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第十九話

 

 全身が赤黒い毛に覆われた、先ほどのキラーウルフよりも少し大きめのフレムハウンドは唸り声をあげて今にも、僕達に飛びかからんとしている。


「はてさてどうしたらいいかしらね。どうやら今の龍斗ではフレムハウンドは荷が重いようだわ」


 僕が剣を正眼に構えながら申し訳ないといった顔でエレンミアを見る。


「す、すまん。とりあえぞ、僕は二人のサポートにまわるよ」


「龍斗。この塔でレベルが上がったら力にポイント振りなさいね。魔法使いは私とリカルダがいるから」


 僕は二人の後ろに下がった。


「ああ、そうする。で、フレムハウンドとはどう戦う?」


「そうね。龍斗、確かあんた水魔法は使えるわよね」


「うん、下位の水魔法「氷柱槍アイスランス」だけどね。しかもレベルは2だ」


「まあ、いいわ。フレムハウンドは火属性のモンスターだから水魔法が有効よ。それで攻撃して、あとはリカルダと私でなんとかするわ」


「了解!」


 僕は右手を前に出して魔法を発動させる。


「いけ! 氷柱槍アイスランス!」


 勢いよく飛び出した氷柱が一匹のフレムハウンドに直撃した。フレムハウンドは吹っ飛ぶがすぐに起き上がる。


「ダメかよ」


 どうやらフレムハウンドはあまりダメージを受けていないようだ。


「大丈夫よ。その調子で少しづつ削っていって、リカルダ、魔粘糸を固めて飛ばして」


魔刃糸まじんしね。いいわ」


 リカルダが両手を前に出すと魔法を詠唱する。


「喰らいなさい『魔刃糸まじんし』!」


 リカルダの両手が光るといくつもの白い刃が飛び出してくる。


 グサ!グサ!グサ!グサ!


 フレムハウンドに糸を固めて作った刃が突き刺さった。


 ギャー


 悲鳴をあげながらフレムハウンドが後ろへ下がる。そして、そのうちの一匹がその場に崩れ落ちて絶命した。絶命した一匹は先ほど、僕が氷柱槍アイスランスで攻撃したフレムハウンドだ。


「おっと、僕とリカルダの攻撃で一匹、死んだぞ。きっと他の三匹も虫の息だ」


「そのようね。それじゃあ、私が」


 今度はエレンミアが両手を前に出す。


氷柱驟雨アイスシャワー


 エレンミアの両手が光り出すと彼女はその光をフレムハウンドの上方へと飛ばす。そしてその光から無数の氷柱が飛び出した。氷柱はフレムハウンドに突き刺さる。


 ギャー


 大きな口を開け悲鳴を上げるとフレムハウンドはバタバタと倒れる。


「よしっと、これで全滅ね」


 最後はエレンミアの全体水魔法でトドメをさした。


 フレムハウンドが全滅すると、僕とリカルダのレベルが上がった。


「おっと、レベルアップだ。ポイントはエレンミアのアドバイス通り力に振っておこう」


 僕はステータス画面を開くとポイントを力に振った。


「さあ、先を急ぐわよ」


 エレンミアがそういうと僕らは歩き出す。


 僕はエレンミアの後ろ姿を見ながら感心していた。


 エレンミアのやつ、僕と冒険していた時よりもレベルが上がってるな。あの時はもうこれ以上レベルが上がらないとか言ってたくせに。


「エレンミア、君のレベルはいくつだい?」


 僕が尋ねるとエレンミアは少し自慢げな表情で答えた。


「今? レベル32よ」


 やっぱり! 僕がサリウスだった時より10も上がってる。


「へー 凄いじゃん」


「何言ってんの、私がレベル32になるまで何百年かかってると思ってるの。何千年と生きるエルフじゃなかったらレベル20前後で人生終えてるわね」


 僕とエレンミアの会話を聞いていたリカルダが少し驚いた顔で呟く。


「レベル32…… 大したものね。うちのかしらよりも上だわ」


 どうやらエレンミアのレベルにリカルダも驚いたようだ。そして何やら考え込んでいる。


「まあ、レベル32ならこの塔は正直、余裕よ。だから安心してちょうだい。遥ちゃんも私が守ってあげるからね」


 そう言うとエレンミアはウィンクをした。それを見て姫野さんが満面の笑みで答えた。


「頼もしい! よろしくお願いします!」


 姫野さんの笑顔を見て僕は内心、エレンミアに嫉妬した。


 くっそぉ。姫野さんは守るのは僕なのにぃ…… でも、まあ、今はエレンミアの方が強いし、しょうがないかな。今回のところはエレンミアに姫野さんのナイトを任せよう。


僕は微笑ましい気持ちで二人を見ていた。

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