002_自己紹介
扉を開けると、人が何人かいてこれはどういう事だとそれぞれ思案している。
数を数えると8人いる。
ここは勇者が転生する場所だと思っていたが、開けると人がいるのはどういう事だと俺も他の人と同じく考えてしまう。
見るからに通行人という訳でも、ここがどこかの街の繁華街という訳でもない。
ふと死んだ時を思い出し、あの時の光景を思い浮かべる。
その際にいた白い人影と同じ数であり、偶然なのかとまた考えがややこしくなる。
神は必要な知識を与えてくれたが、それはあくまでも必要最低限の知識という事であとは自分で考えろという事なのか。
「俺は一ツ橋 一歩。勇者としてこの世界に転生した。君らは誰だ?」
口火を切ったのは、”一”と書かれた扉の前に立っている青年だ。
いかにも正義感に満ちている凛々しい表情をしており、装備にもその凛々しさが現れているのか背中には見事な剣を担いでいる。
「いやいや、何を言ってる。俺も勇者だ。名前は二神 二瓶」
ガキ大将を成長させたような印象を受ける青年。
こちらは”ニ”と書かれた扉の前に立っている。
歳は先程の一歩と俺とも変わらないだろう。
二人が一斉に勇者だと告げた事に周りはどういう事かとさらに悩み始めている。
周りの反応から察するにこの場にいる者、全員が勇者なのだろうと俺は推察する。
白い人影は8人は、そしてこの場にいる全員が勇者という事は勇者も8人。
「僕は三上 賢三。きっとこの場にいる全員が勇者なんじゃないかな」
”三”の扉を背に、次の勇者が口を開いた。
先ほどより若い印象を受け、高校生くらいだろうかと思う。
自信家なのか親の躾の賜物か優等生っぽい雰囲気を出しながら発言している。
「私は四倉 四恩。私も勇者という事になってるわ」
続いて”四”の扉の前にいるメガネをかけた凛とした女性が話す。
美人な印象だが、どこか冷たくキツい印象を受けてしまう。
というかこれ、自己紹介しないといけない流れなのか。
ここまでの流れで全員が勇者だと、皆分かり始めている事だしいいんじゃないか。
「五十嵐 大五。ワシも勇者や」
一人称がわしという人間に俺は思わず驚いてしまった。
てっきり若い人が勇者というイメージを持っていた俺は、おっさんと呼ばれるのが当たり前な見た目の人に驚かされてしまった。
年齢の賜物か社会人経験からか、名前を言い終わると五十嵐さんはすっと手を次の人へ向ける。
「六車 六花です!勇者になりました!みなさんよろしくお願いします!」
続いて”六”の扉の前にいるまだ幼さの残る少女が元気よく挨拶をしてくれる。
先ほどの五十嵐さんと比べると親子程の年齢差だろうか。
「七森 七乃花です(ななもり なのか)。私も勇者ですね。みなさんよろしくお願いします」
六花と名乗った少女が話を終えると、可憐というのが似合う女性が口を開き挨拶をしてくれる。
俺は、七森と名乗った女性の姿に思わず見惚れてしまった。
綺麗というのもあるが、俺は彼女の姿に何か見覚えのある既視感を感じる。
自分の考えが正しかったらと思うと、彼女には近づきたくないと本能的に感じる。
「君の番じゃないか」
俺は七森と呼ばれた女性を見て、考えこんでしまっていたようだ。
「あ、ああ。俺は岡崎 京。俺もみんなと同じく勇者だ。よろしく」
気が乗らないが、黙っていると印象が悪いだろうと思い、俺は自らの名前を名乗る。
「あの、、」
「とりあえずみんな勇者だっていう事だな」
「せっかく転生したんだ、早速外に出てモンスターと戦おうぜ!」
一瞬、声をかけられたような気がするが気にしないで周りに合わせる。
声高らかに皆をまとめようとする一ツ橋と、空気を読めずモンスター退治に行きたい二神。
まさか勇者だけでこんな大所帯になるとは俺を含め、誰も思っていなかっただろう。
「モンスターは気になるところなんだけど、一旦この世界と僕らについて整理しないかな」
「ああ、確かにそうだな。外の風景をまだ見てないから何とも言えないが、ここは異世界なんだよな。つまり俺は…俺達は死んで転生したってことか」
「そう考えるのが妥当だね。僕も最期・・・現実で死んでいたしね」
「つまり、俺らは死んで生き返ったって事か」
「正確には転生だね。神様に教えられた通りならばね。だけど、僕が知る限り転生というのは別の人間…赤子からやり直すものだと思ったけど」
確かに転生と神に告げられていた。
だが実際には、元の自分と同じ姿でこの異世界に降り立った。
「まぁ何はともあれ、第二の人生スタートっちゅうことやな」
「ところでこの固有スキルだけど、やはりみんな違うものなのかな」
「ああ、そうだな、俺のは【勇気ある者】となっている。能力は…」
先ほどの小部屋でステータスを確認した時に固有スキルなるものがあった。
一歩の固有スキルの名前を聞いて、俺の固有スキルとは違う事を知った。
これも各勇者毎に固有スキルが違うのだろう。
「ちょっと待って。固有スキルって、私達に一つだけしかないスキルって事よね?まだ知り合って間もないし、どういう世界かも分からないのにそれを教えたくはないわ」
四恩は言い方はキツかったが、一歩へと正論を吐いた。
同じ勇者で転生させられた者とはいえ、互いの素性は分からないのだ。
「そうかぁ?これから仲間になるんだがら、そういうの伝えた方がいいんじゃないか」
「うーん、そうだね。これから仲間になっていくとしても、切り札となる固有スキルは気軽に話すべきじゃなかったね。
言いたい人だけが言うっていうのはどうだろう?
ちなみに僕の固有スキルは【鑑定】。さっきからやってるけど物や人、概念を知る事が出来るみたい。
ただ、見たことないものや知らないことは鑑定する事が出来ないから、鑑定を使ってほしかったら僕に何かを知ってもらう必要があるよ」
三上は【鑑定】だ。
聞いた能力からよくあるゲームや転生ものの設定まんまの能力のようだ。
「途中だったな、【勇気ある者】は敵の強さに比例してステータスが向上するらしい。まだ実践を経験していないから、具体的にどんなものかはやってみないとわからないな。それと俺のことは一歩と呼んでくれ」
「俺の固有スキルは誓いの拳。相手ともに誓いをたてる能力みたいだが、使いみちが今いち分からないな。あー、それと発動するとSPを消耗するってあるな。まぁ俺は二神でも二瓶でもどっちでも構わねぇ」
「は?SP?」
しまった口に出てしまったと、心の中で後悔する。
俺は聞き慣れない単語に思わず反応してしまった
「SPは魂の力みたいなものだよ。これによって固有スキルを発動するみたいだね」
ご丁寧に教えてくれた。
俺は早速と、確認してみる事にする。
”ステータスオープン”
名前:岡崎 京
JOB :第8勇者
年齢:18
LV :1
HP :20 MP:5 SP:??
力 :6
体力:5
器用:7
敏捷:6
魔力:7
耐魔:7
幸運:20
【固有スキル】
理解
【スキル】
【称号】
転生者(獲得経験値+15%)
なんか、SPのところ??になってるんですけど。
迂闊にその事を喋ると言及されるから言わないでおこう。
「何だかスキルの事で変に話してしまってごめんなさいね。・・・でも、やっぱりスキルは話したくないわ。みんなが信用出来ないというわけではないけど、その、これが特性から選ばれるスキルなんだろうけどちょっと違う気もしてて・・・」
固有スキルについて話すことを否定していた四恩がしおらしく話す。
さっきの雰囲気からもっとヒステリックな人かと思っていたが、自分のスキルについて思う所があったのだ。
「まぁ、無理強いは出来ないな」
「ワシの番やな。固有スキルは絶対の守り。発動中は無敵の壁を作るみたいや。ただ、これな、使ってると動けないんや」
「固有スキルは何かしら発動条件や発動中に何か制限があるものも存在するって事かな・・・。じゃあ、次は六車さんの番かな」
「はい!私のスキルは創造物の再生!ソウゾウシャによって、作られたものならば直すことができる?っていう説明です。私のスキル、ちょっと分からないんで三上さんに教えてもらいたいです!」
「いいですよ。もし他にも知りたい人がいたら言って下さいね」
次々と皆、自分の固有スキルについて説明をする。
四恩じゃないけど、こうも皆素直に自分の能力を話せる程自信があるのかそれとも周りに合わせてるだけなのかと呆れてしまう。
「じゃ、じゃあ私の番ですね。私のスキルは不死鳥の呼び声。このスキルを使うとSPをほとんど使う代わりにどんな傷でも一瞬で直します。一日に一回しか使えないので、使い所は見極めないとですね」
歩くエリクサーかとツッコミたくなる。
彼女の説明が終わると皆こちらを一斉に見てくる。
自分が”八”の扉の前に立っている事が悔やまれる。
どうしたものかと、一息着きながら考えるが、腹をくくり言葉を発する。
「俺のスキルについては言いたくない。いや言えないかな。俺もよく分からないんだ。三上くんに調べてもらいたいな」
「いいですよ。ちなみにスキル名だけでも教えてくれますか」
俺はみんな程、みんなを信用出来ていない。
「すまん、それもまだ教えられない」
三上は俺の答えに不満だったのか、眉をしかめるがすぐに笑顔を取り戻す。
皆に悪い印象を与えたくなかったのだろう。
「分かりました、後で来て下さい」
これでみんなの名前と固有スキルの自己紹介が終わった。
お読み頂き、ありがとうございます。
毎日22時更新予定。
感想・レビューお待ちしております。
誤字・脱字も報告頂けましたら対応致します。