おっさんのハチ退治
おっさん VS 機能美を生かしたスタイリッシュな美女軍団(ただし全員スズメバチ)
よい子は絶対にマネしちゃ駄目だぞ☆彡
前書きには冗談めかして書きましたが、経験・ノウハウがない人がスズメバチの巣を駆除するのは本当に危険です。
費用の面でも必要数の殺虫剤と保護具を購入すると行政・業者に依頼する金額と同じぐらいになります。
そのうえ、蜂に刺されると医療費が発生したりとか、仕事を休んで収入が減るなんていう、文字通り泣きっ面にハチ状態になります。
生兵法は大怪我の元。命あっての物種です。どうしても駆除をしたい!という人は自己責任でお願いします。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ある日、会社の総務部長に声をかけられ、
「おっさん君、君が入っている寮にハチの巣ができたって話を聞いたからちょっと見てきてね。10cmぐらいだっていうから」
なので、夜勤の合間を縫って見に来ましたよ。
「なんだよ、たかが10cmで退治とか大げさだよなあ。大きさからどうせアシナガバチだろ、殺虫剤ぶっかけしておしまいでしょ」
などと思いながら普段は入らないほうの軒下をひょいと覗くと、合掌の下にバスケットボール大のナにかがある。
うん、最近図面を引いたり役所の対応をしたり現場を進めたりと疲れているんだな10cmて話だから何かの見間違いに違いないそうに違いないだいだい10cmといったらソフトボールだバスケットボールじゃないあれは壁のシミだそうに違いないそもそも危険な蜂だったら建設業はある意味何でも屋だけど従業員に気軽に駆除を指示するとは考えられない。
そこまで考えたところで、
なんだかブンブン羽音が聞こえるけどハナバチミツバチのかわいい羽音じゃない。もっと禍々しい音がする。ブゥ~ンて
もう一度軒下を除いて確認する。
まごうことなくスズメバチの巣です。100%天然素材を加工して作られた素敵な巣。やっぱりバスケットボールぐらいの大きさがあるよ。しかも表面に働きバチだか見張りバチがびっしりついてるよ。試しに少し近寄ってみたら斥候バチが近寄ってくるし。なにあれ怖い。とりあえず写真だけ撮って退散しよう。
写真のデータを会社で印刷して総務部長→社長と見てもらったら、
「おっさん、駆除はやったことあるか?」
「はい、ありますが」
「じゃあ駆除のほう、頼むな」
おっさんが勤める会社では社長の言うことは絶対なの。社長に何か指示されたときの返事は
「はい」と「わかりました」と「ありがとうございます」
の3つだけ。
「いや」とか「でも」とか「だって」
なんて返事をしようものなら場合によっては雷が落ちる。
人によってはワンマンとかブラックとかいう人もいるかもしれないけど、おっさんはシンプルで男らしい社風だから好きなんだよね。
そんなわけで駆除方法を考えなきゃならなくなった。まあ、実家にいた頃に屋根裏のスズメバチの巣を殲滅したことがあって、スズメバチの生態と駆除方法はその時にいろいろ調べて知っていた。
1.スズメバチの巣は秋口にクライマックスになる。
2.クライマックスに向けて働き蜂は巣を守るために凶暴化する。
3.だけど、日中しか活動しないから、日没になると全員巣に戻って休む。
4.女王がいなくなれば巣は崩壊。
5.昆虫界最強の一角を担うが、殺虫剤にはめっぽう弱い。
6.殺虫剤を吸い込むとしばらく苦しんで暴れるけど、やがて死ぬ。絶対死ぬ。
実家の場合は屋根裏の密閉空間だったから、巣がないほうの風窓をふさいでバルサン攻撃で一件落着だったけど、今回は屋外だ。どんな作戦でやってやろうか。などと考えていたら社長に声をかけられて
「いいか、絶対に一人でやるんじゃねぇぞ、だれか見張り番を立てるとかしろよ。あと、できれば巣は壊さないようにしてくれな、飾るから」
おっと、単独作戦はなくなってしまった。しかも作戦の難易度も上がってしまった。
とりあえず、ホームセンターで殺虫剤を数本購入。夜勤の現場を終えて寮に帰ってきて、少しでも兵力削減できるかなと蚊取り線香を焚いてみる。あと、冷蔵庫に腐りかけのメロンがあったからそれをざく切りにしてペットボトルにめんつゆとみりんを混ぜたものを作ってスズメバチトラップを仕掛けて寝た。
そしてその晩。まずは網戸越しにバルサンジェットを巣の真下あたりから噴射してみる。巣の表面にいる蜂には効いているようだ。スズメバチらしく戦闘機みたいな動きができず、ラリって壁や屋根にぶつかり始めている個体が確認できた。
次は威力偵察だ。離れた場所からマグ○ムジェットを巣に噴射してみる。
おおう、出てくる出てくる。スズメバチが巣からビュンビュン飛び出してくる。けどまだラリってる感じの蜂はいないようだ。続いて2本目も全噴射。やはり巣が遠いからあまり効果がないようだ。表面にくっついている蜂なんかは異常を察知して一目散に巣から逃げていくけど、この規模の巣でこの蜂の数というのは少なすぎる。
中途半端に攻撃をして放置するとお互いによくないので殲滅することにした。仕事用の雨合羽を着込む。臭い。サンダルではなくて安全靴も履く。仕事用のヘルメットも被った。よし、殺るか、殺られるかだ。覚悟完了。
防護具に身を固めた状態でスズメバチジ〇ットという巣も殲滅できるのが売りの殺虫剤を手持ちで噴射してみる。
効いているのは効いているのだが…決め手に欠ける。やはり近接攻撃を仕掛けないとだめか。でも脚立だの梯子だのでは作業したくない。危ないし怖い。ようし、こっちは万物の霊長たる人間様だ。道具を作って対抗だ。
物干し竿の先に殺虫剤をテープで固定して、木片の両端に穴をあけてその穴の片方は物干し竿と紐で結んで、もう片方の穴には長い紐を取り付ける。紐を引くとうまくスプレーを噴射できるように木片をスプレー缶に半固定する。試しに巣とは関係ない場所で試してみたらうまくいった。暗くなってこちらも目視確認ができなくなってきたから、いつも乗っているライトバンを巣の近くに寄せて明かりをとる。
巣穴を狙って物干し竿を近づけてみる。もう日没も過ぎて暗くなっているから見張りの蜂も出てこない。よし、いける。噴射。
時間にして2~3秒だろうか、いままでにない数の蜂が飛び出してくる。
これは近くにいるとヤバいやつだ。錯乱した蜂が苦し紛れに刺してくるやつ。
ひとまず車の陰になるように退避する。
こんなにいたの?と思うぐらいの蜂が巣の周囲を飛び回る…が、先ほどまでとは明らかに様子が違う。殺虫剤をまともに吸い込んでラリった飛び方をしている。自分のほうに近づいてきそうな個体がいたらすかさずア〇スジェットを噴射して追い払う。
車のライトに取りついてライトを攻撃している個体もいる。壁にその影が大写しになってキモイ。ライトに向かってアー〇ジェット!
あ、やべ、殲滅用の殺虫剤はまだ余裕があるけど近接攻撃手持ち用の殺虫剤がなくなってきた。ひとまず室内に戦略的撤退。して、近所の金物店に電話をかける。
「はい、○〇金物店です」
「もしもし、〇▽◇建なんですけど」
「ああ、おっさんですか、どうしたんですか?土曜日のこんな時間に」
「かくかくしかじかでスズメバチが。殺虫剤ある?」
「ありますよ、いまからでもどうぞ」
というやり取りののちに追加の殺虫剤を調達して戻ってみると、死屍累々。巣の近くと玄関の外灯の下に死骸が転がっていた。飛んでいる個体も1~2体いたが、明らかに弱っていて殺虫剤のビニールを剥いている間に力尽きて地面に落ちていた。
ここまで来れば勝利は明らかだけど、中途半端はだめだからね。巣を殺虫剤で浸漬状態にして幼虫も蛹も殺そう。残酷かもしれないけど自分の命を守るためにはしょうがない。
再度、いつでも逃げられるような体勢を作りながら物干し竿ジェットストリームアタックをかける。が、反応はなし。さらに巣穴の直近で噴射しても反応はなし。よし、勝った。
そこから巣をコーティングするかのようにまんべんなく薬液をふりかけ、あとは次の日に様子を見ることにしてみた。ふと、足元を見ると巻き添え?を食らったムカデが苦しんだあげくねじ曲がった状態でピクピク痙攣していた。ムカデはどうにも生理的に受け付けないから念入りに殺虫剤をまぶして止めを刺した。
一人でやるなって言われていたのに、結局一人でやってしまった。社内的にやばいかなー。
あとこれって、スズメバチ視点で短編書けるんじゃね?
今回ラッキーだったのは、虫の知能では噴射元を敵と認識できないこと。車のライトに突撃するさまは滑稽というより見てて哀れを感じるものがあった。
あと、明かり。最初はヘルメットにつけるヘッドライトを装備しようかと思っていたんだけど、車のヘッドライトに突っ込んできていたから、自分の頭につけるヘッドライトをつけていたら…俺に向かって突っ込んできていたよな。ヘルメットライトつけなくて本当によかった。命あっての物種。命があるだけ丸儲け。
今回も最後まで読んでくれた人たちに、ありがとう。




