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第八十一話


「エリノルさん。正気に戻ってください」


 ルイがエリノルに声をかけるが彼女は聞く耳を持たない。ウィザードの魔法で混乱したエリノルの剣がルイに襲いかかる。


「は、速い……」


 唐竹、切り上げ、袈裟、右切上、逆袈裟、左切上、左薙、右薙と目にも留まらぬエリノルの連続攻撃がルイに次々と繰り出される。


「この人、こんなに強かったの……」


 ルイは辛うじてその攻撃を双剣で受ける。彼女はエリノルの思わぬ強さに苦戦していた。


(まずい、本気で戦わないと私がやられる……)


 目をカッと見開くと受け身から一転、ルイは攻め始めた。


「タァ!」


 ルイの氷焔の双剣とエリノルの退魔剣がものすごい速さでぶつかり合うとあちこちで火花が散る。


(……剣の腕は…… 互角か……)


 一進一退の攻防が続く中、エリノルが突如、スキルを発動した。


「バーニングブレスト!」


 退魔剣から光の刃が飛び出してくる。しかし、ルイも負けてはいない。彼女も同時にスキルを発動した。


「ダークスティンガー!」


 ルイの氷焔の双剣から無数の黒い短剣の形をしたエネルギーが飛び出した。


 エリノルのスキルとルイのスキルがぶつかり合う。しばらくお互い拮抗しあい綱引きのように右、左と動いていた。が、どうやらこの勝負はルイに軍配が上がったようだ。


 バキン!という音が聞こえるとエリノルの光刃が粉々になる。そして黒い無数の短剣がエリノルを襲う。


「きゃああ」


 ルイのスキルで吹っ飛ぶエリノルだが、すぐに立ち上がり回復魔法を自身にかける。


「プロテクト!」


 エリノルが防御強化魔法を発動すると体が一瞬、土色のオーラに包まれる。


「アジェリンター!」


 今度はルイが自身に敏捷強化魔法をかける。ルイの体が緑色のオーラに包まれる。そしてすぐに赤いにオーラに包まれた。


 ルイのバッファーの能力だ。彼女が状態強化魔法を発動すると攻撃力UPのバフがかかる。


「はぁぁぁぁ!!」


「はぁぁぁぁ!!」


 エリノルとルイが再び、剣で攻撃を開始する。またも互いの剣がぶつかり合い火花が散る。だが、今度はスピードが上がり攻撃力も上がったルイが押す。


 しかし、防御力が上がったエリノルは多少被弾しても構わずに攻撃してくる。


(クッ…… これじゃあ。キリがない。どしたらいいの……)


 ルイは一旦、エリノルから距離を取ると、どうしたらよいかわからず叫んだ。


「黒羽殿。このままじゃあ埒があきません。何か良い策はありませんか!」


 龍斗の方を見ると、どうやらオークを一体倒したようだ。彼は残りの一体と戦っていたが、ルイの声を聞いてこちらを向くとルイに頷いてみせた。


「ルイさん。ちょっと待っててくれ!」


 そう言うと龍斗は突然、オークの攻撃を側宙で避けると、魔法を発動し火魔法をオークにぶつけた。火魔法をぶつけられたオークはヨロヨロと後ずさるとそのまま後方へ倒れる。それを見て龍斗はクルリと背を向け走り出した。


(何をする気だ!)


 ルイは剣をエリノルに向けながら龍斗の動きを追った。どうやらマリー王女の元へと向かったようだ。龍斗はマリー王女に声をかけた。


「マリーさん。エリノルさんに混乱の魔法をかけたウィザードを優先的に倒すんだ。そいつを倒しちまえば、エリノルさんの魔法は解ける」


「了解!」


 龍斗、マリー王女、遥の三人が一体のウィザードに襲いかかる。最初は龍斗がウィザードに攻撃を仕掛けた。しかしウィザードの動きは早く龍斗の攻撃を難なくかわしている。だがそれは囮のようだ。龍斗は上手くマリー王女が攻撃しやすいようウィザードを誘導していた。しばらくするとマリー王女がトドメを刺していた。


 ウォォォォン!!!


 マリー王女に斬られたウィザードの悲鳴がここまで聞こえた。


 (やったか!)


 ルイはエリノルの方を見た。彼女は糸が切れたマリオネットのようにその場に崩れ落ちる。


「エリノルさん! 大丈夫ですか!」


 エリノルの元に駆け寄るとルイは彼女を上体を起こした。


「ん…… わ、私は何を……」


「よかった。魔法が解けたんだですね。あなたはウィザードに混乱の魔法を掛けられていたんですよ」


「え、そ、そんな。私、また皆さんの足を引っ張ってしまったんですね…… すみません」


 エリノルが恐縮して謝った。


「いいのよ。それよりマリー王女たちを助けに行きましょう」


 ルイがエリノルを立ち上がせると、龍斗が大声でこちらに向かって叫んだ。


「ルイさん!エリノルさん! こっちは三人で大丈夫だ! それよりも二人でオークを倒してくれ! そいつを絶対、こちらに近づけさせないでくれ! こっちはウィザードで精一杯だ!」


「え! 私たち二人で! む、無理です…… 私では足手まといです」


 エリノルが自信なさげに目を伏せる。しかし、そんなエリノルをルイは叱咤する。


「何言ってるの! やるのよ! 大丈夫。きっと私たちなら勝てるわ! 私、あなたを信じてる」


「水口さん……」


 ルイに励まされエリノルは拳を握りキッと鋭い目つきになる。


「わ、わかりました。先ほどの汚名を挽回するためにも…… 私、やります!」


「ありがとう。それじゃあ! 行くわよ!」


 ルイとエリノルは剣を構えるとオークに向かって走り出した。

 

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