姉の死
※暴力表現あります注意
「この馬鹿が!!!」
夜、公爵家にて屋敷中に怒声が響き渡った
婚約破棄の件が父の耳に入ったのだろう、物が割れたり倒れる音が聞こえる
私は急いで父の部屋の前に行く
怪我をした足なので上手く走れない
使用人たちは知らんぷりで部屋から出てこない
公爵の暴力は日常茶飯事で止めようとすれば殴られる
止めなくても見ているだけでも殴られる
ボロボロになるまで殴られて屋敷の裏の林に捨てられるだけ
それで何人も林の中に消えていった
でも誰も訴えない
屋敷の使用人はすべて身寄りがなく貧しい者か、父に借金をして逆らえない者だけだから
誰だって自分の身は大切だ
部屋の前に辿りつきそっと中の様子をうかがう
「せっかく王子と婚約を取り付けたのに台無しにしおって!!」
部屋の中では父が姉を蹴り続けていた
「一度ならず二度までも面倒を起こして!もうお前みたいな役立たずはいらん!」
「ううっ!」
姉は頭や腹を庇いながら声を押し殺している
「誰か!こいつを林に…」
慌ててドアを開ける
「待ってお父様!」
「エレナ?お前には関係ない部屋に戻れ!」
「いいえお父様、今お姉様がいなくなるのはマズいです」
「何?」
「婚約破棄の直後にお姉様が姿を消せば『婚約者を取られて自殺した』もしくは『目障りな姉を始末した』と世間から疑われます。どちらにしろ醜聞は免れません」
「そんなもの修道院に行ったとでも言えばいい」
「そうだとしても『姉から婚約者を奪った』『妹に乗り換えた』と噂が立つでしょうそうなれば王家としても二の足を踏むか諦めるでしょう」
「ううむ…」
「殿下のお気持ちが向いてるとはいえ正式な申し込みはまだです。今はこれ以上波風立てない方が良いでしょう」
「だからといってこのまま屋敷に置いとくわけにはいかんぞ」
「領地内の修道院に行かせましょう。良いところを知っております」
「わかった。そうしよう。おい、さっさと部屋に帰って荷造りしろ!」
父はそう吐き捨てて姉を蹴り飛ばす
「うう…」
姉はよろめきながら去っていった
明朝、姉を乗せた馬車は静かに出発した
そしてその日の内に姉の馬車が夜盗に襲われ崖から落ちたと知らせが来た




