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ゆたかの怪奇列島第12章「テケテケ」  作者: こうた


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第7話「観測者」


音は、まだ鳴っている。


“カッ”


近い。


“カッ”


遠い。


だが今は、違う。


ななが呟く。


「……さっきとちゃう」


ゆたかが小さく頷く。


「せやな」


一拍。


「“見られとる”だけやない」


神父が静かに言う。


「相互観測状態です」


人面犬が笑う。


「覗き合いってやつか」


“カッ”


音が鳴る。


だが今度は、わかる。


どこから来ているか。


ななが目を細める。


「……あっちや」


指をさす。


白い“線”。


接触点。


そこに、いる。


ゆたかが低く言う。


「よし」


一拍。


「“見る側”に回れ」


ななが戸惑う。


「見るって……さっき見たらあかんって……」


神父が補足する。


「“見られる”のではなく、“見る”のです」


一拍。


「主体の逆転」


人面犬が笑う。


「主導権の取り合いだな」


“カッ”


音が強くなる。


近づいてくる。


だが——


ななは目を逸らさない。


見る。


しっかりと。


白い歪みを。


その瞬間。


“カッ”


音が止まる。


ななが息を呑む。


「……止まった」


ゆたかが言う。


「固定されたな」


神父が続ける。


「観測により位置が確定しました」


一拍。


「曖昧さが消えています」


人面犬が鼻を鳴らす。


「逃げ場もな」


だが今度は違う。


逃げる必要がない。


ななが一歩踏み出す。


怖い。


それでも進む。


「……見えてる」


白いそれは、もう“曖昧”ではない。


形がある。


歪んだ人のようなもの。


下半身がない。


地面を叩くように進む。


“カッ”


だが、動かない。


止まっている。


ゆたかが言う。


「観測された状態は動けん」


神父が補足する。


「不確定性が消失しています」


人面犬が笑う。


「なるほどな」


一拍。


「見られてると速い、見られると止まる」


ななが呟く。


「……逆やったんや」


“カッ”


音が鳴る。


だが、ズレている。


リズムが崩れている。


ゆたかが言う。


「干渉しとるな」


神父が静かに言う。


「黒幕です」


その瞬間。


空気が歪む。


白い“線”が揺れる。


テケテケの形が、ぼやける。


ななが叫ぶ。


「また消える!」


ゆたかが即座に言う。


「見続けろ!!」


ななが歯を食いしばる。


視線を外さない。


怖い。


でも、逸らさない。


「……見てる」


一拍。


「ちゃんと見てる」


“カッ”


音が止まる。


完全に。


テケテケの形が固定される。


動かない。


完全に止まる。


神父が言う。


「安定しました」


人面犬が笑う。


「やればできんじゃねぇか」


ゆたかが小さく息を吐く。


「これが答えや」


一拍。


「逃げるか、無視するか、見るか」


ななが小さく言う。


「全部使い分けるんやな……」


ゆたかが頷く。


「せや」


その瞬間。


“声”がする。


頭の奥に、直接。


「それでも、届く」


空気が凍る。


テケテケの形が、わずかに揺れる。


ななが息を呑む。


「……まだ来るん……?」


神父が言う。


「干渉継続中です」


人面犬が笑う。


「簡単には終わらせてくれねぇな」


ゆたかが前を見る。


固定された“それ”を見ながら言う。


「終わらせるもんちゃう」


一拍。


「付き合い方を決めるんや」


夜はまだ続く。


だがもう、ただの恐怖ではない。


“理解”が始まっている。


■ 第12章 第7話 終

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