112 危険な戦い
メイの警告を聞いて、俺は耳を澄ませた。
たしかにバシャバシャと水の跳ねる音が響いていた。
俺たちが止まっているのに、だ。
「数が多いな! よし、俺も側面から攻撃に参加する! メイ、サキ、そこで立ち止まって迎撃しろ! 突っ込むのは危険だ!」
「「了解!」」
俺は二人に指示を出すと、大鎌を持って横に跳んだ。
そうして二人を射線から外すと――。
「いっけぇ! 俺の大鎌! 吉岡死神殺法その1! 鎌ブーメラン! デアアアアアアアアアアア!!!!!!」
霧の向こうに向かって鎌ブーメランを放つ。
大鎌が横向きに高速回転し、霧を切り裂いていく。
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討伐:迷い灯ウィスプ×5、霧灯ラット×1、霧灯ゴブリン×1
PT:3人 人数補正:80%
獲得:352G / 272EXP
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ログが表示された。
「お! 一気に7体倒したぞ!」
「大鎌を投げた!? って、7体!? 本当ですか!?」
「すごっ! 本当に大鎌を投げた! 吉岡くん、相変わらずイケイケじゃん!」
メイとサキが驚愕している。
「驚くのはまだ早いぞ! 俺が倒したのはウィスプ5体、ラットとゴブリンが1体ずつだ! 討伐依頼の通りなら、少なくともラットは残り3体、ゴブリンは残り2体いるぞ!」
鎌をキャッチしながら叫ぶ。
「ゴッブゥ!!!」
俺が言った瞬間、霧からゴブリンが姿を現した。
「任せてください!」
メイが重装備とは思えない軽やかな動きでゴブリンを突き刺す。
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討伐:霧灯ゴブリン×1
PT:3人 人数補正:80%
獲得:56G / 64EXP
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「倒しました!」
「「「ぴゅーい!」」」
「ゴブゥー!」
「「「キィィィ!」」」
メイの嬉しそうな声が、魔物の咆哮にかき消される。
霧から続々とスライム、ゴブリン、ラットが現れた。
ラットとゴブリンが並んで前を走り、スライムが後ろに続いている。
「吉岡くん、スライム6、ゴブリン1、ラット3!」
サキが素早く数を叫ぶ。
「見えている! 前衛の敵を迎撃するんだ! 後衛は俺に任せろ!」
俺は前に駆け出し、敵の側面に回る。
そこから〈バースト・ステップ〉で一気に距離を詰めると、大鎌を振り払う。
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討伐:霧灯スライム×6
PT:3人 人数補正:80%
獲得:192G / 192EXP
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鎌の尋常ならざるリーチでまとめて捌く。
「吉岡くん、やりすぎだって! 新人の見せ場ないじゃん!」
サキが苦笑する。
「大丈夫です! 任せてください! 【バブルジェットダブルキャノン】!」
メイがユニークスキルを発動した。
彼女の両肩に、直径20cm程度のキャノン砲が召喚・設置された。
「サキさん、前に出ないでください! 撃ちます!」
メイが腰を落とす。
両肩の砲口がラットに照準を合わせた。
ドンッ! ドンッ!
轟音と共に水の塊が放たれる。
それらはメイの狙い通りラットに命中した。
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討伐:霧灯ラット×2
PT:3人 人数補正:80%
獲得:112G / 96EXP
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きっちり2体を倒しきる。
「おー! メイもやるじゃん! サキちゃんだって負けてないからね!」
残りの敵はサキが手際よく仕留めた。
サキも数日見ない間に、めっきり強くなっていた。
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【戦闘結果ログ】
討伐:霧灯スライム×6 / 霧灯ゴブリン×3 /
霧灯ラット×4 / 迷い灯ウィスプ×5
PT:3人 人数補正:80%
獲得:824G / 736EXP
所持金:8,947G → 9,771G
レベル:Lv.20 → Lv.21
経験値:1,266 → 352/1,760EXP
依頼進捗:霧灯スライム討伐 6/6・達成
依頼進捗:霧灯ゴブリン討伐 3/3・達成
依頼進捗:霧灯ラット討伐 4/4・達成
依頼進捗:迷い灯ウィスプ討伐 5/5・達成
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「よーし、絶好調! これで残る通常種はリザードだけになったな!」
「やっぱり吉岡くんと一緒だとサクサクすぎ。私の出番全然ないじゃん」
「何を言っている! 魔石拾いがあるだろ!」
「はーい、拾わせていただきまーす!」
サキが軽い調子で魔石を拾う。
その最中に〈デコイ〉が消えたので、再発動して太郎たちを前方に立たせた。
「こんなにも……」
メイが何やら呟いている。
「どうかしたのか? メイ」
「あっさりと勝ちすぎて……愕然としています……」
「最初の鎌ブーメランが大きかったねー。見えない敵を一気に減らせたし」
「だろー! 問題は鎌が霧の向こうで何かに当たって戻ってこない危険だったが、湿原だし平気だろうと思って投げてみたぜ!」
「吉岡さん、わりと後先を考えないんですね……」
「ううん、吉岡くんはかなり考えてるよ。それ以上に自分らしさを大切にするだけ」とサキが笑う。
「その結果、後先を考えない行動をとるのが俺だ! メイ、慣れろよ!」
「は、はい! 慣れます!」
◇
急ぐ必要がないため、皆のクールタイムが終わってから移動を再開した。
しばらく進んだ後――。
「そろそろ敵がいるかもしれません。もう半ばまで来ていますので」
――とメイが言ったので、サキに幻影を出してもらった。
「本当だ。いたよ。前に固まってる。最低でも3体いるからリザードだね」
「トードもいるかもしれません。リザードは問題ないと思いますが、トードはうまく対処できないと毒で苦しむことになります」
「トードの見た目は? どうやって毒攻めをしてくる?」
「見た目は橙色の大きなカエルで、口に含んだ水を吐いてきます。この水に毒が含まれていて、当たると呼吸困難や全身のけいれんなどの症状が出ます」
「めっちゃやばいやつじゃん」
サキがぎょっとする。
「ギルドの窓口で解毒薬を買っていれば、そこまで怖い魔物ではありません。500Gで購入できます」
「おいおい、ならどうして言わなかったんだ?」
俺が苦笑すると、メイは慌てて手を振った。
「わ、忘れていたわけじゃありません! 解毒薬、持ってるんです! なので、誰かが毒になっても私の解毒薬を使えば済みます!」
「なるほど。そういうことなら安心した! 念のため、今回は俺が前に出て戦おう。もし敵の中にトードがいた場合、重装備で動きの鈍いメイは相性が悪い。たとえ500Gで買えるものとはいえ、無闇に解毒薬を使うのはもったいないからな。安全圏から仕掛けよう」
「賛成! じゃ、後ろは私たちが警戒してるねー」
「おうよ! 太郎たちも後ろで大人しくさせておこう!」
二人とポジションを交代する。
太郎たちは二人の左右と後方に配置した。
「前方にいるとか言ってたし、スタストで攻めるか」
俺は〈スター・ストライク〉を連射しながら真っ直ぐ歩いていく。
「ギョエエエエ!」
魔物の悲鳴が響くものの、ログは出ない。
「命中していないのか?」
さらに〈スター・ストライク〉を撃ち続ける。
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討伐:泥足リザード×2
PT:3人 人数補正:80%
獲得:96G / 96EXP
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ログが出た。
これで残るリザードは2体だ。
「「シャーッ!!!!!」」
リザードが霧の向こうから姿を現す。
そのうち1体は、俺たちから見える位置で〈スター・ストライク〉を受けていた。
「通常種なのに一撃じゃないのか。魔法のランク差補正だな」
とはいえ、大きな問題にはならない。
一撃で倒せないだけで、ダメージは受けており、弱っている。
迷わず大鎌で2体まとめて切り裂いた。
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討伐:泥足リザード×2
PT:3人 人数補正:80%
獲得:96G / 96EXP
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討伐ログは出るが、戦闘結果ログは出ない。
「まだいるな」
「ゲロゲロー!」
霧の奥から頬をパンパンに膨らませた巨大カエルが出る。
こちらを見るなり体を仰け反らせて攻撃態勢に入った。
「トードです!」
メイが叫ぶ。
その瞬間、俺は〈バースト・ステップ〉を発動した。
一瞬で距離を詰め、敵が水を吐く前に切り裂く。
「チェストオオオオオオオ!!!!!! うおおおおおおおおおお!!!!!」
大鎌を右手で振り回して滅多斬りにした。
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【戦闘結果ログ】
討伐:泥足リザード×4 / 毒笠トード×1
PT:3人 人数補正:80%
獲得:312G / 312EXP
所持金:9,771G → 10,083G
レベル:Lv.21
経験値:352 → 664/1,760EXP
依頼進捗:泥足リザード討伐 4/4・達成
依頼進捗:毒笠トード討伐 1/1・達成
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「やったぜ!」
敵が毒水を吐く前に倒した。
「すごいです! 吉岡さん!」
「私も強くなった自信あったんだけど、自信なくしちゃうなー」
サキが冗談っぽく笑う。
「グォオオオオオオオオオン!」
その時、側面から巨大なワニが襲ってきた。
沼潜りクロコダイルだ。
近づいていることに、誰も気づいていなかった。
とんでもない大きさの口が開き、凶悪な牙が俺に襲いかかる。




