003 待ち伏せ
「ウケる。物の見事に待ち伏せされてたな!」
19体の魔物は俺たちを囲んだまま動かない。
こちらの動きに合わせてカウンターする気のようだ。
「吉岡先輩、笑ってる場合じゃないですって!」
早川が焦った様子で俺を見る。
「ま、どうにかなるっしょ! ここは第1階層だぜ! それに君らにはユニークスキルがあるんだろ?」
俺の言葉に、他の三人がハッとした。
「早川、なんか君のスキルは強いって言ってたじゃん! それ使えよ!」
「そうでした! 俺のユニークスキル【スピード・ブースト】は対象の速度を強化する支援系っす! 対象は二人までで、効果時間は3分! クールタイムは10分っす! でも思考速度だけは上がらないみたいっす!」
「要するにヘイストだな。いいじゃん! 俺と梶原……いや、ユズにかけろ!」
「なんで俺じゃなくてユズなんだよ」と梶原が睨む。
「だってお前……ユズより脚プルプルしてるじゃねぇか」
「うっ……」
俺の指摘に、梶原は声を詰まらせた。
そう、彼の脚は今、生まれたての子鹿のように震えている。
これではとても戦えない。
「じゃあ、吉岡先輩とユズ先輩に……【スピード・ブースト】!」
早川がスキルを発動した。
俺とユズの背中に光の翼が生える。
次の瞬間、効果を実感した。
「すっげぇ! 体が超軽くなったぞ!」
「これなら戦える!」
「なくても戦えたけどな! やるぞ! 戦闘開始だ!」
俺は敵の中で一番強そうなオオカミに突っ込んだ。
オオカミはこの場に4体いて、おそらく討伐依頼対象の若葉ウルフだ。
「「「ワォオオオオオオン!」」」
オオカミたちは吠えながら連携して俺を迎え撃つ構えだ。
「吉岡くん!」
ユズが心配そうに叫ぶ。
「問題ねぇ! こちとらトンファーの達人だぜ! アチョオオオオオオオオ!!!!!!!!!」
俺は叫びながらトンファーを振り回す。
今まで使ったことのない武器なのに、不思議と体が動いた。
しかし、勝手に体を操作されているような感じはしない。
脳内でイメージした動きを、体が自動で再現してくれる感覚だ。
「キャウンッ」
まずは1体目のオオカミを倒した。
軽やかに敵の噛みつきをかわしつつ、脳天に一撃を食らわす。
「なんすかその動き! すごすぎですよ吉岡先輩!」
「アイツ、マジでトンファーの達人じゃねぇか」
「吉岡くん、かっこいい!」
仲間たちが驚いている。
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討伐:若葉ウルフ×1
PT:4人 人数補正:70%
獲得:28G / 21EXP
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視界の左上にログが表示された。
「なんか出たんだけど! 獲得とか討伐とか!」と梶原が叫ぶ。
ユズも「私も!」と驚いている。
どうやらログは全員の視界に表示されているようだ。
「なんかゲームっぽくておもしれーじゃん! おい、こいつらそんなに怖くないぞ! 一気に倒そうぜ!」
俺は止まることなく次のオオカミに突っ込む。
「チェストオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
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討伐:若葉ウルフ×1
PT:4人 人数補正:70%
獲得:28G / 21EXP
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「でえええええええええええええい!!!!!!!!」
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討伐:若葉ウルフ×1
PT:4人 人数補正:70%
獲得:28G / 21EXP
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「キエエエエエエエエエエエエエエエエイ!!!!!!」
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討伐:若葉ウルフ×1
PT:4人 人数補正:70%
獲得:28G / 21EXP
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まさに秒殺だった。
俺を狙っていた4頭のオオカミは、圧倒的なトンファー術の前に成すすべなく死亡した。
「こっちは片付いたぞ!」
俺が振り返ると、仲間たちも戦っていた。
「吉岡くん、見て! これが私のユニークスキル【ボム・フルーツ】だよ!」
ユズが果実を模した爆弾を投げている。
色は赤・青・黄・白の四色で、色によって効果が違うようだ。
赤は炎、青は氷、黄は雷、白は煙を発生させる。
白だけは煙幕用らしく、敵にダメージを与えていなかった。
果実はどこからともなく手のひらに生成されるため、使い勝手が良さそうだ。
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討伐:青芽ネリュム×2 / 青羽コッコ×1
PT:4人 人数補正:70%
獲得:49G / 49EXP
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「属性攻撃のオンパレードじゃん! すげーな! 無限に投げられるの?」
「ううん! 一気に投げられるのは5個まで! クールタイム10分だって!」
「10分でまた5個投げられるのか?」
「そう! 最初の1個を作ってから10分! だから全部投げないと損!」
そう言って、ユズは追加で赤い果実爆弾を投げた。
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討伐:青芽ネリュム×1
PT:4人 人数補正:70%
獲得:14G / 14EXP
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「吉岡先輩もユズ先輩もすごすぎっす!」
「早川、俺のこと忘れてない? 俺もいるんだけど?」
先ほどまでブルっていた男・梶原もユニークスキルを発動していた。
彼の背後に風のオーラを纏った短剣が浮かんでいる。
「吉岡、俺だって負けていないぞ――いけ!」
梶原が剣の切っ先を敵に向けると、短剣の一つがスッと飛んだ。
的確に角の生えたウサギを貫く。
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討伐:草角ラビット×1
PT:4人 人数補正:70%
獲得:21G / 14EXP
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「梶原、やるじゃん!」とユズが声を弾ませる。
梶原が「ふふ」と嬉しそうに笑う。
しかし、ユズの言葉には続きがあった。
「さっきまでビビってたのに!」
「ビ、ビビってねぇし! つか、見てろよ! 俺のスキル【ウィンド・ダガー】で倒してやるよ! 風刃、敵を殺せ!」
梶原の背後に浮かぶ、彼が「風刃」と呼ぶ短剣が一斉に発射され、5体の敵を貫く。
その際、風刃は直線に飛ぶものもあれば、曲がって飛ぶものもあった。
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討伐:草角ラビット×4 / 青羽コッコ×1
PT:4人 人数補正:70%
獲得:105G / 77EXP
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「へぇ、梶原のスキルって曲げられるのか。それとも自動で敵を追尾しただけ?」
「いや、曲げられる。俺が念じたとおりに動かせるんだ。ただ、風刃を視界に捉えている必要がある。クールタイムは1本につき2分。ユズの爆弾と違って1本ごとにクールタイムがある」
「なかなか便利そうだな」
風刃を視界に捉える必要がなければ最強だったな、というのが俺の感想だ。
それだったら、壁に隠れて撃ちまくれる。
ただし、その制約を考えても、使い勝手は良さそうだ。
梶原が一転して強気になるのもうなずける。
「なんにせよ、これで残り5体だ! 一気に片付けるぞ!」
「「「おー!」」」
俺が突っ込むと、他の三人もそれに続いた。
戦闘開始時の恐怖はどこへやら、揃いも揃って積極的だ。
その中でも特にノリノリだったのが――。
「チェストオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」
俺と――。
「えーいっ!」
ユズである。
驚いたことに、彼女はスキルに頼らなくてもイケイケだった。
梶原や早川と違って腰が引けていない。
大きな胸をぷるんぷるん揺らしながら、可愛らしい掛け声とともに槍で敵を突いていた。
早川のスキルで体が軽くなっているのも大きい。
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討伐:青芽ネリュム×3 / 青羽コッコ×2
PT:4人 人数補正:70%
獲得:84G / 84EXP
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「殲滅完了! 俺たちの勝利だ!」
こうして全ての敵を倒した。
すると、戦闘結果ログが表示された。
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【戦闘結果ログ】
討伐:青芽ネリュム×6 / 草角ラビット×5 /
青羽コッコ×4 / 若葉ウルフ×4
PT:4人 人数補正:70%
獲得:385G / 322EXP
所持金:1,000G → 1,385G
レベル:Lv.1
経験値:0 → 322/500EXP
依頼進捗:青芽ネリュム討伐 6/6・達成
依頼進捗:草角ラビット討伐 5/5・達成
依頼進捗:青羽コッコ討伐 4/4・達成
依頼進捗:若葉ウルフ討伐 4/4・達成
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今回の戦果をまとめたもののようだ。
「おいおい、最初の戦闘で討伐依頼が4つも完了しちまったぞ。俺たち強すぎか?」
「吉岡先輩のトンファーがヤバすぎるんですよ! なんすか、あの動き!」
「まあ、たしかに吉岡のトンファーはヤバかった」と梶原もうなずく。
「あと攻撃のたびにいちいち叫ぶのもヤバい!」
ユズが腹を抱えて笑っている。
「それな。うるさすぎだっつーの」
などと言いつつ、梶原も戦いを終えて機嫌が良さそうだ。
「とりあえず君らのユニークスキルが再使用できるようになるまで休んだら進むか」
俺の言葉にユズたちが同意する。
「休憩は賛成だけど、ちょっと離れないか? 敵の死体が散乱している場所で休むのはさすがに嫌だわ」
「梶原の意見はもっともだ! では吉岡隊、移動!」
「私たち吉岡隊なんだ!?」
ユズが笑う。
そのときだった。
「――! おい、魔物の死体がなんかおかしいぞ!」




