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6. 貴方の運命を私にください



「えへへ〜…ダメだよね、いい加減立ち直らなきや……」


「どうして泣いているんだ?」


「………へ」


「誰かに泣かされたのか?」



 猫ちゃんと話していると、突然大好きな声が聞こえてきた。もしかしてこれは、ユー様が好きすぎるが故に聞こえた幻聴なのだろうか。もういっそ、幻聴でも声が聞けたならいいや。


 そんなことを思いながら振り返ると、毎日穴が開くほど見つめた、大好きな大好きな人の姿があった。



「ユー様……?」


「ッ、そうだ。何故泣いている?」



 そのユー様は、眉間にシワを寄せて、苦しそうな顔をしていて。まさか私は幻覚まで見えるようになったのだろうか。だってそうじゃないと、こんなに私に都合がいいことなんて起こるわけない。



「なんでユー様がそんなこと気にするんですか」


「それは、……その」



 現実を思い知りたくて話しかけてみたら、返事が返ってきて驚いた。なんとこれは私の作り出した幻覚ではないらしい。それでもまだ信じられなくて、さっきよりも大胆に話しかけてみたら、予想外の解答が返ってきて心臓が飛び跳ねた。


 それでも、貴方が他の人とも交換日記をしていたから泣いてたんです、なんて言えるはずがないから。



「……答えられないなら、聞かないでください。なんで今私に、話しかけたんですか」


「期末試験の発表が今日だっただろ?」


「それがどうかしたんですか?」


「……それでやっと、『マリア嬢がユーフェミア=グローシアと付き合うメリット5箇条』のプレゼンが完成したんだ」


「…………え?」



 ユー様の言葉に、頭に大量の『?』マークが浮かぶ。


 待って今この人、何て言ったの?

 私と付き合うメリット5箇条??

 ダメだ、ついに涙腺だけではなく耳までぶっ壊れたのかもしれない。


 そう思って聞き返そうとしたが、ユー様に


「時間は取らせないからプレゼンを聞いてもらってもいいだろうか」


 と言われて素直に頷いてしまった。これだからチョロオタはつらい。


 まぁ、聞いたらどんな内容のプレゼンか分かるだろう。どうせ私をどこかへ付き合わせるメリット5箇条とかだ。パーティーの代役でも探しているのかもしれない。いや、それでも嬉しいけどな。


 ……とにかく、過度な期待はよくない。そう思ってユー様の話に耳を傾けることにした。



「まず1つ目は、家柄がいいことだ。公爵家の長男で次期当主になることが決まっている。……あー、その、婚約したとしても一生君に不自由はさせない」


「………へ?」


「次に二つ目だ。今回のテストは、ブランシェット家のメアリクスと同点だったが1位だった。このままなら魔法省にエリートコースで入れるだろう。勿論これからも将来性を証明していくつもりだ。これなら甲斐性があることを示せるだろう」


「………」


「3つ目だが、これは少し恥ずかしいことを言うことになるのだが、顔が整っているとよく言われる。マリア嬢が俺を見ていて不快になることはないと思う」


「……ないに決まってるじゃないですか!?ユー様の顔を至高と呼ばずに何を至高と呼ぶのですか!?」


「その、……気に入ってくれるのなら良かった。次に4つ目だが、現状の俺にマリア嬢を楽しませる事はできない。マリア嬢のように手品ができる訳でも楽しく話せる訳でもない。しかし、そこは伸び代に期待、ということでどうだろうか。アピールに少し欠けるかもしれないが、君がその過程を隣で見守ってくれたら嬉しい」


「……あ、あの、ユー様…?」


「最後に5つ目だが、君を想う気持ちなら負けないと思う。口下手だし不器用な俺だが、君を泣かせるようなことだけはしないと誓おう。だから、……ッだから、俺との婚約を考えてみてくれないだろうか!!」


「え、えっと、えぇ!?」



 待って、本当に待って。今私、何を聞いてた!?


 嘘じゃなかった、本当にユー様と私が婚約するメリットについてだった、えぇ、なんで?


 どれだけ考えても、ユー様が私にそんなことを言う理由が思いつかない。


 そこで働かない頭を必死に回して出した答えが……



「えーっと、ユー様はもしかしすると望まない結婚を強いられているのですか?」



 偽装結婚だった。



「あの、偽装結婚は少し考えましょう。まだ手があるはずです」


「……?私は偽装結婚などするつもりはないが??」



 それならつまり、何のために私と婚約をするのか。必死に考えたが、偽装結婚以外の結論が出てこない。

 

 もうギブアップして直接本人に聞いてみるしかないので、私は涙を拭ってユー様の綺麗なオレンジ色の瞳を見つめた。



「ならどうして私と婚約を……?」


「君のことを、その……愛してるから、だが」


「ユー様が私を、愛してる……?」



 嘘だ。嘘。だってその可能性は、1番最初に思考から外したものだ。それなのに、ユー様の赤く染まった頬とか、焦されそうな視線を見ていると嘘だなんて思えなくて、何も言えなくなる。



「もしかすると君にはもう他に愛している人がいるのかもしれない。しかし、今泣いていたのがその相手に泣かされたからなのなら、少しでもチャンスがあると思っていいだろうか」


「……そんな人、いないです。ユー様こそ、私以外に好きな人がいるんじゃないですか。私以外とも交換日記してるじゃないですか。私、机に入ってたの見ましたから!!」


「あれを見たのか!?あれは、その……マリア嬢と交換日記をするための下書きのノートだ」


「……え」


「君に伝えたいことが多すぎて最初から10ページ書いたら、友人に非常識だと怒られたから、文章を推考するようのノートを作ったんだ。……君が昨日交換日記をくれなかったのはそのためだったのか。安心した」



 そう言って笑ったユー様は緊張からか照れからなのか顔をリンゴのように真っ赤にしていて、こんなユー様はゲームの中でも見たことがなかったから、こっちまでその熱が移ってきて頬が熱くなった。


 ユー様が言ったことが本当なら、私は勘違いをしていたということだろうか。でも、それにしてもユー様に聞きたいことが多すぎてユー様を質問攻めにしてしまった。



「じゃあ、なんで私に話しかけてくれなかったんですか。いやそもそも、何で最初から話を……」


「……笑わないか?」


「笑わないですよ!?」


「……君が綺麗だったから、面白くない話をして幻滅されたくないと思ったんだ。幻滅されるぐらいなら性格が悪いのだと思われた方がマシだと思った」


「えっ、ちょ、あの…!?」


「だから、君がプレゼンの5箇条目で、俺のことを好きだと言ってくれたときには舞い上がってしまって、何も言えなくなってしまったんだ。それに、君は完璧令嬢として有名なのに、俺に誇れるものは家柄だけしかなかったから、不釣り合いだと思ってマリア嬢の提案にすぐに肯けなかった」


「えぇ……」



 ユー様は話すたびに、じわじわと首まで赤くなっていっている。もしもユー様が爆弾ならば、もう今にも爆発しそうだ。それなのに顔は真剣で、私の大好きなユー様がそこにいて……本当に、泣きそうになった。


 だって私、ずっとユー様を好きで良かった。諦めなくてよかった。前世から友達に叶わないって馬鹿にされても、一途に思い続けてよかった。


 さっきまでと変わらず涙は止まらないけど、これは嬉し涙だからノーカウントってことにして。


 泣きじゃくる私に、ユー様は騎士のように跪いて私の手を取る。



「つまり、その……。マリア嬢のことを愛しているんだ。突然婚約を持ちかけるなんて非常識だと思われるかもしれないが、君が誰かと幸せになる未来を想像しただけで許せそうにない。君の側にいる理由を、俺にくれないか」


「……ッ、はい!!」



 私がユー様の言葉に満面の笑みで笑うと、ユー様も安心したように笑ってくれて、心がギュンギュンと痛む。


 それはさっきまでの痛みとは違っていて、痛いのに嬉しいから、また泣きたくなった。



 もしかしたら。


 もしかしたらだけど、マイプリ本編でヒロインが他の人を選んだ場合は、ユー様は他の人と結婚したのかもしれない。


 それが政略結婚かも恋愛結婚かも私には知る由もないけれど、本来なら私はこの学院へ来ずに女学校へ行かされていたはずなのだから、その相手が私じゃないことは確かだ。


 でも、そんな運命は断ち切ったから、斬り殺したから、もうこれからずっと私のものだ。



「貴方の運命を私にください。絶対に幸せにしてみせます」



 そう言ってユー様を見つめたら、


「ずっと前から君のものだった」


 と言って嬉しそうに笑うから、一生この人の隣で笑っていたいと思った。











〜おまけ〜


☆マリアに交換ノートを見せるユー様



マリア「これ、ユー様ファンブックじゃないですか…!本人直筆とか尊すぎる……」


ユー様「ふぁんぶ…?」


マリア「これ、私にいただけませんか!!いくらでも出しますから!!」


ユー様「……マリア嬢のものと交換ならいいぞ」


マリア「価値釣り合いますかね!?」





☆ユー様がレオンハルトにマリアを紹介した場合



マリア「お初にお目にかかります。マリアベル=シュレインです」


レオンハルト「あぁ、ユーフェミアから話はよく聞いているぞ。ユーフェミアのことをよろしく頼む」


マリア「はい!!例え地の果てに飛ばされてもユー様のことを絶対に幸せにする自信があります!!」


ユー様「それは俺のセリフじゃないか!?」





☆爆発して欲しい2人



ユー様「そういえば、どうして俺に話しかけてきてくれたんだ?やっぱりその、身分とか」


マリア「いや、単にユー様のことが大好きだからですが」


ユーフェミア「そ、そうか……」


ルルカ「爆発したらいいのではないかしら?」





本編に入れたかったけど入れれなかった話をおまけに詰め込んでしまいました!笑


本作を読んで、「作中に登場したリゼやルルカの話も気になる!」と思ってくださった方は、『私の推しが今日も最高に尊いので、全力で幸せにする!』の方も読んでみてください!!

そちらもオタク主人公の糖度120%ハイテンションラブコメディになっておりますので!!(宣伝)



これにて本編完結です!!!

感想や評価をくださると本当に本当に嬉しいです。

ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました!!




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― 新着の感想 ―
[一言] 「私の推し」も一気読みして、こちらも一気読みしてしまいました! マジで尊いです。ありがとうございます…!!
[良い点] 読ませていただきました、面白かったです [一言] 「わた推し」では考えられなかったほどユーフェミアが残念でむしろ好感度アップw
[良い点] 無事に腱鞘炎の手術終わってこちらも読みました! ユー様はマリアオタクってことでいいでしょうか?(笑) レオンハルトにマリアのこと話してるの、完全に好きなもの語る早口ですよね! リゼ編の時も…
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