第十話
僕は馬を走らせながら後ろを確認する。どうやら、頭たちは追ってこないようだ。僕はホッと胸をなで下ろすと前にいるリカルダを見る。彼女は脇腹の傷が痛むようだ、意識を失いかけている。
「おい、リカルダさんよ。ちょっとでも怪しい動きをしたら殺すがが大人しくしてれば傷を治してやる。どうだ?」
僕の提案にリカルダは苦しそうに無言で頷く。僕は後ろに乗っている姫野さんに声をかけた。
「姫野さん、ごめん。今、リカルダの傷を治すために回復魔法を使うからその間、後ろからさっきの奴らが追ってこないか見ててくれる?」
姫野さんは先ほどの心配した表情は消え、笑顔で答える。
「うん!任せて!」
僕は笑顔の姫野さんを見てとりあず安心すると、リカルダの傷を癒すために魔法を詠唱する。
「回復」
回復魔法で傷を治ったリカルダは意識がはっきりしてきた。
「ふう、一時はどうなるかと思ったわ。ありがとう坊や。優しいのね」
「ふっ、あんたは大事な人質だからな。殺したりしないさ」
僕は軽口を言いながらもリカルダが反撃してこないかしっかり見張っていた。
「坊や、人質なんてとっても無駄よ。頭はそんな甘い人じゃないわ。私のことなんて何とも思ってない。だからすぐにあなたを探して始末するわよ」
「…… それはどうかな?」
リカルダは僕の言葉に目を瞑りながら頭を振った。
「さ、そろそろ、カスドルに着く頃だ」
僕がそう言うとすぐにカスドルの町が見えた。僕は馬のスピードを上げる。
「着いたよ、姫野さん」
まず僕が最初に馬から降りると次に姫野さんを馬から降ろす。そして最後にリカルダを降ろした。
「あんたにはこれをつけてもらうよ」
僕は馬の腰につけてあるバッグからロープを取り出すとリカルダの両腕を後ろに縛った。
「よ、よし、これでいい。このロープはただのロープじゃない。魔法のロープだ。これに縛られたものは魔法を使うことができない。だから無駄な抵抗はするなよ」
リカルダの動きを封じたことに安心した僕はその場に片膝を着いた。
「う、うう……」
僕の苦しそうな顔を見て姫野さんは驚いた顔で声をかけた。
「黒羽くん、大丈夫?」
姫野さんが心配そうに僕の肩に手を置く。
「あ、ああ。心配ないよ」
僕の苦しそうな姿を見てリカルダが微笑む。
「大丈夫なわけないわよ。お嬢ちゃん、坊やはね、あの「呪いの短剣」を使ったのよ。今、坊やの体は呪いの効果で身体中に激痛が走っているはず」
「そ、そんな。黒羽くん! しっかりして…… 私、どうしたいいの」
慌てる姫野さんを見て、僕は苦しさをなんとか抑え声を掛ける。
「だ、大丈夫、姫野さん、手は打ってある。この先に教会がある。そこで呪いを解いてもらうよ」
その言葉に姫野さんは安堵の表情を浮かべた。だが、リカルダは大声で笑い出した。
「ハハハハハ、馬鹿ね。この町の教会で呪いを解くにはかなりの金額のお金が必要よ。慈善事業で呪いの解除なんてしないわ」
「そ、そうなの? 黒羽くん」
半ば泣きそうな顔で心配する姫野さん。だが、僕は動じる事なく答えた。
「大丈夫、とにかく教会に行こう」
僕は激痛を耐え、起き上がると3人で教会に向かった。




