005_城の外
両手を高く上げ、思い切り伸びをする。
そして、肩を回し、首を回す。
「気持ちいい空だ!」
俺は昨晩のうちに城を抜け出していた。
事前に侍女達に聞いたとおり、モンスターを寄せ付けない灯を灯した街道近くに身を潜め、夜が明けるのを待った。
王都に隠れれば良かったが、城の作り上、裏門から出てぐるっと回って街道を出た方が人に見つかる可能性は低かった。
実際に城を抜けだした後は誰かにバレる事もなく、こうして街道を気ままに歩けている。
「さて、この道を進めば村があるな」
侍女に聞いていた通り、街道をしばらく進めば村があると聞いていた。
休みたいという気持ちはあったが、早々に出発しなければ捜索隊にでも見つかってしまうだろう。
村では必要最低限の物を買ったら、野宿生活を送るしかない。
俺も勇者の端くれ、雑魚モンスターくらいならば何とかなるだろうという気持ちになっていた。
小一時間もすると村に着く。
村を入り、近くを歩いている女性に声をかける。
「あの、道具屋ってどこです?」
「あちらですよ」
そう言い、指をさされた方向をみると道具屋らしき看板を見つける。
「ありがとう!」
俺は女性にそう伝えると道具屋へと向かう。
「いらっしゃい」
「あーっと、薬草みたいのってある?」
「薬草かぁ、あれは薬師が煎じて始めて回復効果を得るんだ。普通は薬草だけでは商品にはしねぇな」
この世界の事に関しての知識はあったが、世界での生活の知識はもらっていなかった。
道具屋に来て、こういった細かい知識を蓄えなければと痛感する。
「じゃあ、その薬草を煎じた回復薬は置いてあるか?」
「それなら、これだな」
小さい試験官っぽい入れ物に緑の液体が入っている。
「一つもらうよ、いくら?」
「3szだ」
まぁ、そうだよな、、、通貨はふつうその世界のものだ。
持っているお金が使えるかどうか、道具屋の店主に聞いてみるか。
「すまない、これは使えるか?」
「んん!?これは昔の通貨だなぁ。悪いけどうちじゃ、取り扱ってないよ。街まで行けば、古銭を扱っている古物商で現在の通貨と交換はしてくれるかもな」
「はぁ、そうなるかぁ・・・」
「しょうがねぇ。小僧、その顔を見ると訳ありだろ?それを一つよこしな」
手に握っていた古銭1つ取られた。
「まあ、何かの縁だ、やるよ」
道具屋のおっさんは、回復薬1つ俺に渡してくれる。
「いいのか?」
「ああ。次はちゃんと現金持ってこいよ」
古銭の価値を知らない俺は得をしたのか、損をしたのか分からなかった。
時間は無駄には出来ないなと思い、村を出発する。
早くしないと城に連れ戻されてしまうかも知れないしと、街道を進む。
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