第八十二話
「残りのウィザードは三匹か…… マリーさん。思ってたより手間取っているな」
僕は正直、マリー王女ならとっくにウィザードを全滅させていると思っていたので不思議に思った。
「ごめんなさい。黒羽くん。ウィザードの動きが思ってよりも早くて私がその動きに翻弄されちゃった…… だから、そのせいで私を庇いながら戦っていたマリー王女は思うように戦えなかったの」
なるほど、姫野さんを仲間にしてから何度も一緒に戦ったが、彼女の戦闘センスはなかなかだ。しかし、ウィザードは上級魔物だ、並みの敵ではない。しかも魔法使いなのにその動きは武闘家のように素早い。
それに加えて魔法使い同士の戦いというのはお互い魔法耐性があるせいで結構、戦いにくいもんだ。その魔法耐性を持った敵が四体もいたんじゃ戦いにくいだろう。
でもまあ、見た所マリー王女も姫野さんもさほどダメージは受けてない。それはきっとマリー王女のおかげだろう。彼女がいなかったらもっと大変なことになっていたに違いない。
「大丈夫よ。遥、だんだんとあなた、戦い慣れてきてる。この短時間で苦手なタイプの敵とちゃんと戦えるようになるなんて。あなたセンスあるわよ」
どうやら、マリー王女も姫野さんの戦闘センスに気づいたようだ。
「まあ、僕が助っ人にきたからもっと楽になるよ。とっとと倒してしまおう!」
「うん!」
「ああ」
二人が頷くと僕たちは互いに背を合わせウィザードに挑む。
三人で戦えば大丈夫だろう。問題は僕らより、水口さんとエリノルさんだ。正直、あの二人に任せて大丈夫だったのだろうか?
チラッと二人を見たがなんとか戦っているようだ。僕は少しホッとした。
「よし、姫野さん。さっきレベルが上がった時にマジックバリアにポイントを振ったかい?」
「ええ、レベル1になって使えるようになったわ。もう、マリーさんにもかけてある」
「そうか、それは単体の魔法だから、僕にもかけてくれ」
「わかった。マジックバリア!」
姫野さんが魔法を発動すると僕の体が一瞬、紫色と赤色のオーラに包まれる。
おっと、姫野さんの状態強化魔法には攻撃力上昇のバフが付与されてるんだった。
マジックバリアで魔法の防御力が上がったが同時に攻撃力も上がった。
「おし! それじゃあ、マリーさん。あなたは敵を引きつけてくれ!」
「了解!」
マリー王女が敵に突っ込んでいくと三体のウィザードが火の上位魔法『烈焔弾』を同時に放つ。
「姫野さん! 今だ!」
僕が合図すると姫野さんは『氷柱槍』を放つ。魔法の氷柱は一体のウィザードの手に当たる。すると、マリー王女に向けて魔法を放とうとしたウィザードの手が明後日の方を向く。そのせいでウィザードの火魔法も明後日の方向へと飛んでいった。
しかし、残り二体の火魔法はマリー王女に向かってく。が、マリー王女はその二つの火の玉を斧で力一杯ブン殴る。
ドカン!と大きな音がなると二つの火の玉は蒸発して消えていく。
「サンキュー! 遥! 流石に上位魔法を一度に叩き落とすのは二つが限界だからね。助かった」
「今度は僕の番だ! バーニングブレスト!」
僕がスキルを発動するともう一度、火魔法を放とうと詠唱中のウィザードに向かっていく。だが、光刃はあっさり避けれれてしまった。
「くそ!」
ウィザード、やはり動きは早い。遠距離攻撃のスキルは簡単に避けれれてしまう。仕方がない。僕はウィザードに向かって走り出した。
「どりゃ!」
飛び上がりながら僕は剣を振り下ろす。しかし、ウィザードはスイッとその素早い動きでかわした。
あららら、ダメかよ……
しかし、僕は諦めずさらに畳み掛けるように攻撃した。だが、その攻撃を全てかわされてします。
ちくしょう。やはり、マリー王女のように素早く動けるタイプじゃないと駄目かぁ…… 意気消沈しながらも僕は攻撃を繰り出していく。だが突如、ウィザードが胴体から血を吹き出した。
ウォォォン
ウィザードは悲鳴を上げる。
あれ? もしかして俺の攻撃当たってた? 手応えなかったけど…… 僕はなぜ突然、ウィザードが血を流したかわからなかったが、とりあえずこのチャンスを逃してはまずい。咄嗟にマリー王女に声をかける。
「マリーさん! 任せた! トドメを!」
「了解だ! 黒羽!」
マリー王女は大きく飛び上がるとウィザードを斧で斬りつけた。
そして、ブシャッーーと血が吹き出る音が聞こえるとウィザードは蒸発して消えていく。
「よし、この調子だ」
僕らはこの要領で残りの二体を攻撃する。ウィザードは上位魔法を駆使する強敵だったがダメージを受けながらもなんとか全滅することができた。
「やったね、黒羽くん。またレベルが上がったよ」
「ああ、僕もだ」
「的確な指示助かったぞ。黒羽」
そう言いながらマリー王女が僕と姫野さんの元へとやってきた。残りはオーク一体のみだ。僕はルイさんとエリノルの方を見た。




