第47話 聖女レイナ18歳編 15年後の王国
レイナが18歳になった日、王宮は彼女の幼少期と同様、騒動に包まれた。
朝から廷臣たちは大広間に集まり、彼女の成人を祝う式典の準備に追われていた。
王、アルドリック三世は今や80歳に近いが、レイナの笑い声を聞くたびに、年を忘れるような活力に満ちていた。
「レイナ様はどこですか? 式典まであと1時間です!」
宮廷執事長が汗を拭いながら駆け回る。
聖女の居場所を把握するのは王国最大の難事のひとつだった。
その頃、レイナは城の西塔のてっぺんにいた。
金色の長い髪は風になびき、18歳の彼女は優雅なたたずまいを身につけていた。
が、その行動は何ともレイナらしい状況だった。
「見て、マルコム先生! あの雲、ウサギの形してる!」
彼女の隣には、白ひげを今も立派に蓄えた宮廷魔術師長マルコムがいた。
眼鏡の奥の目は、15年前の疑念がすっかり慈愛に変わっている。
「確かに……ですが、レイナ様、そろそろ下りましょう。陛下がお探しです」
「もう少しだけ! ねえ、先生、あの雲を綿あめみたいにふわっとさせられるかな?」
「それは……」
レイナは悪悪戯っぽく笑うと、手を軽く振った。
遠くの雲がふんわりと広がり、確かに綿あめのような輪郭に変わった。
マルコムは呆れながらも、思わず笑みを漏らした。
15年間、レイナの力は成長していた。
もはや「ぱっ」と手を叩くだけでなく、意識して瘴気を浄化し、枯れた土地を蘇らせることができた。
だが、彼女の本質はまったく変わっていない。
儀式よりも遊び心を優先し、格式よりも笑顔を重んじた。
式典は無事(多少の遅れを経て)始まった。
広間には王国中の貴族や、レイナが助けた村人たちが集まっていた。
王がレイナに正式な「聖女守護者」の称号を与えようとすると、レイナは突然、式壇から飛び降りた。
「待って、おじいちゃん王様! その前に、みんなにプレゼントがあるの」
彼女は両手を高く掲げた。
天井から、きらきらと光る無数の花びらが降り注いだ。
花びらは触れると微かに温かく、人々の疲れを優しく癒した。
広間は驚きと喜びの声に包まれた。
「これでみんな、今日いっぱい笑顔でいられるよ!」
王は諦めたように首を振り、しかし目は輝いていた。これがレイナ流の「儀式」だった。
式典後、レイナは城の中庭で父親のトーマスと話していた。
「また王様を困らせたな、レイナ」
「だって、堅苦しい式典より、花びらの方が楽しいでしょ?」
彼女はウインクした。
突然、遠くから慌てた使者が駆けてくるのが見えた。
「レイナ様! 東の国境で、黒い霧が再び現れました! 村人たちが体調を崩しています!」
場の空気が一変した。
レイナの表情も、遊び心から一瞬で真剣さに変わった。
「連れて行って。すぐに」




