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第九十七話


「今度こそ終わりです。マリー王女! 行け、神風!」

 

 ジャンが放った竜巻が再度、マリー王女を襲う。


「アジェリエンダー!」


 遥がすばやさ上昇の魔法を発動すると、素早い動きでマリー王女の元へ行き抱きかかえる。そして王女の腕を肩に回すと、すぐにその場から離れた。

  

「無駄ですよ。姫野遥、一応、私の神風龍転蹴じんぷうりゅうてんしゅうは追跡型のスキルでね。どこまで追っていきます」


 竜巻はクルリと方向転換して、マリー王女と遥を追いかける。


「まずいわ……」


 遥は徐々に近づいてくる竜巻を焦りながら見ている。そして、今にも竜巻が遥たちを巻き込もうとした瞬間。


「おりゃ!」


 ジャンの竜巻をダメージから回復したマリー王女が斧で受けた。


「すまない。遥、もう大丈夫だ!」


「マリーさん!」


 マリー王女の斧とジャンの竜巻が拮抗する。しかし、だんだんとマリー王女が後退りしていく。


「く、くそ。どうやら、遥の風魔法を吸収したおかげでジャンのスキル、威力が上がっているようだ」


 マリー王女の斧を持つ手が震えている。


「ぐあ!」


 竜巻にマリー王女は吹っ飛ばされ、思いっきり地面に叩きつけられる。


 そのダメージでマリー王女は起き上がれないようだ。苦しそうに唸っている。


「マリーさん!」


 遥がマリー王女の元へ駆け寄る。すると、目の前にジャンの竜巻が立ちはだかる。


「はっ!」


 今度は自分が襲われる。遥はそう思った。しかし、竜巻は宙を漂っているだけで襲ってこない。


「神風よ。戻れ!」


 まるで生きているようだ、ジャンの言葉に竜巻が従うと彼の元へ戻り、ジャンを中心にグルグルと回る。


「さあ、次は君だよ。姫野遥」


 ジャンがニヤリと口角をあげる。


「いいわ、おじさん、来なさい」


 遥がジャンを睨みつける。


「フッ、マリー王女の助けもなしに私と戦おうというのかね。いくら君でも一対一で私と戦うにはレベルが低すぎる。悪いがこの間みたく奇襲で逃げるなんてさせないよ」


 ジャンの言葉に今度は遥がフッと口角を上げた。


「ええ、一対一よ、おじさん。それに私、別に逃げないわよ。今日はちゃんとおじさんを倒すから覚悟してね」


「ほう、面白い、なら倒してみせろ。行け!神風」


 ジャンが命じると竜巻は遥に向かって飛んでいく。


「アイスランス!」


 遥が魔法を放つと大きな氷柱が竜巻に向かって飛んでいく。しかし、遥が放った氷柱はジャンの竜巻が簡単に粉々にしてしまう。そして、竜巻は遥を襲う。


「アジェリエンダー!」


 スピードアップの魔法を唱えると遥は竜巻から逃げ始める。


「無駄だ、いくら素早さを上げても今の君のレベルでは限界がある。私の竜巻はどこまで君を追いかけていくぞ」


 しばらく、遥とジャンの竜巻の追いかけっこが続く。しかし、ジャンの言う通り、竜巻は遥を捉えた。


「きゃあ!」


 竜巻に飛ばされる遥、彼女はマリー王女と同じようにグルグルと回転しながら地面に叩きつけられようとしていた。が、遥は素早く魔法を詠唱した。


「ヴァンサイクロン!」


 遥は叩きつけれようとした地面に向かって風魔法を放った、しかし、それで衝撃を和らげようとした。だが、多少、ダメージを軽減できたが、ジャンの竜巻の威力は凄まじくドンと大きな音がすると遥は地面に叩きつけれた。


「あ、ああ…… い、痛い……」

 

 遥は苦痛に顔歪ませながらヨロヨロと立ち上がった。


「なるほど、上出来、上出来、風魔法で地面に激突する衝撃を和らげようとしたのか。だが、その程度の風魔法じゃあ、完全に衝撃を殺すことなどできない。次の攻撃で終わりだ。神風よ戻れ!」


 竜巻がジャンの元に戻ると先ほどのように彼を中心にしてグルグルと回る。


 そして、ジャンは再度、遥に向かって攻撃をしようと手を前方にかざした。


 が、その瞬間、遥が魔法を発動した。


「ヴァンサイクロン!」


 遥の両手から小型の竜巻は飛び出し、ジャンに向かっていく。そしてジャンの竜巻とぶつかり合う。


「ハハハ、何をやっている、その風魔法は効かないどころ私のスキルをパワーアップさせるだけだぞ。苦し紛れの攻撃か。神風よ、その竜巻を吸収しろ!」


 ジャンの竜巻が遥の竜巻を吸収していく。


「ハハハハ、残念、君の魔法では私を倒すどころか私の力を強めてくれる。これで勝負は決まったな」


 ジャンは勝ち誇った顔をしていた。が、その顔が一瞬で凍りついた。


「残念なのはおじさんの方よ。私の詠唱の早さを忘れたの?」


「なに!」


 なんと驚くことに遥の風魔法のすぐ後にボーリングの玉ほどの大きさをした火の玉が飛んできた。

  

 その火の玉は遥の竜巻と一緒にジャンの竜巻に吸収されたいく。


 すると、ジャンの周りをグルグル回っていた竜巻が炎を纏った竜巻に変化した。


「なんだと!」


 炎をすぐに中心にいるジャンに燃え移る。


「おおおおお !」


 どうやらジャンの全身に火が燃え移ったようだ。苦しさに流石のジャンも悲鳴をあげる。


 その姿を遥は冷ややかに見ている。


「さっき、マリーさんを襲った竜巻が私に攻撃しないでおじさんの元に戻った時にピンと来たの。あの時、なぜ私を攻撃しなかったか、おそらくSPが切れそうになったのね。だから、一度おじさんの所に戻ってSPを補充しないといけなかった。そこで私は考えたの、竜巻のSPが切れるまで逃げ回って、そしてSPが切れそうになっておじさんの元に戻った時を狙って風魔法を放とうってね。そうすれば必ず、私の風魔法を吸収するだろうって読んでた。そして同時に火魔法を放てばそれも一緒に吸収してしまうはずだって思ったのよ。ふふ、どうやら正解だったようね」


 ジャンは苦しそうな顔で手を伸びしながら遥を近づいていく。だが、遥にたどり着く前に力尽きたのかバタッと倒れた。


 遥は先ほど同様、冷めた目でジャンを見ていた。


「勝負はついたわ。さようならおじさん」


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