第121章 責任を引き受けるもの
第121章 責任を引き受ける者
王宮・謁見の間。
装飾も、儀礼も、最小限だった。
皇帝は、玉座から降りていた。
——それだけで、場の空気が変わる。
校長アルケオンの前に立ち、
皇帝は深く頭を下げた。
「……すまなかった」
その声は、低く、はっきりとしていた。
「私は、学園を信じていた」
「正確には——
信じているつもりで、見ていなかった」
一瞬、言葉を切る。
「恩師であるあなたが守っている場所だ」
「だから大丈夫だと、思い込んだ」
「それは、皇帝としての怠慢だ」
誰も、息をしなかった。
⸻
皇帝は、顔を上げる。
「今回の事故は、
王宮軍部の一部が関与していた」
「国家が、学園に手を伸ばした以上」
「——国家には、
真実を知る義務がある」
視線が、まっすぐ校長を射抜く。
「禁忌魔法の使用を、正式に承認する」
「条件は一つ」
「学園のためではない」
「国家のためでもない」
「——犠牲になった者たちとこれから被害をくいとめるためだ」
副校長ミレーヌが、静かに息を吐いた。
⸻
皇帝は、もう一度だけ言った。
「私は、学園に責任を押し付けない」
「だが、同時に」
「国家も、逃げない」
「この件は、
“事故”では終わらせない」
その言葉は、宣言だった。
⸻
校長は、ゆっくりとうなずいた。
「……承知しました」
「真実を、明らかにします」
その背中を見ながら、
皇帝は思った。
——信じるとは、
任せきることではない。
——責任を引き受けることだ。
禁忌魔法の承認書が、
その場で発行された。
封印は、重く。
だが、必要な重さだった。
ここから先は、
誰も目を逸らせない。
真相は、
ついに“見られる側”へ進む。




