第17話 80年ぶりに再会しよう!
「ここがルカ村……まさか死の大地にこれほど見事な村ができているとは……」
ルカ村に着いたアナスタシアさんは、村の様子を見ながら驚いたように呟く。
この村はどんどん広くなっていて、住む人数も多くなっている。その規模はもはや村ではなく街と呼んでも差し支えないレベルだ。
村ができる前はこの土地は瘴気まみれで人が住めるような場所じゃなかったし、アナスタシアさんが驚くのも当然か。
「馬車の中で聞き及んでいましたが……本当にエルフと人間、他にもドワーフや魚人まで共に暮らしているのですね……まさか瘴気に侵されたこの地で、多種族が共存できているとは、驚きです」
「みんな助け合って仲良くしてくれてますよ。たまに意見が異なることもありますけど、しっかり話し合えばほとんどのことは解決します」
「素晴らしいですね。みなが穏やかに過ごせているのも、あなた様の人徳のおかげでしょう」
アナスタシアさんは僕をじっと見ながらそう言う。
僕への評価が高すぎてちょっと申し訳なくなる。帰りの馬車でアンナさんとエレナさんが僕のことを褒めちぎりながら紹介したから、評価が高くなりすぎたのかな?
そんなことを考えながら村の中を歩いていると、村に住むエルフの一人が僕たちに気がつき近づいてくる。
「お戻りになられたのですねテオドルフ様。我らの里の様子はどうでし……た……!?」
その人の視線がアナスタシアさんに向いた瞬間、表情が固まる。それに気づいたアナスタシアさんは、彼女に薄く微笑む。
「久しいですね。また会えて嬉しいですよ」
「う、そ……っ、アナスタシア、さま……!?」
「はい。ずいぶんと留守にしてしまいましたね。私がいない間、よくぞ生き残ってくれました」
「そんな……本当に……っ」
アナスタシアさんを見たその人は、その場で泣き崩れてしまう。
すると騒ぎを聞きつけたエルフの人たちが次々とやって来て、騒ぎになる。
エルフは長命種族。ここにいる人の多くは80歳以上だからアナスタシアさんと面識がある人が多いんだろうね。
「この魔力、本当にアナスタシア様だ……!」
「ブラックウィドウとの戦いで命を落とされたはずでは……?」
「まさかまたお会いできるとは! 感激です!」
みんな泣きながら80年ぶりの再会を喜ぶ。
なんだか見てるこっちまで泣きそうだ。
アナスタシアさんは駆け寄ってきた仲間の一人一人としっかり会話していく。
それをしばらく続けて、全員と再会を喜んだあたりで、一人のエルフがあることをアナスタシアさんに尋ねてきた。
「アナスタシア様、これからはどなたがエルフを導くのでしょうか? 今はアンナローゼ様が里長として指導者となっておりますが」
それを聞いたアンナさんはなにかに気づいたように口を手で押さえる。
そうだ。アンナさんの母親であるアナスタシアさんが戻ってきたなら、彼女が指導者になった方が自然だ。
いったいどうなるんだろうと思っていると、アナスタシアさんは一切表情を変えずにその問いに答える。
「無論、引き続きアンナローゼにやってもらいます。私は長らく里を離れた身。私がその座に就く資格はありません。確かにアンナローゼは指導者としてはまだ若いですが、ここまで皆を導いてくれたのです。その実力は疑いようがありません」
「お母さま……」
アンナさんは目にじんわり涙を浮かべる。
尊敬しているお母さんに認められて嬉しいんだろうね。
「今までと変わらず、指導役はアンナローゼに任せます。私は表には出ず、相談役として娘を支えます。なに、心配入りません。エレオノーラも強く育ってくれましたからね、姉妹でどんな危機も乗り越えてくれるでしょう。それに……」
アナスタシアさんは言いながら僕の方に視線を動かす。
「二人にはとても頼りになる、旦那様もいらっしゃしますからね。みなで三人を支え、エルフを更に繁栄させていきましょう」
アナスタシアさんがそう言うと、凄い拍手が巻き起こる。
中には感激して泣き出す人もいる。なんだか凄いことになってしまった。
「アンナとエレナを。そして我らエルフをよろしくお願いいたしますね、あなた様」
「は、はい……頑張ります」
物凄いものを任されちゃったけど大丈夫かな?
まあアナスタシアさんという力強い味方もできたし、なんとかなるよね。僕はそう楽観的に頭を切り替え、新しい仲間を受け入れるのだった。




