第三十一話
左右に動き僕はゴーレムを翻弄しながら攻撃を仕掛ける。
「おりゃ!」
僕は飛び上がりながら袈裟斬りを放つとゴーレムの肩から腰まで斜めに斬り込んだ。ゴーレムの体に僕の剣が擦り合わさると、キィィィンとまるで金属同士がぶつかり合うような音が聞こえた。
ゴーレムの体は岩そのものだが硬さは金属のそれだった。
「チィ やっぱ硬いな」
どうやらあまりダメージを与えてないようだ。ゴーレムは両手を握りそして大きく振りかぶるとそれを僕に向かって振り下ろした。
僕がそれを紙一重でかわすとゴーレムの両手は地面にぶつかる。ドンと大きな衝撃音が聞こえると地面がグラグラと揺れた。僕はその揺れにフラフラと体勢を崩すとその隙を見てゴーレムが必殺のアッパーカットを繰り出してくる。
ゴーレムのアッパーは非常に強力だ。かわすことができても繰り出されて衝撃で突風が起きる。僕はなんとかそのアッパーをかわしたが最初と同じくやはり突風に吹き飛ばされた。
「うお!」
飛ばされた僕はゴロゴロと地面を転がった。
「くそ!」
僕はすぐさま起き上がろうと地面に手をつき体を起こそうとすると自分の周りの白い物体が転がっているのに気づいた。
「これは?」
よく見るとそれは先ほどゴーレムの背中に突き刺さっていたリカルダの『魔刃糸』だった。
「リカルダの『魔刃糸』か…… 攻撃対象から抜け落ちても消えることはないのか。まだ、魔力が残ってるってことか」
僕はその『魔刃糸』を見てある事を思いついた。
よし、これなら行けるかも。僕はゆっくりと起き上がるとゴーレムはこちらに向かって来て攻撃を仕掛けてきた。
僕はそのゴーレムの攻撃をギリギリでかわすと何度もバク転しゴーレムから距離をとる。そしてリカルダの方を見る。彼女はまだ起き上がれず苦しそうにしていた。
「リカルダ。大丈夫?」
リカルダに声をかけると苦しいのか僕の方を見ながらブルブルと震えていた。僕は先ほどのリカルダの『魔刃糸』が転がっている所を指差す。
「リカルダ! あそこを見ろ! お前の放った糸の所だ!」
僕が指差した方角を不思議そうな顔でリカルダが見ると驚いて表情を浮かべた。
「そうだ。気づいたか。お前の糸に傷回復薬の瓶をくっつけてある。糸を操作して傷回復薬を自分の所に持ってくるんだ」
僕の真意に気づいたリカルダが口から血を吐きながらも右手を伸ばす。すると、傷回復薬をくっつけた糸がグイーっとリカルダの方へ伸びていく。
そしてリカルダは伸びてきた糸から傷回復薬を取ると、魔力か切れたのか糸がサァっと消えた。
リカルダはすぐに瓶を飲み干す。それと同時にリカルダの体が光り輝いた。どうやら彼女の傷が回復したようだ、スクっと起き上がった。
「あ、ありがとう。坊や、死ぬ所だったわ」
傷が回復したリカルダは僕の所に向かってきて礼を言った。
「よかったリカルダ、一瞬、ヒヤヒヤしたぜ」
僕がホッとしているとリカルダは首を左右に振りながら強張った表情でゴーレムを見る。
「でも、安心するのはまだ早いわ。回復したところでこいつを倒せなかったら同じことの繰り返しになる。そして今度は助からないかも」
僕はリカルダの言葉に頷いた。そう、結局ゴーレムを倒さないと次こそはやられる。だから、仕方がない、あれをやるか……
「リカルダ、このコンビではゴーレム二体は倒せない。コンビを変えるんだ」
リカルダは何を言っているのかわからない様子だ、キョトンとして聞き返す。
「坊や、ど、どういうこと?」
「つまり、君とエレンミアがコンビを組んで、僕と姫野さんでコンビを組むんだ。そうすればゴーレムを倒せる」
先ほどのキョトンした顔からリカルダの表情は驚愕に変わった。
「何言っているの! そんな事をしたら坊やと遥、二人とも死んでしまうわ」
リカルダの言うことは、もっともだ。しかし、僕は真剣な眼差しでリカルダを見て言った。
「頼む、信じてくれ。これ以外方法はない!」




