第三十四話
「う、うう……」
僕が目を覚ますとエレンミアが不安げな顔で僕の顔を覗き込んでいる。
「龍斗、やっと目を覚ましたわね。ほんと、心配したわよ。大丈夫?」
「あ、ああ…… 回復魔法をかけてくれたのか。うん、大丈夫だ。心配かけたね」
おでこに手を置きながら起き上がると辺りはすっかり暗くなっていた。どうやら日が落ちて夜になっていたようだ。そして目の前には石の塔がそびえ立っていた。
「エレンミア、こ、ここは? 塔の屋上ではないよ……な」
僕が戸惑いながら聞くとエレンミアが呆れ顔で答えた。
「塔の屋上から昇降機を使って降りてきたのよ。ほら」
エレンミアが指をさした方を見ると塔の横に設置してある昇降機が見えた。
そ、そうか。屋上から降りれたんだな。よかった。
「って、事は君とリカルダもゴーレムを倒したって事か?」
「もちろん倒したわよ。当たり前でしょ」
エレンミアが腰に手を当て小さい胸をドンとそらせて自慢げに答えた。僕はそれを見て苦笑いをする。
「と、ところでリカルダと姫野さんは?」
僕は姫野さんとリカルダがいない事に気づいた。
「リカルダは逃げたわよ。「マジカルドラゴンフルーツ」を持ってね。その時、遥ちゃんを人質にして、結局、そのまま遥ちゃんを連れて行ってしまったわ」
「そ、そうか…… やはり、そうなったか…… ところででエレンミアお前これを狙って、僕に姫野さんも一緒に石の塔に連れて行けって言ったのか」
僕がそう言うとエレンミアはニヤッと口角をあげた。
「当たり前でしょ。あなた、どうやってリカルダに「マジカルドラゴンフルーツ」を奪われた形にしてそっから逃すつもりだったの。遥ちゃんを人質に取られたって風にしないと、簡単に逃したら逆に怪しまれたわよ」
「そうかそうだよな。いやーあんまり考えてなかった。ただ、あまり姫野さんを危険な目に合わせたくて……」
エレンミアはため息をつきながらも少し笑って僕を見ている。
そう、僕はリカルダを最初から逃すつもりだった。それに、「マジカルドラゴンフルーツ」を奪われるのも想定内だ。どうやらエレンミアは僕の真意に気がついていたようだ。流石だ。
だけど、この石の塔でリカルダと一緒に戦って彼女が少しずつ変わっていったのに僕は気づいた。そう、彼女と僕たちは仲間意識が芽生えたような気がしていた。だから、正直、この結末は少し悲しい気がする。
そんなことを考えているとエレンミアが僕の思っていることを察したのか優しい表情で話しかけてきた。
「まあ、リカルダにはリカルダの事情があるのよ。例え仲間が悪人だろうと簡単には裏切れないだと思うわ」
エレンミアの励ましの言葉に僕は無言で頷いた。
「さ、とりあえず。魔力と体力を回復しましょう。魔法の翼でカリウスに帰りましょう」
「ああ、そうだな」
エレンミアがバッグから魔法の翼を取り出し掲げると僕とエレンミアの体が光に包まれ一瞬で消えた。




