いお酒をふんだんに振る舞って泥酔させた中で、さりげなく、このお酒を渡したーー毒入りのお酒を、ね」


 すると店主は顔を真っ赤にして、机を強く叩いた。


「おれはただ、見知らぬ男からもらった酒を渡しただけだ!」


 なるほど、酒を渡したことは認めるけど、毒が入っていたなんて知らなかった。つまり殺人については否認、ということだ。まあ、密輸は罪だけど、殺人はもっと罪が重いから、そうなるのは想定内だ。

 それに。


「あ、心配しなくても、今お話ししたのは私の想像です」


 そう、今まで私が話していた内容は、独り言にすぎない。別に何か確証があっての言動ではない。だけど。


「まあ、何にしても密輸は罪ですからね」


 私は微笑んだ。


「しっかりと取り調べをさせてもらいます」


 今の話は全部私の想像だけど、密輸と併せて事情を詳しく聞けば、そのうちボロを出すだろう。警ら隊の皆さんに引き渡せば、私の仕事は終わりだ。


 何か甘いものでも食べたいな、なんて考えていた、まさにその時。


「うぅ……っ」


 突然、店主が胸を押さえて、苦しみ出した。


「……え?」


 尋常でない苦しみ方に私が狼狽える間にも、店主は苦しさに耐えかねてもがき、手元の酒瓶をなぎ倒す。


「あ……ぐっ………!」


 今度は喉を押さえ、その唇からつと一筋の血が流れ落ちる。同時に白目を剥いた店主は……そのまま床に倒れ伏した。


 ガラスが割れ、人が倒れる大きな音がしたためか、外で待機していた警ら隊の面々が突入してくる。


 そう、突入してきた人たちは皆、私が襲われていると思っていたに違いない。

 しかし、彼らの眼前に広がっていた光景。それは倒れ伏す店主と呆然と立ちすくむ私の姿だ。


 警ら隊の皆さまの視線が私に集中する。


 ん? もしかして私、まずい状況?


 だから取り敢えず訴えておく。


「私、やってません」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。