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第十二章:病院の処置室
8月のある平日夕方。
淳也は急に高熱を出して、
会社を早退した。
近所の総合病院——
幸恵が異動してきたという、あの病院。
受付を済ませて、
内科の待合室で順番を待っていると、
看護師が名前を呼んだ。
「淳也さん」
立ち上がると、
それは幸恵だった。
白いナース服に、名札。
一瞬、二人は目が合った。
幸恵の表情が、わずかに揺れる。
「……こちらへ」
幸恵は冷静に案内した。
処置室に入り、
体温を測り、問診票を確認する間、
二人はほとんど言葉を交わさなかった。
「熱は38度8分……
かなり高いね。脱水症状もあるかも」
幸恵の声はプロフェッショナルだったが、
指先が少し震えていた。
淳也は小声で言った。
「幸恵……」
幸恵は体温計を片付けながら、
目を合わせずに答えた。
「仕事中やから……
診察終わったら、話してもええよ」




