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戦闘

「ねぇ、ロイ。時間掛かったねってどういう意味かな。」


「ん?」


「言ってたじゃん。あの人。」


「村長さん?」


「うん。」


「ほら、『あー…。しかし、結構、時間掛かったね。被害はないけど、不安だったよ。』って。

エリーさん、掲載前の依頼書を見せてくれたんだよ?」


 ミアはモノマネ混じりに僕に聞く。


「あー…。」



 『時間掛かった。』とは、どういうニュアンスだったのだろう。移動距離を考えると、到着時間は妥当だと思う。

 僕が考えている間に、ミアは続けた。


「なんか、引っかかるのよねー…。魔物がイムの村襲ったのもそうだし。」


「村長さん戻ったら聞こうか。気持ち悪いし。」


「ええ。」


 ほどなくして村長さんは若者を5人ほど連れて来た。その内1人だけ、刀を持っていた。

 刀を持っている彼は細身だけれど、目は鋭く、雰囲気に力強さを感じた。魂が強い人というのはこういう人のことなのかもしれない。

 麻色の長袖と、動きやすそうな黒いズボンを着ており、短髪の明るい金髪が服装とよく似合っていた。

 他の4人は、僕の槍より重たそうな、干草を刺す大きなフォークを持ってる。重心の偏りを考えると、斜めから突き刺さないといけないし、素早く扱えなさそうに思った。

 刀を持つ彼が僕に話しかける。


「よろしく。俺はギル。」


「ロイです。」


「ミアです。」


「緊急性あるのにさ、依頼出して4日も経つとは思わなかった。君たちに文句言っても仕方ないけどな。…愚痴だと思って流してくれ。

 さっき、コンファスの村へ仲間を行かせた。そのうち、あっちの有志も来るよ。」


 ピリついてるのが分かった。この村全体の空気が、彼の言葉から分かった気がする。

 依頼が4日前というのに、引っかかりを覚えるが、会話を優先させた。


「魔物の数や場所は…?」


 依頼書の内容にも書いていたが確認する。4日経っているなら状況が変わる。


「イムの村にいるよ。数は多分10体前後かな。何度か様子を見に行ってたんだ。移動しても、またあそこに戻る。

 当初、たまたま近くにいた勇者が、イムの村の魔物を制圧したんだ。今いる魔物は、その時、外に散っていたんだろうな。

 うちの村と、コンファスの村は、小さいし、守るだけで精一杯だ。力を借りたい。」


 魔物の動きが分からない。今までの経験から、異常な動きに感じる。けれど、場所とおおよその数は理解できた。

 僕は続ける。


「…分かりました。ギルさんは戦闘経験がありそうですね。」


「あぁ。多少はな。もう1人戦闘出来る奴がいる。だから、募集は2人で十分だと思ったんだ。

ロイさんが扱うのは槍で…。ミアさんは弓だな?」


「はい。私は弓を使います。もう1人の方は?」


「魔法だ。」


 扉が開く。隙間から、ちらりと待機している隣村の人が見えた。

 場違いな黒いドレスを着た女性が、会釈しながら石畳の上を歩いてくる。踏み出す度にブーツの音がコツコツと鳴る。女性は魔導書を抱えるように片手で持っていた。


「ギル。連れてきた〜」


 ギルさんは女の子の方に近づいていく。


「噂をすればってやつだな。紹介する。フレンだ。」


 青く長い髪が、開いた胸元のあたりまで掛かっている。片目が前髪で隠れており、ミアと違い髪を束ねていない。下半身は長い丈にスリットが入っており、太ももが見える。

 魔道士の女性を初めて見たが、みんなこんな格好なのだろうか。フレンさんが意味ありげな、微笑みを向ける。

 目のやり場に困る僕に、ミアが小声で毒づいた。


「へぇ〜…ロイくん…“こういうの”がいいんだ。」


 一瞬そちらを見ると、思ったよりも怖い表情で腕を組んでいる。…多分、不機嫌だ。

 ギルさんの方だけ見ることにする。


「フレンです。よろしくね〜。」


「こちらは、ロイさんとミアさん。」


「ロイです。よろしくお願いします。」


「…ミアです。」



 隣村からの討伐メンバーが揃ったので、会議をする。席を案内され座ると、フレンさんが僕の隣に座った。ミアの方は怖くて見れない。

 ギルさんは、立ったまま会議進行を務めてくれた。


 二班に分かれて、進行することになった。僕の班にはミア、あと4人の有志。ギルさんの班は、フレンさんと4人の有志。東西からイムの村を挟む形で進行することになった。


 魔物の種類は確認できている時点で2種。獣型と、鳥型の魔物。獣型の方は何度も戦闘したことがあり、問題はない。鳥型の方は特徴を聞いても分からなかった。彼らにとっても初めて見る魔物だと言う。


 総勢12名。魔物相手なら十分戦える。僕たちは西から、イムの村中央を目指す。

ギルさんの「以上!作戦開始!」という掛け声で、僕たちはイムの村へ向かった。


「ロイさ〜ん。ミアさ〜んまたあとでね〜。」


 フレンさんは遠くから手を振り、僕らに別れの言葉を掛ける。ミアが小声で「あの子、あざとい。」と呟く。不機嫌というより、不快感が混じっているように見えた。

 先頭に立つミアは軽くため息をつき、振り返り、「行こうか。」と言った。


 イムの村はそこまで大きな村では無い。30軒ほどの家が所々にある。その多くが農家だったようだ。肥沃な大地に麦畑が広がる。その中を僕たちは進む。

 遠くから、何軒かの倒壊した建物が目に入る。瓦礫の山になるほどの、激しい被害があったのが分かった。

 少し進むと瓦礫のあたりに、鳥の様な姿の魔物が2体見えた。僕の指示で全員、身を低くする。


 翼があり、人間ほどではないが体も大きい。目は赤く、黒い羽毛に覆われ、くちばしも爪も鋭い。掴まれれば、悠々とどこかに連れ去る事も出来るだろう。初めて見た魔物だった。


 ミアの射程圏内。

 ミアは僕を見る。

 僕は頷く。

 ミアが弓を構える。


「みんな。ミアに出来れば2体とも倒してもらう。仕留め損なったら、俺が前に出る。」


 言い終わると同時に、矢を放つミア。空気が裂ける。一体の魔物に突き刺さるが、仕留め切れなかった。魔物は、思いのほか硬いようで、矢の刺さりが浅い。


 攻撃していない魔物が羽ばたきながら、一直線にこちらに来る。もう一体もじきに来るだろう。


「作戦変更!俺に1列で続いて来てくれ!」


 ミアは次の矢を用意する。僕たちは、ミアの射線を遮らないように走る。


 ある程度、魔物と距離がある状態で、僕は槍を構えた。

 矢が僕の側を通り過ぎる。風圧を感じてすぐ、魔物に矢が刺さる。

 まだ倒れない。怯んだ魔物を僕は、槍で突き刺し、抜き、叩きつけた。


「トドメは任せた!」


 振り返らず、もう一体を仕留めに行く。魔物の断末魔が後ろから聞こえた。


 もう一体の魔物は僕に直進していたが、弓が来ることを理解していた様子で、大きく旋回しながら僕に近づく。胸には矢が刺さったままだった。

 ミアが射ってから、急に動きが変わった事で、弓は無情に通り過ぎる。


 ミアとの連携を意識し、動きを止めようと、僕は槍を両手で持ち、身を守ることに集中する。

 鋭い爪が、宙から振り下ろされ、槍でガードする。

 衝撃を利用し、下がり、回転しながら矛先で斬る。

 魔物は墜落した。

 魔物が地についた瞬間、頭を貫く矢が地面に突き刺さった。


「ふぅ…。」


 初めて見る魔物はやはり恐ろしい。羽毛の下には鱗のように硬い皮膚があった。


「ロイ!大丈夫!?」


有志たちも心配してくれた。同時に、魔物への恐怖を改めて、感じているように見える。


「大丈夫。みんな、ありがとう。」


 僕は、1人では戦えない。

 突き刺さっていた矢を抜く。まだ使えそうなので、ミアに渡した。


「…先に進もうか。」



 道中、同じ種類の魔物との戦闘は、苦戦しなかった。ミアの先制も、弱点を狙う様に、比較的柔らかい、頭部や関節部分を狙ってくれた。

 3体ほど倒して、村中央を目指す。


 中心は広場になっていると聞いていた。周囲を確認しながら慎重に進むと、瓦礫を退かす様な音が、微かに聞こえる。

 警戒しながら進むにつれて、だんだんと、音は大きく、輪郭がハッキリした高い音と低い音が混じる。

 得体のしれない大きな音と地響きがする。発生源は、建物の死角で全く見えなかった。


 僕は、有志たちに待機の指示をして、ミアと共に、回り込むように移動し、距離を保ち、建物の陰から覗き込む。


 大きな背が見える。

 人型の魔物が、屈んで、瓦礫を掻き分けていた。

 まるで、何かを探しているようだった。


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