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第六十二話


「な、なんだって? 悪いけどもう一度言ってもらえます」


 僕は宿屋の受付にいる女性にさっき言った事をもう一度言ってもらうよう頼んだ。受付の女性はため息をつくとめんどくさそうに先ほどと同じ事を言う。


「ですから、今日中に宿代を払って頂けないと明日には出て行ってもらうことになります」


「え、え、えええ!う、嘘だよぉ。確かまだあと二日ほどの宿代は事前に払っていたはずだったよ」


 年齢は50代ぐらいだろうか、受付の女性はまたため息をつくと呆れた顔で僕を見る。


「いや、ですから、先ほども言いましたが宿代は値上がりしたんです。なので今日中にお二人合わせて200ゴールド払っていただきます。出ないと何度も言いましたが明日には出て行ってもらいますよ」


「いやいや、おかしい。何でいきなり値上げ? それにいくら値上げって言ってもいきなり宿代が3倍になるなんてボッタクリすぎだろう!」


 僕は何度も抗議したが女性は頑として譲らず、結

局、今日中に宿代を払わなくてならない事になった。


う〜ん、ここに来て宿代の値上げは参った。ってか他の客はちゃんと払えているのだろうか‥


とりあえず仕方がないので僕は一旦部屋に戻った。そして部屋の扉を開けると姫野さんが心配そうな顔で僕の帰りを待っていた。


 僕は正直に先ほどの受付の女性とのやり取りを姫野さんに話す。


「と言うわけで参ったよ。やっぱりだめだっった」


「う〜ん、困ったわね。やっぱりギルドで依頼を受けてくるしかないんじゃない?」


「そうなんだけど、早く山賊と一緒に人身売買をしていた王国の人間の情報を集めないと、まずい事になるかもしれない…… ギルドで聞いた話なんだけど、どうやら山賊たちの村が火事で全焼したらしい。おそらくリカルダが証拠を消すためにやったんだろうけど、でもきっとそれを誰がやったのか奴らは血眼になって探すはずだ。だから一刻早く情報を収集しないと、いつそいつらが僕達にたどり着くかわからない」


「……そっか、そうだよね。でも、宿代を払わないと明日にはここを出ないと行けなくなるわけでしょ?」


「う、うん、そうだけど、どうしたらいいのかなぁ」


 僕がいい解決方法がないか考えていると。突然、姫野さんが何かを思いついたようでパチンと右手の握りこぶしを左の手のひらに当てた。


「そうだ、黒羽くん、君は王国に侵入して情報を集めてきて。その間、私がギルドの依頼を受けてお金を稼いでくるから」


 姫野さんの提案に僕は飛び上がるほどびっくりする。


「そ、そんな。だめだよ! 姫野さん一人でギルドの依頼を受けるなんて危険すぎる!」


「大丈夫!私のレベルは結構上がったんだから一人で出来るわよ」


 そんな危険な事はさせられないと何度も説得したが姫野さんは頑として譲らず最後は僕が折れるしかなかった。


「わかった。でも、危険だと思ったらすぐにその場から逃げるように。命あっての物種だからね!」


「うん。大丈夫」


 姫野さんは自信たっぷりで頷く。だが、僕の心配は消えなかった。


「そうだ! これを渡しておくよ」


 僕はバッグから昨日、クレアさんからもらった『戻りの宝玉』を姫野さんに渡した。


 とりあえず、これがあれば何かあった時、たとえ戦闘中でも瞬間移動して逃げることが出来る。よかったクレアさんから貰っておいて。


「ありがとう。もし何かあったら使うね!」


 僕は何かがない事を心の底から祈った。そして早速、姫野さんはギルドに向かうため部屋を出る。僕は慌ててその後を追って宿屋を出た。


「それじゃあ。本当に気をつけて」


「うん、ありがとう黒羽くんも気をつけてね」


「ああ」


 僕が返事をすると姫野さんはギルドの方へと歩き出した。僕はその後ろ姿を心配そうに見送った。


「姫野さん、大丈夫かな……」


 姫野さんの姿はあっという間に見えなると僕は後を追いかけたい衝動にかられたがその気持ちをグッと抑え意を決してイスカグラン城へと向かった。

読んでいただきありがとうございます。少しでも面白いと思っていただけたら幸いです。あとブックマークと評価をしていただけるたらめちゃくちゃ嬉しいです!

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