公爵家の仕事
「エレナ?どうかした?」
「え?」
ハッとして顔を上げる
目の前には心配そうなフランツの顔
あぁそうだった王宮に呼ばれてたんだった
「ごめんなさい、ちょっとボンヤリしてたわ」
「無理もないよ。いろいろ立て続けにあったからね。フローレンスの事…その、残念だったね」
「ええ…」
再び顔を俯かせる
姉の遺体は結局見つからなかった
崖から落ちたか、夜盗に攫われたのだろうという結論になった
そして案の定、社交界で「醜聞になった姉を事故に見せかけて殺した」という噂が経ち始めている
時々パーティで姉の友人たちに睨まれる
だがそれだけだ
第二王子との婚約もほぼ決まり、正式発表も時間の問題なので誰も私に手が出せない
「色々続いたけど今日は良い知らせがあるんだ、早く知らせたくて呼んだんだ」
「え?」
「父上と母上がようやく君とのことを認めてくれたんだ。近日中に正式発表があるだろう」
「それじゃ…」
「ああ!これでようやく君を婚約者と言える!」
「嬉しい!ありがとうフランツ」
満面の笑顔で返すとフランツも笑顔で返してくれた
帰宅後父が呼んでいると聞き部屋へ向かう
ノックをして入ると父が机で何か書いていた
「ただいま戻りました」
「戻ったか」
「はい」
「王子の用件は何だった?十中八九婚約の事だろうが」
「はい。国王夫妻が認めてくれたそうです。近いうちに発表するだろうと」
「そうか!これでようやく王家と縁続きになれる」
ニヤニヤ笑う父に黙って微笑み返す
「ところで呼んだのは王子の事を聞くだけじゃない。そろそろお前にも公爵家の裏の仕事を教えなければな」
「公爵家の仕事?領地管理だけではないのですか?」
「あぁそうだ。それは表向きだ。フランツ殿下は第二王子でお前は一人娘だから、殿下が婿入りし次期公爵になるだろう。領地管理は殿下にお任せしてもいいがこの仕事はお前がやるのだ。絶対に殿下に知られるな」
「どんな仕事なのですか?」
父は引き出しから書類の束を出しこちらに渡す
数枚見て目を瞠る
「これは…人身売買?ですが我が国では人身売買は禁止されていたはずでは?」
「その通りだ。だが法の抜け道などいくらでも作れる」
「………」
「孤児ならいくらでもいるしいなくなっても誰も気づかない。私は領内に孤児院をいくつか建て孤児を保護し、引き取り先が見つかったと言っては他国の奴隷商人に売り渡している。おかげで領内からゴミがなくなり公爵家も潤う。一石二鳥だ」
「…………」
「どうした?」
「いえ。さすがお父様、見事な手腕ですわ」
「そうだろう?お前も私を見習いなさい。領地の物を上手く使ってこそ領主だ」
「………」
「明日から視察に出向く。お前も同行し一通り覚えなさい」
「わかりました。」
「用はそれだけだ」
「はい。失礼します」
ブックマークありがとうございます<(_ _)>