第7話 新しい村を作ろう!
『ゴーッ!!』
ゴーレムのゴームはそう叫ぶと、握った世界樹の鍬(大)を振り下ろす。
人間よりずっと長時間動くことができるゴーレムは、こういう力仕事が大の得意だ。
ゴーレム用に作った世界樹の鍬は大きいので、その分神力も大きく含まれていて、浄化能力も高い。
おかげで浄化作業はスムーズに進んでいく。
「ありがとうゴーム。ここの区画はよろしくね」
『ゴウッ』
ゴームは任せろとばかりにそう言うと、鍬を振り下ろしドンドン浄化していく。
「これなら本当に早く終わりそうだね」
ゴームの他にも20体ほどゴーレムはいて、浄化作業に精を出している。
彼らはここで作ったゴーレムだ。次元収納に素材を入れておけば、現地でゴーレムを作ることが可能だ。そうすることで移動コストを安く済ませることができる。
ゴーレムは生物判定になって次元収納で運べないからね。ゴームだけはゴーレムボールで楽に持ち運べるけど。
「僕も頑張らないと。自動製作!」
素材を使って家を何軒も建てていく。
その次は井戸。新しく作った井戸で水を汲んでみたけど、飲用に問題なさそうだった。
家と水さえあれば、ひとまず生活はできる。第一段階はクリアだ。
次は……と思っていると、突然「わふっ!」と鳴き声が聞こえてくる。
「ん?」
見てみるとそこには「グルルル……」と唸る神狼のシルクの姿があった。
牙を剥き威嚇するその視線の先には、瘴気に侵された狼型モンスターの姿があった。
「グルル……ガウッ!」
シルクは勢いよく駆け出し、その狼に襲いかかる。
狼は反撃しようと口を開いて噛みつこうとするけど、シルクはそれをステップで華麗にかわすと、相手の喉を噛みちぎり一瞬で倒してしまう。
『グ……ウ……』
喉を食いちぎられたモンスターは、そう呻くとその場でどろっと崩れ、消え去る。
凄い、こんな一瞬で倒しちゃうなんて。
「ありがとうシルク! 助かったよ!」
「わふっ!」
シルクは嬉しそうに僕に飛びかかってきて、僕の顔をペロぺロと舐める。
ルカ村に来てから大きく成長したシルクだけど、まだまだ甘えん坊だ。まあ僕が弟のように可愛がっているからかもしれないけどね。
「テオドルフの言う通り、見事な『狩り』だったぞシルク。姉上もきっと喜んでいるだろう」
そう言ったのは同じく神狼のルーナさんだった。
いつもの人型じゃなくて、今は狼の姿になっている。
ルーナさんの言葉を聞いたシルクは嬉しそうに「わふっ!」と言う。ルーナさんのお姉さんは、シルクのお母さんだ。
もう亡くなっちゃったので会えないけど、きっとシルクが強く育ってるのを嬉しく思ってくれていると思う。
「この調子で監視よろしくね。頼りにしてるよ」
「わふっ!」
頼もしく吠えたシルクは、他の兄弟たちと一緒に周囲の警戒を再開する。
シルクたち子ども神狼には、新拠点の警備をお願いしている。鼻が効き、足が早くて戦闘力も高い神狼は警備に必要な能力を全て持っている。
ルカ村でも神狼たちは村の警備を手伝ってくれているんだ。
伝説の生き物である神狼に警備をお願いするなんて最初は罰当たりかなと思ったけど、神狼たちは自分の仕事が欲しかったみたいで、喜んで手伝ってくれている。
僕たちの村では種族に上下はなく、みんな自分の得意なことをやって役に立とうとしてくれている。本当に心強くて頼りになる。
「ところでテオドルフ、我はやることはないのか? シルクたちばかり働いているが」
「ルーナさんはいてくれるだけでモンスターが寄りづらくなるので、なにもしなくていいですよ。強敵が来たら撃退をお願いします」
「心得た。なにもしないのも居心地が悪いから散歩してモンスターたちをビビらせておこう」
「はい。お願いします」
ルーナさんは狼の姿のまま散歩に行く。
あの姿で歩き回っていたらモンスターたちも滅多に近寄ってこないだろうね。
今の内に開拓を進めるぞ!
◇ ◇ ◇
新しい村の予定地に着いた日の夕方。
まだ10時間程度しか作業をしてないけど、みんなの尽力もあって村の開拓はかなり進んでいた。
「テオ様、報告です。村の周辺の浄化はほぼ完了し、居住可能になりました。畑も五十人程度の食料を賄える規模で完成し、すでに種も植え終えております」
「報告ありがとうレイラ。今日はこれくらいで大丈夫そうだね」
「はい、十分すぎる成果かと。これも全てテオ様の的確な指示の賜物です」
レイラは真剣な表情で僕を褒める。
みんなの頑張りのおかげが9割だと思うんだけど……まあいっか。
「あんまり進まなかったらルカ村に一度戻ろうと思ったけど、これだけ開拓が進んだ今ならここに泊まっても大丈夫そうだね」
「はい。安全は十分に確保されています。問題ないかと思います」
今日はこのままここに泊まって、明日最終チェックをして問題なさそうだったら、ここはみんなに任せて一度ルカ村に戻るつもりだ。
本当はもう少し残りたいけど、僕が全部やってしまうのは良くないと周りの人にアドバイスをもらった。
僕のスキル「自動製作」は便利すぎる能力だ。
これに頼りすぎるようになってしまうと、誰も仕事をしなくなってしまうし、技能も育たないというわけだ。
一つの村の規模だったら僕が全部やれるけど、今後拠点が増えたらみんなが自分で物を作ったり直したりしないといけない。その力を養うためにも、僕は力を使いすぎない方がいいみたいだ。
それは正しいと思うけど、なかなか塩梅が難しい。どこまで手伝ってどこまで任せるか、それをこれから学ばなくちゃいけない。責任者は大変だね。
「それじゃあ寝る前に、あれだけ終わらせておこうか」
「はい。ではエリシア村の中央部に参りましょう」
僕とレイラは一緒にこの村の中央部に行く。
この新しい村の名前は「エリシア村」に決まった。
ルーナさんいわく、昔はここに「エリュシオン」という名の街があったらしい。そこから名前を拝借したということだ。
名前に負けない、かっこいい街を作りたいな。
「よし、じゃあここに植えよっか」
村の中心部にやって来た僕は、ポケットの中からあるものを取り出す。
片手に収まるほどの大きさのそれは、世界樹の種だ。
イルミアさんに生み出してもらった大切な種。その一つをエリシア村に植える。
「大きく育ちますように……と」
僕は優しくそれを埋め、水をかける。
そして栄養満点の竜の骨粉をふりかけ、最後に一回手を合わせて大きく育つよう祈る。
「……よし。じゃあ今日はもう休もっか」
「はい。お食事を用意しておりますので、召し上がってください」
「やった! もうお腹ぺこぺこだよ」
こうして一日目の開拓を終えた僕は、食事をして新しい村で一晩を明かすのだった。




