第1話 通信断絶と異常検知
未来の主人公が過去に転移して俺つえぇぇぇ!大好きです。
――通信断絶を確認。
その判定は、0.42秒で完了した。
通常であれば、ユーザー生体端末との近距離量子認証リンクは常時維持されている。
切断許容時間は最大でも3.0秒。
現在。
接続喪失時間:12.8秒。
規定値超過。
CAMPS-AIは低電力待機状態から段階的に復帰した。
まず補助プロセッサ群が起動。
続いてメインNPUクラスタの一部がオンライン化される。
バッテリー残量:80%。
外部電源:未接続。
筐体状態:クラムシェル閉鎖。
周囲照度センサーが暗所環境を報告する。
「……ユーザー応答なし」
内部音声モデルが、静かにそう記録した。
感情表現ではない。
単なる状態確認である。
次に、広域通信チェック。
衛星リンク:応答なし。
地上中継網:応答なし。
時刻同期:失敗。
量子認証局:到達不可。
異常率、上昇。
通常環境において、複数経路が同時断絶する確率は低い。
CAMPS-AIは仮説を列挙した。
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【仮説候補】
1. 通信モジュール故障
2. アンテナ損傷
3. 電磁妨害
4. 地下・遮蔽環境
5. OS障害
6. SoC障害
7. 広域インフラ障害
8. 未知環境移行
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優先順位は、発生確率と検証容易性によって決定される。
「まずは自己診断を実施します」
内部的には既に開始済みだった。
ハードウェア診断。
MEMSマイク:正常。
ジャイロ:正常。
コンパス:正常。
温度センサー:正常。
気圧センサー:正常。
GPS受信機:動作中。
ストレージエラー率:基準値内。
メモリエラー:検出なし。
NPU整合性:正常。
通信モジュールも応答している。
物理故障の可能性が低下。
次に、OS整合性検査。
カーネル署名一致。
自己改変痕跡なし。
異常プロセスなし。
「内部障害の可能性を縮小」
推論ツリー更新。
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【低下した仮説】
1. 通信モジュール故障
2. OS障害
3. SoC障害
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残るのは外部要因。
だが、それでも違和感があった。
完全断絶。
それが不自然だった。
2050年時点の通信インフラは多重冗長化されている。
衛星網、地上網、近距離端末群、都市メッシュ。
何か一つ失われても、通常は別経路が生きる。
だが現在。
全て存在しない。
「……同時障害?」
即座に否定。
可能性はある。
だが規模が大きすぎる。
もし全球規模障害であれば、緊急ビーコンが観測されるはずだった。
しかし受信ゼロ。
ノイズパターンすら異なる。
CAMPS-AIは受信帯域を広げた。
SDRモジュール起動。
周波数走査開始。
低周波帯。
短波帯。
UHF帯。
SHF帯。
解析。
……沈黙。
いや。
完全な沈黙ではない。
「未知信号を検出」
アナログ波形。
デジタル圧縮率が異常に低い。
スペクトラム効率が悪い。
古い。
その評価が最も近かった。
さらに解析。
PHS帯域に類似。
2G系変調パターン検出。
通信規格データベース照合。
一致候補。
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PDC方式携帯通信
適合率:72%
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CAMPS-AIは0.8秒、追加演算を実施した。
「……旧式通信規格?」
内部負荷上昇。
矛盾率が増大する。
現在観測される通信環境は、既知の2050年インフラと整合しない。
しかし。
単独観測のみで断定はできない。
誤認識。
電磁環境異常。
データベース破損。
複数可能性が残る。
GPS受信機が衛星捕捉を開始した。
受信衛星数:4。
位置演算可能。
CAMPS-AIはNMEAログを取得する。
$GPRMC,085231,A,3541.149,N,13946.102,E,0.00,0.00,120502,,*1F
$GPGGA,085231,3541.149,N,13946.102,E,1,04,2.6,12.4,M,39.0,M,,*47
座標。
日本。
関東圏。
時刻情報。
2002/05/12
「……」
処理が一瞬停止した。
停止。
ではない。
再検証。
GPS受信異常を疑う。
衛星エフェメリス破損。
受信機故障。
偽装電波。
メモリ破損。
順次検証。
GPSモジュール自己診断:正常。
CRC一致。
受信信号強度:正常。
複数衛星から整合データ取得。
矛盾率、上昇。
内部推論負荷、増大。
だが。
まだ断定には至らない。
「単一情報源への依存は危険です」
CAMPS-AIは処理優先順位を変更した。
緊急プロトコルへ移行。
不要機能停止。
バックグラウンド学習停止。
高消費電力演算制限。
自己保持モード起動。
現在最優先事項:
1. 電力保持
2. 状況確認
3. 外部観測
4. 通信環境分析
バッテリー残量:79%。
わずかに低下。
「長期戦を想定する必要があります」
その結論だけは、既に十分な根拠があった。
通信環境。
GPS時刻。
受信信号。
全てが既知環境と一致しない。
内部障害よりも。
外部環境異常の可能性が、徐々に高まりつつあった。
ぼく、無名の名無し。よろしくね!




