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28.舞踏会の前座

 




「白川のお嬢さん、ご機嫌よう」




「へっ?……あ!五十嵐公爵!ご機嫌よう」




 王宮に着くと私達一条家一行は、公爵家が集まる控室に通された。舞踏会が始まるまでは、同じ格の貴族同士の社交の場が設けられている。今回は国内の貴族のみが招待されているから、公爵家控室は王国の五大公爵家が揃っている。


 お姉ちゃんいつもこんな緊張感でパキパキ動いていたんだーー今回、私が仰せつかった大役は、一条公爵のパートナー。ダンスもそうだけど、こういう場でも大雅くんの隣で挨拶をしていかなきゃいけない。名だたる公爵を前にお話を聞いたり、しっかりとした挨拶とマナー……めっちゃ大変なんだけど!!




 背筋を伸ばすのに少し疲れた頃、私に声をかけてきたのは、修行先だった五十嵐公爵の当主、五十嵐理人様だった。




「莉子ちゃまは??」




 五十嵐公爵の後ろを見ると、いつもの執事さんと護衛さんの数人だ。私は、修行中にお世話係を務めていた公爵のひとり娘の名前を出した。




「莉子はまだ幼いし、少し遠いからお留守番だよ。柚子がいるかもしれないから、綴も連れて来ようと思ったんだけど、なかなか難しくてね」




「そうなんだ!2人ともお元気??」




「もちろん。また手紙を書いてくれたら、喜ぶと思うからよろしく頼むよ。ーー今日はファーストダンスまで気が張る役目だね、頑張って」




 優しく微笑む公爵を見送ると、横から光くんの声がする。




「ちょっ、あの、柚子ちゃん。知り合いなん?」




「うん!柚子の修行先の五十嵐家のご当主様だよ~」




「……あの、あんなにフランクでええの?」




「ダメかなぁ?……五十嵐公爵以外にはちゃんとしてたよ!ふふんっ」




「そうやけど……」




 他の三家への挨拶は、お姉ちゃんを見習って丁寧にしたつもりだ。挨拶回りが終わると、緊張が解れて舞踏会が楽しみになってきた。




「今日久しぶりにダンス踊るんだ~!ファーストダンスが終わったら、柚子のお役目は終わりだから、その後はいっぱい美味しい物食べよう!」




「さすが、柚子ちゃんやなぁ」




 ちょっと困ったような顔で、でも笑って私を見る光くん。いつもなら言わないし、これを言っていいのか分からないけどーー彼の胸元に覗く、自分のドレスと同じ色に惑わされてしまったのかもしれない。




「今日、一緒に踊れたらいいのにーー」




 伝えた一言は彼の耳に届いただろう。その唇が開いた瞬間だった。




「おい!時間だ、行くぞ!」




 やっぱり修斗くんって、こういう時に大声出すんだよなぁ……。


 彼の返事も聞けぬまま、私は舞踏会に挑むことになったのだった。





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