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最終章 その後の後日談的な。

こぎつけました……!!


ありがとうございます!!!

それからあとは怒涛でした。

キャンパスに秒のようなスピードでパトカーが到着。私の無事を確認したときの警官の、どこか安堵した表情は今でも忘れられません。

通報してくれたのは、大家さんでした。

そういえば、私が出ていくとき大家さんご夫婦はちょうど除雪作業をしていました。

あのアパートは二階建て、全部で八部屋。入口は一か所しかありません。そんなところへ見知らぬ女が入っていった。(はて、誰だろう……)と思って見ていたら突然、どかん、ガシャンとまるでアパートにトラックが突っ込んだんじゃないかというようなそれはもう物凄い音がしたそうです。それで慌てて行ってみればその女が私の住む部屋の鍵を壊し、中でナイフを持って私の私物、服、食器、全部手当たり次第に破いて割って暴れていたと。

たまったもんじゃありません。当然警察を呼んだ。アパートに住んでたほかの学生たちも何事かと出てくる。到着するパトカー。その数、四台、五台……。

この大雪の中、一気にあたりは騒然としたそうです。

一方、暴れていた彼女の方はというと立てこもりをし始めた。

外から警察の説得が始まりました。しかし彼女は罵詈雑言を叫びまわるだけで会話にならない。

しかし、すると……突然ドタン、と大きな音がして急にその暴れた音がやんだのだそうです。

警察が突入すると、中で彼女は白目をむき、泡を吹いて倒れていた。



パトカーに乗せられアパートに戻ると部屋はもう酷いありさまでした。

中の物は引っ掻き回されている。服は全部、ずたずたに引き裂かれていました。下着も全部です。それを鑑識の方が丁寧に調べている。壁にはスプレーでしょうか、『●ね』と赤い大きな殴り書きがされていました。

私はもう頭が真っ白になり……やがて、みるみる涙が出てきました。

付き添ってくれた女性警察官が背中をさすってくれています。

「ここはもう住めないでしょう……ちょっと、伝手つてをあたりますから。」

大家さんの奥さんもそう言ってくれました。




その後……。

警察には包み隠さず話しました。

あの登校途中の出来事以外は。

なので話したのは、『あの暴れた女はおそらく元彼の今の彼女さんだろうと思います』ということだけです。

彼女はあの後すぐ、救急車で病院に搬送されたそうです。

あの若さで心筋梗塞……。私は言葉を失いました。

そして、あの事の発端である元彼ですが……。

あれから行方が分からなくなりました。

警察から聞かれ、彼と同じ専攻の同級生にも聞かれ、しまいには彼の両親も実家の長崎から探しにやってきて「何か知らないか」と聞かれたのですが、私は何も知りません。可哀そうでしたが、そう答えるしかありませんでした。

それから……大家さんは本当に親身に動いてくださいました。

あの事件からわずか数日後、本当に物件を探して引っ越しの手配までしてくださったのです。感謝してもしきれません。

母も山梨から駆けつけてくれ、大家さんに頭を下げてくれました。

私は心配をかけたことを母に詫びましたが「あんたは何も悪くない。」と母は首を振ってくれました。

「ところで母さん、あのカレシさんとは再婚しないの?」

数年前挨拶したのですが、今回は良い人だと思うのです。

「そうねえ~……まあそのうちね。」

母はのんびり言っています。

以前よりふっくらして、少し小綺麗になっています。

母にはいい加減幸せになってほしい。




こうして数か月後。

私は無事四年生に進級。研究室に配属となりました。

ようやく日々の実験と研究作業にも慣れてきたころ、私は大学の図書館に行ってあのミコ様のいた神社を調べてみることにしました

ほどなくして、それと思しき神社が見つかります。

『成島八幡神社』

写真が載っていたので見てみました。

(間違いない。ここだ……)

数日後、土曜日。

私はおんぼろの自転車を飛ばし、成島八幡に行ってみることにしました。

雪はもうとっくに溶けていました。道路に雪の塊がわずかに残っているだけです。

真っ青な空に入道雲。まさに日本の夏です。

神社が近づいてくる。もう確信に変わりました。

(間違いない。あの時、私はここに来た……。)

一礼して鳥居をくぐります。

中は鬱蒼と、太い杉の木が何本も立っている。雪が大量の蝉の声に変わっただけで、もろにあの時見た光景そのままです。

私は本殿にお賽銭をしてお参りしたあと、あのミコ様がいた茅葺屋根の家が無いか、見てみることにしました。

しかし。


社殿の奥は何もありませんでした。

ただ空き地があるだけです。

蝉の声が人っ子一人居ない境内に響いている。

(ここにミコ様はいらっしゃらない)

そう感じました。

やはり、あそこは異界だったのだ。

でもあの方はきっと、今日も姉様の残滓を探し、その網を張り巡らせているに違いない。

私は自転車に乗り、神社を後にしました。

蝉の声が遠ざかっていく。

しかししばらく走っていると……。


不意にミコ様が言った『とある一言』を思い出した。

そして私の心臓は雷鳴のように轟いたのです。


せば(じゃあ)まだなぁ(またなぁ)


ま た な ?


ミコ様が根拠なくそんなことを言うはずはない。


(……まさかね)



この予感は的中しました。


この後、私は大学院に進学して結局三年、米沢に住んだのですが……その間にまたもや『姉様の残滓』にまつわる数々の事件に巻き込まれ、ミコ様と再会することとなるのです。


この話は、また別の機会にしようと思います。





せば。まだなぁ。

そうそう、あとあのミコ様の男衆の中にいらっしゃったタジロウさんという方。

現実世界で一度、お見かけしたんですよ。

大学院二年の上杉まつり、たまたま見に行ったらあの練り歩きの上杉軍の列の中に混じって、


タジロウさんが歩いてらっしゃったんです。


思わずハッと息を飲んでいますと向こうも私の姿を認めて、にこりと笑って見せました。


それがタジロウさんを見た最後です。


今年は2026年。

私も44になりました。

ひょんなことからご縁にも恵まれまして結婚。おおらか……大雑把ともいう……な夫に小学生の息子、娘と4人で穏やかな日々を過ごしています。


でも最近、夜ビールを開け「ふい~」なんてやってる夫の顔を見て一瞬……息を飲む時があるのです。


今年50になる夫の顔が……


どことなくタジロウさんに似てきている。


きっと、気のせいだと思うんですけどね。

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