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第九話


 僕は飛び上がりながら剣を振りかぶる。そしてリカルダに向かって剣を振り下ろした。ヒュンと風を切る音がひびくと剣はリカルダの眉間に直撃した…… と思ったが手応えを感じない。


 どうやら彼女は僕の剣を紙一重で躱したようだ。斬ったのはリカルダの残像だった。

 

 僕は彼女を見失う。


 ヤバイ!


 そう思ったが、時すでに遅し、右わき腹に激痛が走る。


「ぐあっ!」


 どうやらリカルダの横蹴りが僕の腹にヒットしたようだ。僕は思いっきり吹っ飛んだ。



「う、うう……」


 結構、重い蹴りを放つじゃないか…… 僕はヨロヨロと立ち上がる。


「クッ なかなかやるな、お姉さん」


 僕は肩で息をしながらも剣を構える。だが、剣を握る手が震えていた。さっきの一撃が効いてるようだ。

 

 その僕の姿を見てチャンスと見たのか、リカルダは魔法の詠唱を始めた。それを見た僕も咄嗟に魔法の詠唱を始める。


「喰らいなさい!氷柱槍アイスランス


烈火弾レイジングブレッド


 僕とリカルダは同時に魔法を放つ。


 魔法の火の玉と氷柱がぶつかり合うと大きな衝撃音が聞こえた。すると僕の放った火の玉は蒸発しまった。しかし、リカルダが放った氷柱も溶けて無くなる。


「ふーん、なかなか強力な火魔法だね」


 どうやら攻撃魔法は互角のようだ…… だが、あの女には『魔粘糸まねんし』がある。あれはかなり厄介だ。やっぱりこのままじゃあ勝てないか。仕方がない…… あれ(・・)を使うか。


 僕は震える手を抑えるように剣の柄をギュッと握ると気合いを入れながらリカルダに向かっていった。


「うおおおおお」


 僕の必死な形相を見て、リカルダはクスッっと笑うと右手を僕の方へ向け魔法を詠唱する。


「喰らいなさい、魔粘糸まねんし!」


 リカルダが魔法を発動すると無数の糸が襲いかかる。僕は剣でそれを受け止めると先ほど同様、糸が剣にくっついて離れない。


 僕は剣を離さないように柄をしっかり握るがやはり彼女の方が力が強い、僕は体ごと引きづられる。


「フフ、どうやら力は私の方が上みたいね。でも、さっきみたいに突然離されるのは勘弁だわ。だからこうしましょう」


 リカルダがそう言いながら右手を上げると、剣が手から離れ上方へと飛んでいく。


「くそ!」


 なるほど、後ろへ引っ張ると突然、手を離された場合、後ろにひっくり返るが上方へ引っ張れば例え離されてもひっくり返ることはない…… だから、手を離される心配をせずに思いっきり引っ張ることが出来るってわけか。う〜ん…… 彼女、頭がいいな。


 剣を奪われてしまったが僕は諦めずリカルダに向かって突進していく。それを見て彼女は笑った。


「あはは、坊や。武器もないのに突進してきて何が出来るの。破れかぶれは通用しないわよ」


 リカルダは勝ち誇ったような表情で僕を見る、そして攻撃魔法を発動しようと左手を僕の方に向けた。


「これで終わりよ「氷柱……」」


 リカルダは詠唱を終え、水魔法を僕に放とうとする。だがその瞬間、彼女は驚愕の表情で顔で僕を見る。


 僕はリカルダが魔法を発動するよりも速いスピードで動き彼女の懐に入りそしてそのまま右手を水平に動かすとリカルダの脇を通り抜けた。


「な、なにが起きたの?」


 リカルダは後ろを振り向き僕を見る。と、同時に脇腹から大量の血を吹き出した。


「ど、どうしたリカルダ!」


 頭が大声を上げる。リカルダは脇腹を抑えその場に崩れ落ちた。


「ぼ、坊や…… 何をやったの」


 僕はニヤリと口角を上げると右手に持っている凶々しい形をした短剣をリカルダに見せた。その短剣を見てリカルダは驚きのあまり目を見開くと震えながら呟く。


「そ、それは…… 呪いの短剣」


「おお、さすが知っていたか。そうこれは呪いの短剣。この短剣を装備すると、攻撃力、力、スピード。三つのステータスが倍以上に上昇する。優れた武器さ! だがしかし、この短剣で敵を攻撃すると…… 敵に与えた三分の一のダメージが自分に返る」


 僕がそういった瞬間、僕の脇腹から血が吹き出した。それを見て姫野さんが悲鳴を上げる。


「きゃあ! 大丈夫。黒羽くん」


「大丈夫、姫野さん」


 僕はすぐさまポケットから回復薬を取り出してそれを飲み干す。


「よし!」


 回復薬を飲んだ瞬間、脇腹の出血が止まる。そして怪我が治ったと同時に僕はリカルダの元に走ると彼女を立たせ彼女の首元に短剣を当てる。


「おい、お頭さん。動くなよ。動いたらこの女の首を掻っ切るぞ」


 僕はリカルダを人質にする事には成功した。頭は悔しそうな顔で僕達を見ている。


「貴様、ただじゃすまねえぞ!」


 ものすごい形相で僕を見るが構わず頭に命令する。


「いいから下がれ」


 頭はしばらく動かなかったが諦めたようでゆっくりと後ろに下がっていく。それを見て部下の一人が叫んだ。


「頭! いいんですか?」


「うるせー! 黙って言う通りにしろ!」


 頭が鬼のような形相で睨むとスゴスゴと部下は後ろに下がった。


 僕はすぐさま、自分の馬にリカルダと姫野さんを乗せるとその場から颯爽と立ち去った。


 

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