男三人 2
男三人 2
「で、プレイについての話なんですが」
「いや、珈琲の注文についてだろ、上木」
「失礼、噛みました」
「偽物語?」
「鼻血出た」
「どうして!?」
つい、テンションが上がってしまって、口が滑りました。
さて、珈琲「長屋間」の店主、もとい先輩は今日も格好良いです。
えへ。
私が高校一年生の時からの先輩なので、かれこれ……何年だ?待て待て、私。そう、アレだ。今私が……二三。ふぬ。つまり先輩は二五で、単純計算で九年。近所付き合いが始まったのが、九才の時からだから、一四年。
いやー……えー……
で、相変わらずのこの距離感。
……
今日はバカップル夫婦の旦那二名が来て、先輩のカフェガード(私命名:効果:サービルの顔を崩さない女性対応の極み)が微妙にノーガード戦法になっている。
どこのヤブキジョーですか!先輩!
キャー!格好良い!
しかし!
待て私!
これでは、もしかすると、キレイなお姉さんが来たら、先輩のイケメンぶりと、ノーガード戦法でクロスカウンターを決めてゴールインされる可能性がある……!!!
苦節一四年!片思いの重み!発揮してくれる!(勿論バッチリ笑顔です。サービース業の鑑と言われるのです!私は!)
「そう言えば上木は彼氏は――」
「いません!」
「あ、あぁ、そう……」
のんこさんの旦那さんが気まずい笑顔で引いた……!
違います!そういう意味での否定ではないんです!
内心わたわたするが、思いっ切り否定してしまった!これではただの行き遅れメンヘ――
「でも、上木は可愛いし、大丈夫だろ」
せんぱーい!
愛してます!
いますぐ嫁に貰ってください!
もしアレなら養ってあげるんで私の嫁でもいいですよ!
――ぷっ……
思わず妄想が行きすぎて鼻血が出た。
まったく。困ったモノだ。
えぇい、先輩め。
そう、先輩と出逢いは私が九才の時からだ。先輩は当時一一才。ひたすらぷよぷよを二人でやったのが最初だ。私はお姉ちゃんとやっていた性か『ばよえ~ん』を出すのが普通だった性か、先輩はひたすら負けていた。当時の私は、そりゃもう性格の悪さにかけては右に出るモノなしというある意味無敵状態だったので、小学生の先輩はかなり頭に来たのじゃないだろうか。
しかし、そんな事はおくびにも出さず、
「何ソレ!?やべえな!」
とかなんとか言ってきゃっきゃ喜んでる先輩を見て、私は――
――惚れたわけだ。
……我ながらどうかとは思う。
というか絶対顔。顔がイケてたから。そっちの方が理由として、なんか正当な気がする。ただのイケメン好きです、私。絶対!……でも先輩あの時期まるっこかったような……。
だってなんで負けててきゃっきゃ喜んでる男に萌えなきゃいけないわけ!?
えぇい!
けれど、超好きです。
手伝いを始めたのは中学生の時。
私はどちらかと言えば要領の良い、嫌な女タイプだったので、すんなりと高校の入学が決まり、暇をしていたのだ。そう考えると、当時は精々、先輩の家にお邪魔して、さりげなくパンツを奪ったり、トランクスを嗅いだり、シャツを盗んだり程度しかしていないので、今と比べると大した事がない。まだまだだね。いや、大概だろう。えへ。
自分突っ込み。
私の家の家業は特にない。本当に近所付き合いだ。
私の特技はデイトレ。何も其処まで嫌な女にならなくても、と自分でも思うけれど、向いてるのだから仕方がない。
「おーい、上木ー」
ていうか、先輩、いい加減気付いてくださいよ。
どこのラノベの主人公ですか?あなた。
とかなんとか思いながら今日も私は働く。
しっしと呆けてる女性の視線を追い払いながら。
「なぁ、上木。こんな事を尋ねるのもなんだけど、……オマエ、下着盗まれた事ある?」
――盗んだことはあります。