29―4 晶人の日記Ⅹ 大人として知っておくべき自己肯定感と他者肯定感
ソフィアが今夜も、俺が過去に書いた日記が読みたいと申し出てきたため、ソフィアに日記を読ませた。ソフィアに俺が書いた日記を毎晩、寝る前に読ませるのは習慣になってきたようだ。ソフィアは賢い。何かを学ぶために読みたいのだろう。俺の日記がソフィアのためになるのなら読ませてあげたいと思う。
「ソフィア、じゃあ、今夜はここのページを読んでね。」
「はい、分かりました。」
そう言って、ソフィアは俺が書いた日記を読み始めた。
― 大人として知っておくべき自己肯定感と他者肯定感 ―
今日は、県内の小・中・高等学校の校長先生を大講堂に集め、学校カウンセリングの講義をした。残り40分間のコマを使って、「大人として知っておくべき自己肯定感と他者肯定感」というテーマで講演をすることにした。
自分の足跡を残すために、今日の講演の内容を記録したテープを聴きながら、日記に載せることにした。
今日の講演会のテーマは、「大人として知っておくべき自己肯定感と他者肯定感」となっていますね。校長先生方は、自己肯定感って何だと思いますか?
それでは、大学院で心理学を学んだ知見を活かして、「大人として知っておくべき自己肯定感と他者肯定感」についてお話ししましょう。
自己肯定感に関する心理学の学術論文は山ほどあります。それぞれの学術論文によって多少の差異があります。幸せとは、当たり前の話ですが、自分を肯定するわけですから、自分を認める感情のことをいいます。決して否定的な感情ではありません。つまり、肯定的な感情とは、自分の存在そのものや自分の物の味方や考え方などが肯定的であるとする感情といえます。
自己肯定感は、学術的には次のように定義付けられています。
「自己肯定感とは、『ありのままの自分を肯定する、好意的に受け止めることができる感覚』のことであるとともに、決して他人と比較するのではなく、そのままの自分を認め、尊重し、自己価値を感じることができる心の状態のことを指します。 自己肯定感とはとても重要な感覚であり、様々な事象の基盤になっています。例えば、人間関係の在り方やパートナーシップ、仕事の在り方、自己実現、幸福感に大きく影響すると言われています。」
私(晶人のこと)は、もっと校長先生方に分かりやすくするために敢えて簡潔に表現します。自己肯定感と他者肯定感を次のように捉えてください。
自己肯定感➡︎自分を肯定的に評価する感覚
他者肯定感➡︎他者を肯定的に評価する感覚
ちなみに、「他者肯定感」とは私の造語です。大学院で心理学や精神医学を学んだことのある人は違和感を覚えるでしょうが、私がこの造語をつくった理由は、公的研究機関で、私が講師をする際に、学校長や教頭、一般教師を対象にした講座の中でどうしてもこの言葉を使う必要性を感じたために敢えて用いたのです。
人はひとりで生きてはいけません。
人は、この世に生を授かってから、自分以外の他者との相互作用や関係性の中で育っていきます。
「自分を肯定的に評価する感覚」は、他者との相互作用の中で、他者から、「褒められたり、認められたり、肯定的に理解されたりする経験の積み重ね」によって、形成されるものです。
「自分は、こんな自分で良いのだ。」という感覚は、初めからその人の内側で形成されたものではなく、その人の内側から自然発生的に湧き出ずる承認欲求が、他者からの賞賛や承認を得て、循環的に形成されるものです。
私は、公的な研究機関でカウンセリングと学術研究をしながら、大勢の教師を対象にした研修会の講師として働いていたことがあります。
私は、誤解を恐れず敢えて、学校長や教頭、一般教師を対象にした講座の中で、頻繁に用いたのが「他者肯定感」です。教師自身が、自分以外の他者、つまり学校にいる子どもたちを積極的に肯定していく感覚の重要性を説いていったのです。
「こんなところが素晴らしいなぁ。」
「よく頑張っているなぁ。」
「誰に対しても親切だなぁ。」
「元気よく挨拶できるなぁ。」
「最後まで仕事を丁寧にするなぁ。」
「あなたの考え方はここがいいなぁ。」
「よくそんなことに気付いたねぇ。」
「筋道立てて説明する力があるなぁ。」などなど
もちろん、野放図になんでもかんでも肯定するわけではありません。
私はこのような流れを踏まえた上で子どもたちを肯定することが肝要なのです。
①教師自身が子供をよく観察し、その子のよさに気付く感性を磨く。
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②その子なりのよさに気付く。
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③その子に、そのよさを言葉でちゃんと伝え、褒める。また、その意義も伝える。
*なぜ行為のよさが素晴らしいのか、その意味を噛み砕いて分かりやすい言葉で説明する。
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④その子のよさを積極的に見届け、その都度褒める。
*単発的に終わっては意味がありません。
見届けを行い、その都度、繰り返して褒めます。
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⑤その子なりの良さが発揮され、それが循環しているか見届ける。
自己肯定感というものは、自分を肯定的に評価する感覚です。
その自己肯定感は、自分のよさを他者から認められ、褒められながら育っていくものなのです。
植物の種が発芽し、育っていくためには、空気と水と日光が必要です。
その空気と水と日光が、「他者肯定感」に基づく、褒められ体験、認められ体験、肯定的に理解される体験だと思います。
このことは、教師と子供だけの話ではありません。上司と部下や自分と友人、夫婦関係、友人関係などにも当てはまることなのです。
自分を認め、褒めてくれる人にこそ、人は心を開きます。そして、その人もまた、自己肯定感が高まり、今度は自分を認め、褒めてくれた人の好いところを探し、認めようとします。つまり、善のスパイラルの連鎖が起こるわけです。このことが積極的に日頃の生活の中で取り組んでいけるといいですね。
最後に、これは教育の場や職場、夫婦関係、友人関係などの中だけで使えばよいというものではありません。FacebookやX、アメブロなどのブログなどのSNSの中でこのような関係性を育んでいくことが肝要なのです。
かくいう私自身もFacebookやXなどで自分の書いた文章に「いいね」をしてもらうことで、自己肯定感が高まり、創作意欲が高まります。皆さんもきっとそうだと思いますよ。だから、SNSも日常生活の中で適切に活用して欲しいと思うのです。
「晶人さん、自己肯定感と他者肯定感のところは、分かりやすくて自分のためになりました。晶人さんが以前、離してくれた分けられない2つのコインと同じ発想ですね。表と裏があって1枚のコイン。100円玉だったら、桜の模様が表で、100の数値が裏。2つで1枚の100円玉として存在しているわけですものね。自己肯定感と晶人さんが創った造語の他者肯定感もそんな関係なんですね。」
「晶人さん、ところで、FacebookやX、ブログって何ですか?」
「ああ、ソフィア、今度、日本に実家に里帰りした時に教えるよ。この惑星じゃ使えないんだ。」
「はい。分かりました。」




