Episode3-1 門倉麻也
文彦の中学時代をよく知っている友人がいると斐蔵から聞き、東京へとやって来た侑人だが、東京へ来たのは中学の修学旅行以来で初の新宿駅にまだ日が昇り切っていない早朝に到着し、右も左も分からないまままだ店が開店前であるためネットカフェに行き、夜行バスで寝ていたがやはり疲れが殆どとれておらず横になった途端に深い眠りに落ちてしまった。
次に侑人が自然に目が覚めたのは8時ごろで、文彦の友人と会うのは13時頃な為、その間は東京の観光をしようと思ったが、実は東京に来る前に斐蔵からある話を教えてもらっていた。
靖国神社の隣にある遊就館に羽鳥文彦の生前に使用していたものが飾られているということだ。祖母の家にあるものは軍服姿で写った写真のみでそれ以外の物は一切ない。祖母に確認したところ、財布は文彦の兄弟たちが話し合い遊就館へ寄贈したものだという。最初、祖母は泣きながら反対していたそうだがいつか忘れ去られ捨てられる未来が来るのであれば、寄贈して大切に保管された方が残すことが出来ると説得され遊就館に展示されている。
靖国神社は元々、明治維新後の国家のために殉難した者たちを祀っている神社なのであるが、太平洋戦争のイメージが強く、度々靖国問題が起こっていて侑人自身はあまり靖国神社に良い印象は持ってなかったが祖父やその仲間たちが祀られていると思うと印象がまた変わる。
行ってみると普通の神社の様だが、本殿に近づくごとに警備員が立っているところは普通とは違うのだと再認識させられるが、意外と人が多く外国人も参拝している事には驚いたが、侑人の目的は参拝ではなく遊就館に行くことで、さっさと目的の場所へと足を運ぶ。
侑人は遊就館を出るときには少し暗い表情で、近くのベンチに腰を下ろす。確かに文彦の財布を確認することが出来た。色褪せた革製の財布に押し印で名前が入っており、しっかりと持ち主が分かるようになっていて羽鳥文彦が本当に実在した人物だと改めて認識し、館内に遭った零戦を思い浮かべ祖父はこれに乗って死んだのかと思い何とも言えない気持ちになった。まだ、軍人としての文彦は斐蔵の話に出てきた姿だけで、あまり軍人らしい姿ではなく侑人にとってはただ戦争で死んだと物語の登場人物みたいな感じに知らぬうちに思っていたが実際持っていたものを見たからと言うより、財布に名前があったことに現実だと感じることが出来たのだ。
ベンチでぼーとしていると空腹感で現実に思考を戻し、今回の待ち合わせ場所の近くで昼食を取ろうと歩き出した。
昼職を食べ終え、待ち合わせ場所へ向かう。老人ホームで結構いいところだとわかるほど、外観も中も人もいい感じの雰囲気が流れている。
「本日、門倉麻也さんと会う約束をしている羽鳥侑人です」
「あぁ、門倉さんのお客さんね!108号室にいると思うからこのまま向かってちょうだい」
受付で要件を言うと明るそうな人がテキパキと場所を教えてくれたため、礼を言いそのまま向かう。言われた部屋まで行き、壁に貼られてるプレートを確認し名前があっている事と一人部屋であることを確認しドアをロックする
「君が文彦の孫が!全然似てないが雰囲気は似ているかもしれないな」
「はじめまして羽鳥侑人です」
中に入ると元気の良さそうな老人がこちらを見て笑っていた。
門倉麻也、三菱重工で定年まで働き、定年後に息子たちのいる東京へ住居を移し去年、老人ホームへ自ら入ったとアポイントを取る際に侑人が聞いた門倉の戦後の生活である。
門倉は侑人くんは本は好きか?と聞きながら侑人の瞳を見ながら懐かしそうに目を細めた。
「文彦は俺より飛鳥の方が何かと気が合っていたが、俺で勘弁してな……俺と飛鳥は幼なじみで熱田中学校に入って数週間たった頃だったか、飛鳥が当然文彦に話しかけたんだ。当時、文彦は地元では有名な不良で入学してすぐの頃は皆、近づくことすらしなかったんだ。いつもつまらなそうに本を読んでたよ」
お巡りさんになりたいな~
転職するなら1次試験クリアする頭が欲しい