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♂≧♀   作者: basi
6/6

初? 登校

色々と突っ込みどころありますが、あまり気にしないでいただければ、と思います。


 ――――翌日。

「康、入るよ。準備できた?」

 言って扉を開けると上半身裸の康が立っていた。

「あ、彩音。ちょうど良かった。これどうやってつけるの?」

 康が手に持っていたのは――ブラジャー。そして、康の胸には――

「な!? こ、康。その、む、胸は?」

 康の胸には昨日までなかった山が二つ。私は夢でも見てるのだろうか。と、

「どうだい? いいだろう」

 何故かいつの間にか後ろに父さんが立っていた。

「これが昨日言っていたパットだよ」

 パット?

「パットって、ブラの間に入れるんじゃないの?」

「ふ、そんな誰が見てもわかるようなものをつけたのでは意味がない。実は理事の一人に医療機器メーカーで人工皮膚などを作っている者がいてね、特別に作ってもらったんだよ」

 そう言うと康の横に立ち、

「どうだい? この見た感じ。本物みたいだろ? さすが医療に使う人工皮膚だけあってよくできてる」

 胸をじろじろ見る父さんはただの変態にも見える

「さらに」

 父さんは康の背後に立ち――――

 むにゅ

「え?」

「この感触、まるで本物だ。康は見た目も女の子だばぁ」

 いきなり胸を揉み出した変態(父親だけど)を殴り倒した

 康は男だからか、それとも作り物だからかびっくりしただけで特に無反応。

 まったく、父さんはなんてうらやましいことを

「でさ」

「ああ、何?」

「ブラジャーの着け方ってどうやるの?」

 何もなかったかのように普通に聞いてきた。おいおい、康。

「あんた、嫌じゃなかったの?」

 昨日あんなに嫌そうだったのに。

「今まで普通の格好してても女の子に間違われてたしさ」

 間違われてたと言うか。康の場合、男に見られたことが一度もないような気がするけど。

「正直否定し続けるのも疲れたよ。だから今更外見が女の子になってもどうでもいいかなと。もういっそ女で通そうかなぁ、とか。この偽乳? これ着けた時にそう思ったから、もういいかって」

「ま、康がそう思ってるならいいわ」

 そう言った私の耳に康の小さな呟きが聞こえてきた

「……やけくそだけどね」

 そりゃそうだ。



「入りにくい」

 教室の中にはすでに結構な人数がいる。

「いくら割り切ってもやっぱり恥ずかしいなぁ」

「そこの君、どうしたんだい?」

 後ろから突然声を掛けられた。

「そんな入り口で覗くように。誰かに用があるのかい?」

 ん? この声は、

「修二君?」

 振り向いた先にはやっぱり修二君が立っていた。

「俺を知っている? まさか、君みたいな美女が俺に会いに来てくれるなんて」

 やたらと芝居がかった口調である。昨日の時もそうだったけど、修二君は女性を見ると口説きたくなるようだ。僕は男だけども。

「こちらから自己紹介をする必要はなさそうだ。よければお名前をお聞かせください」

 言いつつお辞儀をする様が妙に決まっている。まるで役者かどこぞの貴族のようだ。

 どうでもいいけど、何か昨日とキャラが違わないか?

 修二君は美形の部類なので見ていて嫌ではないし似合っているが、いつまでも間違っていられると困るので素直に名前を名乗る。

「康介、日羽康介」

「は?」

「昨日転入してきて、いきなり君に告白をされた日羽康介」

「……マジ?」

「マジもマジ、大マジよ。髪型は違うけどわかるでしょ」

「じゃぁ何か。俺は同じ奴に、しかも男に……二回も……」

 修二君はショックが大きかったのか足取りが怪しく、ふらついている。

「えと、大丈夫?」

 声をかけてみたけど気付かずにふらふらと教室に入っていく

 心配になってそのまま一緒に教室に入ってしまった。自分の格好を忘れて。

 

 とりあえず修二君が席に着いたので僕も自分の席に向かう。

 席について荷物を机にしまい顔を上げると前の席の子とばっちり目があってしまった。

「……」

「…………」

「おはよう」

「あ、う、うん。おはよう」

 目が合って何も言わないのもどうかと思い挨拶をしてみたけど。

「どうかした?」

 何か変。鳩が豆鉄砲と言う感じだ。

「あの」

 ガラ

 続けて聞こうと思ったところに伊藤先生が入ってきた。

「皆おはよう。HR始めるから席について」




 教室に入ると皆が一斉にこちらを見た。それまで皆が見ていたほうに目を向けると一人の女の子が座っていた。

(? あの席は確か日羽君の……あ、そうか)

 今朝、職員朝礼で話があった特別待遇、すっかり忘れていた。こうなりそうな気はしていたけど、日羽君が女性扱いを嫌っていたからどうかな、と思っていた。

「出席を取る前にお知らせがあります。日羽君のことですが彼は特待に選ばれました」

 教室中がざわつく。日羽君は落ち着かずに周りを見たり俯いたり、ホントの女の子みたい。

「皆は入学式の後のオリエンテーションで特待について聞いてると思うので説明はしません。ですが日羽君は昨日来たばかりでよくわからないと思いますから、皆で協力してあげてくださいね。日羽君?」

「は、はい」

「悪いんだけど前に来てまた簡単に挨拶してもらえる?」

「え? あ。わ、わかりました」

 日羽君が前に出てくる。もちろん皆の視線がその後を追う。

「それから写真部の、阿藤さん、桃山君?」

「え?」

「はい?」

「生徒会から日羽君の撮影許可がでました。そこであなたたち二人が指名されたの。やってくれるわね?」

「も、もちろん」

「是非とも」

 二人ともやる気満々ね。生徒会の公認カメラマンと言えば特待生には及ばないが、さまざまな見返りが付けば、部活内での立場もかわる。そうでなくてもアイドルの専属カメラマンができるのだ、断る生徒の方が少ない

 前に出てきて横に立つ日羽君を見る。

 ホントに昨日の日羽君と同一人物なのだろうか? 昨日の姿も十分男の子には見えなかったけど、言われてみれば男の子に見えなくもなかった。

 が、今は男の子と言われても絶対に信じられない。どこから見ても女の子にしか見えない。と言うか日羽康介と言う男の子ははじめから存在していなかったのではないかと思うくらいだ。

 日羽君がこちらの視線に気付いたように、

「なんですか?」

 と聞いてくる。首を傾げるしぐさといいちょっと困った表情といい、とても男の子とは思えない。

「あなた実は女の子なんじゃない?」

 言ってからしまったと思ったがもう遅い。ばっちりと日羽君に聞かれてしまった。

「やめてください」

 低めの声音で睨まれてしまった。

 そしてそんな日羽君にドキリとしてしまう。

 こらこら私、しっかり。


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