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お隣さんが俺の姉?!  作者: 恋夢
6/6

喧嘩


 最近になってやっと俺と優衣が恋人同士だという誤解が解けた気がする。

と言うのも皆忘れているように思える。

 最初こそ何故か驚かれたものの今では四人組として周りから認識されていた。

「よっ九十九、優衣ちゃん」

「おはよう鋼、柊さん」

「お、おはよう」

「優衣ちゃん言うな!」

「まぁまぁ、良いじゃないの」

「ねぇ九十九。 私って先輩だよね?」

「一応ね」

「一応なの……?」

「あ、いやほら……あれだし……」

「そ、そっか……」

 まだ、柊さんと鋼には言えていない。

俺たちが姉弟であることを。

隠しているつもりはないんだけど、中々言い出せなくて結果的に隠している形になっている。

個人的には早めに打ち明けたいと考えている。

何かあったときに相談出来る人はやっぱり欲しい。

そういう所から見てもこの二人は適任だ。

なのに何故か言い出せない。

あんまり考え過ぎるのは良くないよな。

 そろそろ学校だし気持ち入れ替えないと。

「九十九、美琴ちゃん、鋼君また後でね」

「はい」

「わかった」

「りょーかい」

 下駄箱で優衣とは別れる。

2年と1年では校舎が少し離れている。

「何で私だけ別々なのよ」なんて愚痴をこぼしていたが、こればっかりは仕方が無い。

最近は時間がギリギリで席に着く頃にはホームルームが始まる。

これから退屈な授業が始まると思うと気持ちは沈むが、昼になればまた四人で集まって色々出来る。

そう思うと頑張ろうって思える。

ただ、どうしても睡魔には勝てない。

結局1限と2限の授業は寝てしまった。

先生も呆れたのか、起こしにあんまり来なくなった。

 3限もいつもの様に寝ようとしていたのだが、教科担任が欠席しているらしく自習監督として中谷先生が来てしまった。

「今日は先生がお休みと言うことで私が自習監督をする。 寝たり、サボったりしているやつにどうなるか覚悟しておけよ」

 そんなこと言われたら寝れないし、ちゃんとやるしかないよね。

 提出課題をなんとか終わらせ、先生に提出する。

「山神、やれば出来るじゃないか。 これからは真面目にやって欲しいものだ」

「は、はぁ……。 善処します」

「善処とかじゃ無くてやるんだ。 いいな?」

「はい!」

「全く返事だけはいいのだから。 ところで、この間課した課題はどうなっている。 進んでいるのか? 提出日は、明日だぞ」

「も、もちろん順調に進んでいますよ。 明日ですね。 わかりました」

「進んでいるならいいんだ。 明日出せなかったら、課題増やすからちゃんと出すように」

「は、はい」

 やっべぇ……。 まだ半分も終わってないよ……。

まじどうしよう。

今からやるべきだよな。

席に着き課題を机の上にひろげる。

終わってない課題を手当たり次第にやり、気がつけば昼食の時間になっていた。

 4限を丸々使っていたからか割と進んでいた。

「九十九、美琴行こうぜ」

「おっけーってあれ? 柊さんは?」

「あ、ほんとだ居ない。 もう行ったんじゃねぇの」

「相変わらず早いなぁ」

「そうだな」

 四人合流して普段と変わらず昼食をとっていた。

相変わらず目立つようで周囲の目が気になってしまうときが多々ある。

周りから見ればそんなに珍しいことなのか?なんて思うが、きっと珍しいのだろう。


 楽しい時間はあっという間に過ぎ、気付けばもう放課後だ。

いつもの様に、二人で家まで歩く。

 最初は恥ずかしなんて思ったりはしたが、今ではこれが普通だと感じていた。

「なぁ、優衣」

「なに?」

「最近楽しいな。 これは、きっと優衣が俺の姉だったからだよ。 ありがとう」

「いきなり何を言い出すのよ。 私だって同じように思ってるのよ」

「そうか。 それは、嬉しい」

「早く帰りましょ。 今日は晩ご飯一緒に食べるんだからね」

「そっか。 今日は一緒に食べる日か」

「そうよ。 まさか、忘れてたの?」

「ごめん。 忘れてた」

 その一言で優衣の表情が暗くなったように見えた。

俺は気のせいだと思い何も言わなかった。

 晩ご飯の時、いつもなら料理の味を聞いてきたりしてくるのに、今日は何も聞いてこずに黙々と食事を食べていた。

「なぁ、優衣。 何かあったのか?」

 持っていたスプーンを優衣が落とす。

俺が聞いたとき一瞬固まったように見えたが、直ぐに拾っていたからそれもきっと見間違いだと思った。

優衣はドジを踏むことが多い。 きっと、たまたま手から滑り落ちただけだろう。

 俺は、そう思っていた。

「何かあったのか?」 

「何も、ないわ」

「そ、そうか。 優衣、何か怒ってないか?」

「別に……」

 絶対怒ってるよな。

俺何かしたかな。


 その日以降、俺がいくら話しかけても素っ気ない感じでしかなかった。

鋼や柊さんには普通に話しているのに、俺にだけ優衣は冷たかった。

 普段と変わらず四人で昼食をとっているときに俺は優衣に聞くことにした。

「なぁ、優衣最近俺にだけ冷たくないか? 俺何かしたのか?」

「そんなの自分で考えなさいよ」

「考えてもわからんから聞いてるんだろ」

「なんで、わからへんのよ。 九十九が、九十九が大事な日のことを忘れるからやろ」

「あれは、謝ったやんか」

「私にとってあれはあんなに軽いもんやないの」

「そんなこと言うたら、昨日一緒に買い物行く約束すっぽかしたやんか。 俺かって買い物行くん楽しみにしとったんやで」

「私はいまのまんま行ったかて、なにも楽しないおもたから行かんかったんや」

「それなら連絡の一本もよこさんかい」

「どれもこれも、全部九十九が私と晩ご飯食べる日のこと忘れとったからや」

「今から謝ったらそれでええんか?」

「もう、遅いわ」

「は? そんなんやったらもうしらんわ。 こんな、姉とは絶交や」

「私かて、こんな弟いらんわ」

「そうか。 もう関わってこんといてな」

「そっちかって関わってこんといてや」

 二人はそれぞれの荷物を持って教室に戻った。

教室に戻ってふと我に返った時、どうしようも無くやってしまった感に襲われてしまった。

ついカッとなって言ってしまったが、どうしたらいいのかわからなくなっていた。

授業が始まる予鈴が鳴る。

クラスメイトが教室に戻って来て席に着く。

柊さんと鋼も席に着いていた。

鋼とは良く喋るがあれから柊さんとはあんまり話していない。

昼食の時間も四人で集まって食べることは無くなってしまった。

 

 あるとき鋼に連れられてマグドに行った。

「なぁ、九十九。 この間のやつなんだけどさ」

「この間のやつ?」

「優衣ちゃんと九十九が言い争ってたやつな」

「あ、あぁ……。 お前と柊さんには悪いと思ってる」

「それは別にいいんだ。 ただ、一つ気になってな」

「気になった?」

「あぁ、お前が優衣ちゃんに対して姉って言ってたのが気になってな」

「あー……。 前に、生き別れの姉がいるって話ししただろ?」

「うん」

「それが、優衣だったんだ」

「そうだったのか。 それだったら尚更、仲直りしなとダメだろ」

「そうなんだけどさ……。 どう接していいのかわからないんだ」

「うーん。 俺からは二人を会わせるくらいしか出来ないしなぁ……」

「そうだよな。 悪い、ちょっとトイレ行って来るわ」

「はいよ」

 トイレに逃げ込む様に来てしまったけど、どうしたらいいんだ。

今までこんな喧嘩したこと無かったし、優衣には結構酷いこと言ったし。

話しかけづらい。

ずっとこのままなんて嫌だ。

そう思うのに行動出来ない。

優衣はどう思ってるのかな。

気にはなるけど、俺には聞きにいく勇気が出せないでいた。

トイレから戻ると、優衣と柊さんの声が聞こえて来た。

なんで居るんだ?

まさか、鋼が呼んだのか?

それでも、俺になんにも言わずに呼ぶなんてなに考えてるんだ?


 三人の話し声が聞こえてくるのに俺は耳を傾けた。

「急にマグドに来てなんてなんのようなの?」

「ちょっと話したいことがあるの」

「そうそう。 九十九の事で聞きたいことがある」

「九十九のことなんて知らないわよ」

「聞いたよ。 九十九の姉なんだってね」

「え、誰から……」

「九十九から」

「そう……」

「それで、俺たちは九十九と仲直りして欲しいわけよ」

「また、四人で楽しく過ごしたいです」

「でも、私九十九にあんな酷いこと言っちゃって」

「話しかけようとしても話しかける勇気がない?」

「そう。 あんなこと言った手前、中々話しかけれないの」

「九十九も同じ事言ってたぞ」

「え?」

「あいつだって気にしてるんだ。 優衣ちゃんと仲直りしたい。 だけど、会いに行く勇気がない」

「私あんなに酷いこと言ったのに……」

「そこはお互い様だと思うよ俺は」

「そうなのかな。 じゃあ、明日勇気出して言って見るね。 私、お姉ちゃんだもん。 しっかりしないとね」

「頑張って」

「頑張ってください」

「それじゃ、私帰るわ。 話し聞いてくれてありがとね」

 優衣が帰ろうと食べていたものを纏め、トレーを持ちあげる。


今がチャンスじゃ無いのか?

今行かなくてどうする。

自分の中で、気持ちが葛藤する。

今を逃したら、もう二度と話しかけれない。

そんな気がする。

 俺は勇気を出して優衣に声をかけた。

「優衣!」

「え、九十九?!」

「ごめん、優衣。 俺が悪かった」

「え? え? いつから居たの?」

「多分最初から聞いてた」

「そう……。 私こそ、ごめんね」

「もとはと言えば俺が約束を忘れていたから――」

「それは凄く悲しかったよ。 でも、私だって買い物すっぽかしたしね。 だから、ごめんね」

 この後、お互いが謝り続けることの繰り返しになっていた。

中を取り持ってくれた鋼と柊さんには感謝しかない。

こんな形ではあったが二人には伝えて正解だった様な気がする。

今日は優衣と一緒に晩ご飯を食べた。

二人でご飯を作り、テーブルに並べる。

今日のご飯は一段と豪華だ。

久々に楽しくご飯を食べた気がする。

俺と優衣の距離感が少し縮まった様な気がしている。

これからも楽しく過ごして行きたい。

そして、いつか一緒に暮らしたい。

俺はそう思っていた。

はい、恋夢です!

今回は、お互いの距離感が上手くつかめてない二人の喧嘩です。お互いが二人でいることを大切に思っているが為に、忘れられたりすっぽかされたりしたらこうなってしまうんじゃ無いかなって言う勝手な妄想です。

それではまた次の作品でお会いしましょー!


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