第3話 ダンジョンに出会ってしまった。
翌朝、ぐっすりと睡眠が取れた俺は、起きてまず、宿で朝食をとった。朝食はパンとスープと水で、一見質素だが舐めてはいけない。パンは硬めだが食感もよく、スープは結構濃厚であり、いい感じに温かい。スープにパンをつけると本当に絶品である。
「あぁ…異世界も捨てたもんじゃないなぁ…」
異世界生活2日目、今日はいい日になりそうだ。
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冒険者ギルドに行くと、昨日対応してくれた受付嬢がいた。俺の顔を見た瞬間、何か探していたものを見つけたかのようにこちらに駆け寄ってきた。
「アキハラさん、おはようございます。昨日ぶりですね、アンナです。」
受付嬢…改めアンナさん。丁寧な対応で、愛嬌のある彼女は、やはり人気受付嬢らしい(先輩冒険者から聞いた)。
「おはようございます。俺に何か用ですか?」
「そうなんです!ついうっかり忘れてしまってて…」
アンナさんのようなしっかりしてそうな人でも忘れ事をすることがあるんだな…と思いつつ、ふと考えてみると、なんか思いあたる人物が浮かんできた…が、まぁ考えなかったことにしよう。
「実は、ある一定以上の能力値を有している人はE級から登録することが出来るんです。E級だと受けれる依頼が増えるので、私としてはオススメしたい所なのですが、どうされますか?」
まさかそんな都合よく昇格出来るなんて思っていなかった。いずれ昇格しなければ依頼の幅も狭いままだし、受けることにする。アンナさんのオススメだし。
「是非それでお願いします!」
「了解致しました。それでは冒険者カードの方を。」
冒険者カードを渡して、手続きを行ってもらう。少しして帰ってきたカードには、E級の文字が刻まれていた。
「それではE級になられたわけですが、どの依頼を受けられますか?」
E級になったということは、例のアレが受けられるというわけだ。
「ダンジョンで!」
俺は即答した。ケインさんに紹介されたときからずっと興味を持っていた。あんなに熱弁していたのもあるが、周りの先輩冒険者に聞いたところでも、ダンジョンは稼げると評判が良かったためそれが決定打になった。
「了解致しました。手続きさせて頂きますね。」
「ありがとうございます!」
「ちなみにこれはあくまでも私の意見なのですが…」
アンナさんは手続きの間、俺に少し助言をしてくれた。
ダンジョンには階層があって、最初の階層こそソロでも安心して狩りができるだろうが、別階層に潜る場合、パーティーを組んだ方がいいとのこと。特に魔法使いならば、ソロはきついだろうから早めにパーティーを見つけた方がいいだろうなと俺は思った。
手続きが終わり、証明書のようなものが渡された。これがどうやらダンジョンの攻略許可証になるらしい。
アンナさんの有難い助言を胸にしまいつつ、俺はわくわくした気持ちで、近くにあるダンジョン、《スライムダンジョン》に向かった。
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ダンジョンに着くと、人混みが見られた。パーティーを組んでいる人達もいるし、ソロの人もいた。実はこのダンジョンは名前の通り、スライムしか出現しないらしい。スライムは酸性の溶液で身体が生成されているが、その酸性自体はとても弱く、スライムに溶かされる人は滅多に現れないらしい。また、軽い斬撃でも倒すことが出来てしまう為に、スライムは初心者向けなのだそうだ。
と言っても、スライムのランダムドロップの性質上、何が出るか分からないという楽しさから、中級者や上級者にも関わらず挑戦する人は居るらしい。
「許可証の方を確認させて頂きます。」
ダンジョンにも受付があるようで、そこでちゃんと正規の手続きを行っているか、確認を取っているようだった。俺は許可証を見せ、何事もなくダンジョンに入ることが出来た。
「…ははっ、これがダンジョン…!!」
目の前の壮大な光景につい目を光らせる。さっきまで洞窟のような場所で、受付するまではこんな感じの洞窟がダンジョンなのかと思っていた。しかし…
「まさか、こんな草原が広がっているとは…。別世界みたいで…不思議だ。」
行き道は暗い洞窟で、道中も中が広いとは思えなかった。しかし、いざ中に入ると、明らかに大きな空間…いや、世界が広がっていた。
「空気も良いな…。とりあえず、スライムを狩ってみるか!」
元気が出た俺は、他の冒険者と同じように、そこら中にぷよぷよとしているスライムを倒してみる。
「初級火属性魔法・ファイアボール!!!!!」
魔法は習得さえ出来ていれば、魔法名を唱え、魔力を込めるだけで発動できる。初めての発動だったが、きちんとスライムを倒せていた。
「初級魔法なのに結構な威力なのは、知力が高いおかげか…?まぁそれは置いておくとして…。これがスライムの核か…!」
スライムは魔石をドロップしない。その代わりに核をドロップする。その核を割ることで、ランダムにアイテムが発生するのだ。
「さてと…それじゃ、もうちょっと狩ってみますか!」
核をポケットにしまいつつ、魔力がある程度残るまで、可能な限りスライムを狩ることにした。
食事などの休憩も挟みながらスライム狩りを行っていたが、初級魔法を20発打ったところで少し疲労感があったため、このくらいにしておく。1匹に1発ずつ打っていた為、ちょうど20個の核が集まった。
(パーティーを組んだらもっと効率よく出来るんだろうな…。明日からはパーティーを探してみるか…。)
とか何とか思いつつ、今日のところはダンジョンを出ることにした。
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ギルドに報告する前に、大切な作業が残っていた。そう、スライム核を割る作業である。核自体で売るのもありだが、ギルドでの買取価格は低めらしい。そのため、割った方がなんだかんだ儲かりそうなのである。それに、宝くじ気分で作業できるので、せっかくならこっちの方が良い。
(俺の幸運値よ、どうか俺に力を…!)
そうして割っていったのだが…スライムの核からはいろんな物が出てきた。木剣や木の盾など、あまり売れなさそうな物が出てきたと思ったら、結構価値のありそうな物も幾つか出てきた。しかしながら…異世界についてまだ全然分かっていない俺は、イマイチ分からないものもあって困っていた。だが…なんと、ギルドは依頼関係のモノなら買い取りもしくは引き取りを承っているらしい。素材などについて詳しく知らない俺は、職員さんに見てもらった方が確実だと思い、そこで全部預かってもらうことにした。
「スライムの核から出た物なんですが、買い取りお願いします!」
「了解致しました。スライム核からのドロップ品ですね、お預かり致します。えーっと…え?、、、ス、スキルブック…!?」
どうやら今回、俺は大勝利してしまったらしい。
職員さんの説明によると、この世界において重要な役割を持つスキルだが、スキルは本来、職業を通して、もしくはその分野の修行を行ってようやくゲット出来るのだが、このスキルブックはそれを無視して、目を通すだけで習得することが出来る。ちなみに、1回使うと、綺麗に消えてしまうらしい。
「スキルブックはどんなスキルを習得するかは分からないのですが、その貴重さ故に10金貨は下らないのです。うちのギルドなら10金貨は出せますが…うちに売るより、オークションに出すか、もしくはご自分で使っていただく方が良いかもしれません。」
「なるほど…アドバイスありがとうございます。」
アドバイスを聞き考えた結果、スキルブックは後で俺が使うことにした。他に預けた物の中には、ポーションや需要のある素材などがあったらしく、結構値段が付くものがあり、1日で2金貨も得ることが出来た。そのため、お金は充分だと感じたのだ。初めての仕事でここまで稼げてしまうなんて、スライムにはロマンがあるな…。
(稼げたのもあるし…それに事故とはいえ、折角の異世界生活だ。自分の力を強化するのも悪くない判断だろう。)
俺は心の中でそう信じることにした。
その後は宿にて夕食を取り、近くの銭湯を満喫し、寝入ってしまった。
(スキルブックは明日試そう…ムニャムニャ)
明日が実に楽しみだ。




