表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】聖女は3歳児でした  〜聖女誕生からレイナ成長記録〜  作者: ぶっくん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/9

第5話 聖女レイナ4歳編 笑い蘭と魔法の子守唄

レイナが4歳になった春、小さな王国に新しい風が吹き始めた。


それは花びらの香りと、子供の笑い声を運ぶ、優しい風だった。


王城の温室では、トーマスが額に汗を光らせながら、珍しい蘭の世話をしていた。


かつての農夫の手は、今では王立温室の責任者として、土を慈しむように扱っていた。


「パパ、これなあに?」


突然、金色の巻き毛が揺れ、レイナが温室に現れた。


彼女の後ろには、いつものように侍女が2人、息を切らして追いかけてきた。


「レイナ様、お昼寝の時間ですよ!」


「でも、お花が呼んでたんだもん」


トーマスは笑いながら、娘を抱き上げた。

「これはね、遠い南の国から来た『笑い蘭』って言うんだ。触ると、くすぐったい香りがするよ」


レイナは慎重に指を伸ばし、淡い紫色の花びらに触れた。


その瞬間、蘭は微かに震え、ほんのり甘くスパイシーな香りを放った。


そして驚くべきことに、温室中の花が一斉に咲き誇り、色とりどりの花びらが舞い上がった。


「わあ! お花たち、ダンスしてる!」


侍女たちは呆然とし、トーマスは目を丸くした。


「え? こんなこと、今まで一度も……」


実はトーマスも知らなかったのだ。


この蘭は子供の純粋な笑い声に反応して、周りの花を咲かせる力を持っていたのだ。


一方、王城の東棟では、エラが侍女たちに新しい刺繍の技法を教えていた。


彼女の指先から生まれる模様は、かつて田舎で培った素朴な美しさと、王城で学んだ優雅さが見事に調和していた。


「ママ!」


レイナが温室から駆け出し、エラのスカートにしがみついた。

彼女の小さな手には、色とりどりの花びらが握られていた。

頭の上には、トーマスが飾った小さな花の冠が、少し斜めになって乗っている。


「見て! パパがくれた!」


エラは娘を抱き上げ、花びらで彼女の髪をもっと飾った。

「きれいね。でもレイナ、お昼寝の時間よ」


「でも、レイナ、眠くないもん。ねえ、お話して!」


こうして、レイナを膝の上に座らせ、エラの「お昼寝拒否対策」が始まった。


彼女が語るのは、かつて田舎で聞いた昔話や、自分で作り出したおとぎ話だった。


今日の話は「踊るナスビと歌うトマト」という、野菜たちが夜中にパーティーを開くというもの。


「……そしてトマトが『私は真っ赤で恥ずかしいわ!』と言うと、ナスビが『でも僕は紫色でクールだぜ!』と返したの」


レイナはクスクス笑った。


不思議なことに、エラの話を聞いていると、レイナは必ず10分で眠りについた。


侍女の一人が小声で言った。

「エラ様の魔法の子守唄、今日も効きましたね」


エラは微笑みながら、眠る娘を見下ろした。

「魔法なんかじゃないわ。ただ……彼女が好きな話をしているだけ」


しかし、侍女たちは知っていた。


エラの物語には、本当に何か特別なものがあることを。


王城の誰もが、レイナをあんなに早く眠らせることはできなかった。


ある夕方、トーマスが温室の片付けを終えて東棟にやってくると、エラがレイナの寝室の前で待っていた。


「また、物語で寝かしつけたの?」

トーマスが尋ねた。


エラはうなずき、ドアの隙間から眠る娘を見つめた。

「彼女が生まれた日、私は誓ったの。この子には、魔法のような毎日をあげようって」


トーマスは妻の手を握った。

「君の物語が本当に魔法みたいなんだよ。私だって、聞いていたら眠くなってくるから」


「それはただの退屈な話ってことじゃない?」

エラはいたずらっぽく笑った。


「違うよ! だって昨日の『迷子の子ウサギ』の話、聞きながら温室でうたた寝しちゃって、水やり忘れちゃったんだから」


2人は静かに笑い合った。


その夜、トーマスは温室に戻り、笑い蘭の前に立った。

「君も魔法を持ってるみたいだな。うちの娘を笑わせて、花を咲かせてくれてありがとう」


すると蘭は微かに揺れ、またあの甘くスパイシーな香りを放った。


まるで「どういたしまして」と言っているようだった。


次の日、レイナはまた温室にやってきて、トーマスに言った。


「パパ、今日はママに、笑い蘭がパパとおしゃべりするお話をしてもらうね!」


トーマスは目を丸くした。

「え? それ、どうやって知ったの?」


「蘭さんが教えてくれたんだよ。夢の中でね!」


レイナはそう言うと、また笑い蘭に触れ、温室中を花びらでいっぱいにした。


侍女たちはあきれながらも笑い、トーマスは頭をかきながらエラを見た。


「どうやら、うちの家族には魔法がいっぱいあるみたいだ」


エラは微笑んで答えた。

「魔法なんかじゃないわ。ただ……愛がいっぱいなだけよ」


そして王国中に、また新しい笑い声が響き渡ったのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
愛と笑顔に溢れた国になるね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ