表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ARROGANT  作者: co
木曜日
16/194

 あまりよく寝られなかったけど、喉が痛いのと妙に眩しいので目覚めた。

 目覚めて、健介は自分がどこにいるのかわからなかった。


 布団が違う。

 天井が違う。

 窓が違う。


 そして横を見て、


 寝ているお母さんを見て、


 健介は驚いて布団を飛び出て、ベッドから落ちそうになった。



 あ、あそうか、そういえばお母さんの家にいるんだ。

 心臓がばくばく打っているのを手で押さえる。



 そして、喉が痛い。


 一晩中エアコンをつけていたから乾燥したのだ。

 それに片付けなかった鍋のにおいが充満したまま。

 健介は咳をした。


 父さんならこんなこと絶対しないのに。




 健介はベッドを降りてテーブルの上の鍋と空き缶をシンクに持って行った。カセットコンロは箱に入れて部屋の隅に立てた。

 それから歯を磨いて顔を洗って、教科書を揃えてランドセルを背負って、


 それからまだ寝ているお母さんに声を掛けた。


「お母さん、学校まで行く、バス代が欲しいんだけど、」


 お母さんが目を覚まさない。


「お母さん」


 健介はベッドの横に立ってお母さんの肩を押した。

 ううう~、と顔を顰めて顔を背けるお母さんに、健介は同じ言葉を繰り返した。


「……財布から、勝手に持っていって……」


 お母さんはそれだけ言って、布団に潜りこんだ。



 財布から勝手になんて、お母さんは怖いことを言う。

 そう思いながら健介はその財布を探し、脱ぎ捨てられてあるコートのポケットから取り出して、往復のバス代を抜き出して部屋を出た。



 外に出ると吐く息が白かった。

 今日は寒いんだ。

 また咳をした。

 そして、お腹が鳴った。


 そっか。朝ご飯、食べてないんだ。こんなの初めてだ。

 そして振り返った。


 車に気をつけろよ、という父の声が聞こえない。


 こんなのも初めてだ。



 ぶんぶんと首を振って、健介はバス停まで走り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ