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第五十八話


「うおおおおお! 『バーニングブレスト』!」


 僕がスキルを放つと剣から光の刃が飛び出しルガトに向かっていく。しかし、光刃はルガトの体を素通りした。


「くそ! ルガトのスキル『ミストスモーク』か!」


 『ミストスモーク』は攻撃を受けた瞬間、体が霧状になる事によってダメージを受けなくなるという無敵のスキルだ。だが、その無敵のスキルも攻撃は三度まで。それ以上は霧状になって攻撃を避ける事はできない。


「クレアさん! トラッキングアローで攻撃してくれ!」


「はい! 了解です!『追跡弓矢トラッキングアロー!」


 クレアさんが放った矢がルガトに襲いかかる。


「フフ、小癪な」


 ルガトは余裕でその矢を躱していく。しかし、躱すルガトを追撃するように姫野さんが火魔法を放つ。


烈火弾レジングブレッド!」


 連続して放たれる火の玉と矢の攻撃を避け続けるのは流石に難しいようでルガトは残り二度の攻撃を霧状になって躱した。


「よし!! もう奴は『ミストスモーク』で攻撃を避ける事はできない。今がチャンスだ!」


 僕はすぐさま剣でルガトの右側から左側へ水平に斬る。


「ぐおっ!!」


 ルガトは咄嗟に僕の剣を避けようとするが避けきれなかったようだ。剣がルガトの右腕を切り裂く。するとボッという音を立て右腕は宙に飛んだ。僕はすかさず脳天めがけて唐竹を放つ。しかし、ルガトはそれを紙一重で躱した。


「はぁはぁはぁ。き、貴様らぁ」


 ルガトは肩で息をしながらも怒りに満ちた目で僕を見る。


 フッ、いいぞ。押している。このままいけば奴を倒せる! これは姫野さんとクレアさんのおかげだ。彼女らはレベル以上の働きをしている。二人は常にルガトの動きを予測しながら攻撃していてそれが功を奏している。


「二人ともナイスだ、このままの調子でいくぞ!」


 僕はここぞとばかりに斬りかかる。


「小僧!ナメるな!『ミストスモーク』!」


 ルガトがスキルを発動するが僕は恐れずに向かっていく。あの二人のサポートがあれば『ミストスモーク』は怖くない。


「どりゃ!!」


 先ほど同様、僕と姫野さんクレアさんの三位一体で攻撃を仕掛ける。


「ぐ…… き、貴様。小僧! お前、知っているな! 私の種族の得意スキルとその戦い方を!」


 どうやら僕が自分と同じ種族と戦った経験がある事を理解したようだ。ルガトの目に先ほどの余裕はない。完全に本気モードになっている。


「おおおお!!」


 ルガトが左右の爪を僕に向けて交互に振り下ろす。僕はそれを剣で受けながら後ろに下がった。


「くそ! は、速い!」


「ククク、どうした、どうした! 逃げるのが精一杯だな!」


 やはり、正面から戦えばルガトの方が分がある。僕はその勢いに押されてします。だが、すぐに姫野さんの火魔法が飛んでくる。


 ボン!という音が鳴ると火の玉がルガトに直撃した。が、ルガトはそれを霧状になり回避する。そして続けざまにクレアさんの矢が飛んできた。すると、またもルガトに直撃する。しかし。それも霧状になって回避した。


 僕はすぐさま矢継ぎ早に袈裟、右切上、逆袈裟、左切上と斬り込んでいく。そして最後の攻撃がルガトを捉えた。これで三度、攻撃を当てたことになる。次は『ミストスモーク』で逃げる事はできない。


「これで終わりだ!」


 一旦、膝を曲げ僕は大きく飛び上がるとルガトの脳天に向かって唐竹を放つ!


 僕は素早く剣を振り下ろすと鋼の剣がルガトの脳天をカチ割る瞬間が見えた。


「やった!」


 しかし、それは僕の勘違いだった。なんと驚くことにルガトは僕の攻撃を霧状になって避けたのだった。


「な、なに!」


 僕は一瞬、何が起きたのかわからなかった。なぜだ!『ミストスモーク』は攻撃を三度までしか避けられないのに! 僕がその事を不思議に思っていると、ルガトが左腕を振り上げそして思いっきり振り下ろした。


「ぐあ!」


 振り下ろした爪は僕の両腕を切り裂く。僕はあまりの激痛に両膝を地面についた。


「ククク、貴様、何故『ミストスモーク』が攻撃を四度、躱すことができたのか不思議に思っているようだな。だが、その理由をわからないままお前は死ぬんだ。残念だったな」


 そういうとルガトは左腕を上げた。


「黒羽くん!」


 姫野さんが咄嗟に魔法を詠唱する。それと同時にクレアさんも弓を引いた。だが、間に合いそうもない。


「ククク、もう遅い! 油断した自分を呪え!」


 ルガトは満面の笑みを浮かべながら右腕を振り下ろした。


 くそ!終わりだ! 僕は思わず目をつぶった。


「きゃあ!」


「黒羽さん!」


 姫野さんが悲鳴をあげ、クレアさんが僕の名を叫ぶ。終わった、僕は目を閉じ自分の死を悟った。だが、そのとき、ベネディクト神父の呑気な声が聞こえた。




「やれやれ全く、龍斗、これは貸しだぞ」




 僕はその声に驚き閉じていた目を開け目の前を見ると思わず叫んだ。


「えええええ!」


 なんと僕の目の前にベネディクト神父が立っていた。そして神父はルガトの左手首を掴んで僕への攻撃を阻止していた。ルガトは必死な形相でその手を振りほどこうとしている。だが、神父の力が強いのかビクともしない。


「な、なんだ貴様! その力は!」


 ルガトは異常なまでの神父の力に驚愕している。


「大丈夫か。龍斗」


 ベネディクト神父はルガトの言葉を無視し僕の方を振り返った。


「え! し、神父…… な、なんだ!そ、その目は!」


 振り向いた神父を見て思わず素っ頓狂な声を出した。


「ああ、バレちまったか。いいか、この事は誰にも言うなよ」


 この緊迫した場面にあまりにもそぐわない屈託のない笑顔でそう言う神父の目は妖しく、そして蒼く光っていた。


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