第七十一話
「なんてこった。まさか、もう僕達の事を嗅ぎつけていたなんて……」
姫野さんがギルドの依頼でキグラシ草原に行った際、敵に襲われた話を聞いてその行動の早さに驚きを隠せなかった。
「ちょっと待って、姫野さん。あなたその襲ってきた男の名前、確かにジャン・ドラットルって名乗ったの?」
僕以上に驚いた顔をしたマリー王女が姫野さんに質問をする。
「はい、確かにそう名乗ってました」
「マリー王女。その名前に心当たりがあるのか?」
僕が聞くとマリー王女は顔を強張らせながら頷いた。
「ええ、生きていながらにして伝説と呼ばれている殺し屋よ。ジャンが殺してきた人間は三百人は超える。あの男に狙われて生き延びられた人間は過去に一人しかいないわ」
「そんな恐ろしい殺し屋が僕らを狙っているのか。しかし、そのジャンって奴にも殺せなかった人間がいるのか?」
「ええ、それは私よ」
「なに!」
「あいつは一度、城に侵入して私を暗殺しようとしたのよ。だけど、私とルイでなんとか撃退することができたの。正直、私一人だったら殺されていたわ。それぐらいのやつよ。あなた達悪いことは言わない、この国じゃないどこか遠くの国に逃げるのよ。お金がなければ私が工面してあげるから」
なんて事だ。そんな凄い殺し屋が僕達の命を狙っているのか…… 確かに今の僕達ではそいつには勝てない。
だが……
「逃げるなんてダメです。リカルダさんを助けないと!私たちは絶対に逃げません!」
僕が悩んでいると姫野さんが代りに答えた。
やっぱりな…… 姫野さんならそう言うと思った。
「ひ、姫野さん…… あなた、確かに一人でジャンから逃げ切ったのは凄いとは思うわ。でも、あいつの強さは身に染みてわかっているでしょ?」
マリー王女が何度も必死に説得するが姫野さんは首を縦に振らない。結局、彼女の意思の強さに根負けしたマリー王女は説得を諦めた。
「わ、わかったわ。だけど、今のままで絶対ジャンには勝てないわよ」
「大丈夫です。黒羽くんがいますから!」
え!僕? いやいや、そんな期待されても…… 多分、今の僕では勝てないと思うよ。そう、心の中で思っているとマリー往生が目を細め、訝しげな顔で僕を見ていた。
「こいつ? こんな弱っちい奴が頼りになんの?」
弱っちいだとぉ!失礼な!あんたに城でやられたのは油断したからだ。と、マリー王女に心の中で抗議した。
「大丈夫です! 黒羽くんは勇者の生まれ変わりですから!」
「え? 勇者の生まれ変わり? どう言う事?」
「いやいやいや、何でもないですよ。マリー王女、ね! 姫野さん!」
僕は慌てて誤魔化した。マリー王女は不思議そうな顔でこちらを見ていたがすぐにどうでもいいという顔になって話始めた
「とにかく、装備だけでも、もう少しマシな物にしないとね、お金は私が出してあげるからこれから武器屋に生きましょう」
「え! いいんですか!」
「ええ、今日から私はあなた達の仲間ですからね。当然よ」
「ありがとうございます!」
姫野さんと僕はマリー王女に俺を言うと早速、武器屋に向かった。




