第16話 新しい仲間
「うう……んん……」
僕は体に残る鈍い痛みを感じながら、目を覚ます。
いつのまにか僕はベッドの上で横になっていた。ここは……そうだ、エルフの里にある家だ。少し前に気を失った時に運ばれたベッドと同じだ。
ええと……だんだん思い出してきたぞ。
そうだ。僕はブラックウィドウを倒して、気を失ったんだ。
「ここにいるってことは、無事洞窟からも脱出できたんだね。良かった」
ほっと胸をなでおろしていると、ガチャっと音がして、扉が開く。
誰が入って来たんだろうとそっちを向くと、そこには八十年間封印されていた、エルフのアナスタシアさんがいた。
「…………」
アナスタシアさんは切れ長の綺麗な目で僕のことをじっと見つめてくる。
他人を寄せ付けないほど整った顔。アンナさんたちは少し歳上のお姉さんって感じだけど、アナスタシアさんは大人の女性って感じだ。
アナスタシアさんはとてもクールな人で、その顔からは感情が上手く読み取れない。
一緒にブラックウィドウと戦った仲だから嫌われてはいないと思うけど……どう接したらいいんだろう?
「えっと……」
「お目覚めになりましたか、テオドルフ様」
アナスタシアさんはそう言うと、僕の前に膝をつき、両手の指先を床に置く。
僕の元の世界で言う三つ指をついた姿勢。三つ指は相手に最大限の敬意を示す意味があるけど、こっちの世界でも同じような意味なのかな?
「まずは感謝を。助けていただきありがとうございます。更にあの憎きブラックウィドウまで討伐していただき、感謝いたします。本当に……ありがとうございます」
「そんな、当然のことをしただけですよ! だから顔をあげてください!」
僕は土下座するように深々と頭を下げるアナスタシアさんにそう言う。
ここまでされるとなんだかむずむずする。
「娘たちに聞きました。あなた様は危機に陥っていた我らの里を救ってくださったのだと。更に瘴気に侵されたこの地を再生し、多くの者たちが手を取り合い過ごすことのできる国にしようとしているのだと聞きました。まさに英雄の器……私の娘たちは素晴らしいお方に出会うことができたのだと、感激いたしました」
「いや、えっと……それは本当に言い過ぎじゃあ……」
確かにやったことは間違ってないけど、過大評価じゃない?
この大地がみんなが笑って住めるとこにはしたいとは思ってるけど、僕は自分が英雄の器なんて思ってない。
「みんなが手伝ってくれているからうまくいってるだけで、僕はそんなたいした人間じゃないですよ」
「ふふ……謙虚なのですね。みながあなた様の力になりたがるのも納得です」
アナスタシアさんはすっと目を細め、僕のことをじっと見る。
こんな綺麗な人にそんな風に見られると、なんだかドキドキする。
「統治者としての素質に、大変愛くるしいお顔。更に女神様に愛され素晴らしい能力を賜っている……やはりあなた様は、この地を救う英雄と呼んで差し支えないでしょう。同胞を救われた大恩もあります。このアナスタシア、ぜひあなた様のお力にならせてください」
「アナスタシアさんが仲間になってくれるなら心強いです! これからよろしくお願いしますね」
僕の言葉にアナスタシアさんは「はい。こちらこそよろしくお願いいたします」と返す。
まだ彼女とは会って少ししか経ってないけど、ブラックウィドウとの戦いで彼女がとっても強くて頼りになる人だっていうのは分かってる。
仲間になってくれたら頼りになるに違いない。アンナさんとエレナさんもお母さんと過ごせるのは嬉しいだろうしね。
「じゃあ少ししたら僕たちの村に行きましょうか。いいところですので、アナスタシアさんもきっと気に入りますよ」
「かしこまりました。また仲間たちに会えるのが楽しみです」
こうして新しい仲間、アナスタシアさんを迎えた僕たちは、暗くなる前にルカ村に帰還するのだった。




