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 のそり、と立ち上がり、アーサーはシリーの元へ歩き出す。血をボタボタと流しながら、一歩、また一歩とシリーに近づいていく。


「な、なんなのよ!どうして歩いているのよ!さっさと死ね!」


 そう言ってシリーは後ずさりながらもアーサーに向けて剣を振る。剣から風の刃が出てアーサーの体を斬りつけるけれど、アーサーは構うこと無く歩き続ける。


 トンッ


 シリーはいつの間にか壁際に追いやられていた。そして、口や体から血を流したアーサーがシリーの目の前に来た。


「ひっ!」

「シリー様、どうしてですか?どうしてこのように酷いことをするのです?あなたは心美しき聖女ではないのですか?エアリス様を魔王の領地内に捨てるなんて、聞いていた話と違います」


 アーサーは血がべっとりとついた両手でシリーの両頬を掴み、悲壮な顔で訴えている。もう死んでいておかしくないはずなのに、アーサーはまるで生きているかのようだ。一体、何がどうなっているのだろう?


 アーサーに両頬を捕まれたシリーは、両目を大きく見開き驚愕の顔をしてアーサーを凝視している。恐怖と混乱が入り混じった顔のシリーは口をパクパクさせているが声が出ない。


「シリー様……」


 アーサーは驚愕した顔のシリーをうっとりとした顔で見つめながら顔を近づけていく。


「ひっ!や、やめて……近寄るな!!早く死ねえええ!!!」


 シリーが叫ぶと、バンッという大きな音と共に閃光があらわれ、アーサーが弾き飛ばされて床に倒れる!


「ア、アーサー!」

「カイ、そろそろ聖女をからかうのもやめたらどうだ」


 アデルが静かにそう言うと、倒れていたアーサーからククク、と笑をこらえるような声が聞こえてきた。


「あははは!楽しいなぁ!恐怖と混乱に苦歪んだ顔、たまらなかったぞ」


 そう言って、立ち上がったアーサーの周囲に煙が立ち込める。そして煙が無くなったその場には、アーサーではなくカイさんの姿があった!


「カイさん!」

「よお!エアリス!俺の渾身の演技見てくれたか?良かっただろ?」


 ククク、と嬉しそうに笑いながらヒラヒラと片手を振っている。一体どういうことだろう?アーサーだと思っていた人物は実はカイさんだったということ?


「お、お前!この間逃げられた狼か!!貴様ぁ!」


 憎悪に満ちた顔でシリーが叫ぶ。


「よぉ、クソ聖女。アーサーじゃなくて残念だったな!」

「いつからだ!お前いつからアーサーに化けていた!それになぜお前も生きている!確かに胸を一突きしたはずなのに!」


「あぁ、あれか。あんなの魔族の俺にしてみれば致命傷にもなんにもならない。事前にわかっている攻撃なんて、うけたところで簡単に回復できる」


 つまらなそうにカイさんがそう言うと、シリーは持っていた剣を地面に叩きつけ、剣は粉々に飛び散る。


「貴様ぁ!アーサーはどこだ!あの騎士をどこにやった!!!」


 あの可愛らしい顔はどこにいったのかわからないほどに、歪んだ顔でつばを飛ばしながらシリーが叫んでいる。


「心配せずともこちらで保護している」


 アデルが静かにそう言うと、突然部屋の中にユーデリックさんと、ユーデリックさんに体を支えながら立っているアーサーの姿が現れた……!




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