第一章 爆弾低気圧
ホラーっぽい話です。
初挑戦です、温かい目で見ていただけますと幸甚です。
けたたましいアラーム音が鳴り、目が覚めました。
布団の中から携帯(当時ガラケーしかない)を手に取ると、8時を指しています。
キンキンに冷えたアパートの一室。時折びゅおお……と外の風が鳴っている。私はやっとの思いで暖房のスイッチを入れ……起き上がることにしました。
今日は一限から授業。しかも必修……これを取らねば大学の卒業資格を失い、留年が決定します。
私はなんとか部屋をあたためようとがんばるも10℃にも届いてくれないエアコンを恨みがましく見上げ、げんなりと思いました。
(今月のガス代も7千円を超すな……)
石油ストーブは使えません。灯油を買うお金がない。
外は猛吹雪です。大粒の雪が真横に吹き付けている。数メートル先の隣家すら、ホワイトアウトで何も見えません。
これが米沢の冬の日常です。
テレビでは気象予報士がさかんに、『北海道の東、オホーツク海海上で爆弾低気圧が……』『東北、北陸では猛吹雪に警戒を……』と報じていますが……残念。山形県内に警報は出ていません。
ということは、休講にはならない。
トーストしたパンをさくりと食べながら、私は腹をくくりました。
すると突然、とある光景がフラッシュバックしてきたのです。
「別れてほしいんだ」
彼は突然、こう切り出しました。
話を聞くと、他に好きな人が出来たと。
相手は彼のバイト先の上司でした。
よくある話です。
しかし少々気持ちが悪くなったのは……数週間ほど二股をかけていたという事実でした。
私は吐き気をもよおし……丸四年付き合ったこの男と別れることにしたのです。
幸いだったのは、この人は同学年、学部、学科まで一緒だったのですが途中で専攻が分かれたため、今は授業でもほとんど会わないということ。
急にそれを思い出したのは、このパンのせいでした。よく一緒にご飯で食べていたものだったのです。
(もう、あのパンを食べるのはやめよう……)
私は胃のむかつきと共にブーツを履き、玄関に手をかけました。
ごう、という音とともに冷気が肌を突き刺してきます。
アパートの階段を降りると大家さんがご夫婦で雪かきをして、道路までの道をそりで作ってくださっていました。
私は遠くで作業をしているお二人に頭を下げ……すると二人は手を振ってくださり……大学に向かうことにしました。
ここから大学までは歩いて十分。
雪の中ではなかなかの距離です。
とはいえアパートを出て数十メートル歩くと広い道に出まして……あとはそれを左にずーっと歩けば、大学に着きます。たとえホワイトアウトで前が見えていなくとも、一直線なので迷いようがありません。
少し、風がおさまってきました。
しかしぼたん雪はしんしんと降り続いています。文字通り、真っ白です。
時々、車が通ってなぜかほっとする。
(たしかに、これでは警報にならんわな)
昨日もこんな天気だったもの。
私はフードを目深にかぶり、分厚いブーツの底が埋まるくらいの雪を踏みしめ、寒さに凍えながら歩き続けておりました。
と、その時でした。
私のすぐ耳元で突然、こんな声が聞こえてきたのです。




